「ドイツに移り住んできた多様な地域の人たち相手に、自分の母国語ではないドイツ語を教えています」と、目を丸くしてしまいそうな自己紹介をしてくださったのは、ロストック在住の石川ゆう子さん。ロストックはドイツ北東地方で最も大きな街ではありますが、ほかのドイツの大都市に比べると外国人は少なく、日本関係の仕事もほとんどありません。そのため、ロストックで職を得るに当たって、日本語を話せることがほとんどメリットにならず、ドイツ語母語話者と同じ土俵に立たなければならないのです。
ドイツ語の授業中のゆう子さん
そんな状況にもかかわらず、現在「ドイツでドイツ語教師」として活躍するゆう子さん。日本の高校卒業後にドイツの大学へ進学するためにドレスデンに降り立ったのが、その始まりだといいます。ドレスデンで語学学校に通った後、ドイツの大学進学資格を得てロストック大学に入学し、独文学と歴史を専攻しました。ドイツの大学生活というと、レポートそしてレポート、さらに試験、またレポートと試験、そして最後に卒業論文……という怒涛のプログラム。それを子育てしながらやり遂げたというのだから、脱帽ものです。
「私もドイツ語を外国語として学んだので、母語話者は感覚的に理解しているけれど外国人にはつまずきやすい部分に寄り添える」というゆう子さん。彼女のクラスの生徒さんたちは、全員が違う国の出身です。多様な文化や言葉、考え方を持つ生徒さんをまとめるのはとても大変なのだろうと、筆者は授業を見学したのですが、もともと語学や異文化が好きなゆう子さんは、目を輝かせながら「あなたの国では? あなたの母語では?」と生徒さんたちに語りかけます。そんな彼女に、生徒さんたちが一生懸命考えながらドイツ語で回答する姿には、とても感銘を受けました。
さまざまな国籍・文化的背景を持つ生徒さんたち
と、ここまでは「ドイツ語教師」であるゆう子さんについて書いてきましたが、実は彼女は、プロのロシアン・ロマダンサーでもあるのです。ギター、ヴァイオリン、歌で構成される音楽に合わせて軽やかにステップを踏みながら、ひらひらでたっぷりとしたカラフルなスカートを翻して踊るロマダンス。結婚式などのイベント、レストランを中心に活動され、これまでに多くの人を魅了してきました。
ところが、ここに来てこのコロナ禍。現在は、ダンスを通じて知り合った世界中のダンス仲間と共に、12月19日(土)にオンラインのダンスイベントを開催するため、にわかに忙しくなってきているとのことです。イベント詳細については、ゆう子さんのウェブサイトにて、彼女の優雅な写真と共に掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
衣装も美しいロシアン・ロマダンス
ドイツ語教師とロマダンサーを両立させるために、努力を惜しまないゆう子さん。その姿はりりしく美しいものです。
石川ゆう子さんウェブサイト:www.yuko-dance.de
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
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