ここロストックでは、毎年8月第2週の木曜~日曜日の4日間にわたって、世界中から歴史的価値のある帆船や巨大なクルーズ船などが集結する大イベント「ハンゼセイル」(Hansesail)が開催されます。1991年から始まったこのお祭りは、2020年夏に記念すべき第30回を盛大にお祝いするはずでした。が、コロナ禍で残念ながら2021年に延期に。その時は「1年後にはまたぎゅうぎゅうの人の中で盛大にお祭りを楽しめるのだろう」なんて思っていましたが、そうは問屋がおろさなかった今夏。春先にハンゼセイルの開催が正式アナウンスされると、賛否両論ありましたが、「楽観的に別の方法で」(Optimistisch anders)というスローガンを掲げて、無事に開催までこぎつけました。
港に停泊する帆船
まず例年と大きく違ったところは「規模」。例年であれば200隻近くの船が遠くは南米から、はたまた日本からロストックの港に集結するところですが、今年はドイツ国内、オランダ、スウェーデン、ロシアから集まった100隻ほど。しかしそれでも、何層にもなって大きな帆船が停泊している様子はロマンで溢れていました。これらの船には事前に予約すれば乗船でき、バルト海ミニクルーズが体験できます。また例年通り、船上ではコンサートも開かれていました。
巨大クルーズ船とバルト海へ向かう船
来場者数も当然ながら縮小されました。例年なら100万人が訪れますが、一度に会場に入れる人数を最大1万5000人までと制限をかけていたため、今年の来場者は4日間で15万人ほど。入場者には、コロナ検査の陰性結果、ワクチン接種の証明書、回復証明書のいずれかの提示が必須です。そのため会場は全長3キロ以上のフェンスでぐるりと囲まれ、2カ所の入口には消毒スタンドとゲート、警備員が配置されていて、必ずそこを通らなければならない仕組みになっていました。面白い試みだと思ったのは、「衛生ヘルパー」(Hygienehelfer)と背中に書かれた安全ベストを着たスタッフが、医療用マスクを必要な人に配布できるよう巡回していたこと。ちなみに会場は基本的に屋外なので、マスクは「していた方がいい」というルールです。また会場近くにはコロナ検査会場と、予約なしでワクチンが接種できる会場が隣接していました。
入場ゲートの様子
今回私が一番感じたことは、座ってのんびり談笑ができる飲食スペースがものすごく少なかったこと。これがもしかすると「ウィズコロナ時代のお祭りの姿」になってしまうのかと思うと、少し寂しい気持ちも。しかし、さまざまなイベントが軒並み中止になってしまうよりは、最善の方法を模索していくという点でも今回のハンゼセイルの開催には意義があったように思います。さて、来年はどうなることでしょうか。
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
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