ジャパンダイジェスト

ドイツ版の流鏑馬!? ダース半島の樽叩き落とし祭り

いよいよ夏本番! 今回は、バルト海に臨むダース半島の夏の風物詩で、私の大好きな「樽叩き落とし祭り」をご紹介します。

正式名称は「Tonnenabschlagen」(トンネンアップシュラーゲン)。ざっくり説明をすると、10名ほどの騎手が順番に3~4メートルの高さに吊るされた樽の下を馬で駆け抜けます。その際に樽をこん棒で叩き、誰がその樽を完全に壊し落とせるかを競うお祭りなのです。元は中世の騎士たちの遊びから派生したともいわれており、2017年からユネスコ無形文化遺産の暫定リストにも登録。7月の毎週日曜日にダース半島の四つの村のどこかでお祭りが催されており、地元民と観光客で盛り上がります。

これから叩き壊される樽これから叩き壊される樽

白いシャツと黒いズボンの騎手たちを乗せた、つやつやの毛並みが美しい馬が颯爽と目の前を駆け抜けていき、騎手たちは順々に樽を叩き続けていきます。樽にこん棒がクリーンヒットすれば観客たちが歓声を上げ、空振りしても、司会者からの「おっと、昨晩呑みすぎたのか?」なんて少し意地悪なコメントに笑いが起こります。合間には地元楽団のミニコンサートもあり、冷たい飲み物を片手にいつの間にか会場全体が一体となっていくのが感じられるのです。

このお祭りの主役の樽は、柏の葉とこの地方のシンボルカラー青と白のリボンで飾り付けられています。これを容赦なくきれいさっぱり叩き落とした騎手が、その年の「樽王」(Tonnenkönig)の称号を得られるのですが、それ以外にもあと三つの「王」の称号があります。まずは、樽の底を落とした騎手が「底王」(Bodenkönig)、そのあと最後の側面の板を落とすと「板王」(Stäbenkönig)。しかし落馬をしてしまうと不名誉な「砂王」(Sandkönig)になってしまうことも。

叩き割る瞬間叩き割る瞬間

その昔、樽王になるとその村の1番美しい娘を選んで結婚することができたので、騎手が独身男性限定という時代もあったそう。しかし今では、お孫さんのいる男性や若い女性も騎手として参加していて、祭りの後は飲めや歌えやの「樽王主催パーティー」が盛大に開かれます。

ダース半島のこのお祭りの起源は諸説ありますが、最も有力なのは17~19世紀前半まで続いたスウェーデン支配からの解放を祝うために始まったというもの。当時のダース半島では漁業と農業が盛んでしたが、税金として不当な量の収穫物をスウェーデンから徴収されていました。そんな村人たちの不満がたまりにたまったところで、ようやく1815年に解放の日が訪れたのです。「我慢の日々の終わりを祝うお祭り」という意味では、今のコロナ禍の状況にも通じるものがあるのではないでしょうか。

馬もおめかししています馬もおめかししています

2020年はコロナ禍で中止になってしまいましたが、今年はコロナ禍からの解放の象徴として、ダースの村々でいつもより激しく樽が叩かれることでしょう。

写真提供:ブルスト工房 (Twitter @akmkdt)

ハス エリコ
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
griffin-guides.com
 
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