色とりどりの宝石がピアノという泉からとめどなく湧き出てくるような音色、鍵盤の上でバレリーナが軽やかに舞っているような指先の動き、そして2台のピアノから完全に一体化して出てくる音色……。そんなピアノを奏でていたのは、Piano Duo Sakamotoで活躍中の坂本彩さんとリサさんです。
このたび、クラシック音楽界で最高峰と呼ばれるミュンヘン音楽コンクールで見事3位に輝き、さらに観客の心を最も掴んだ出場者に贈られる「聴衆賞」のダブル受賞を果たしました。実は、お二人は2019年秋からロストック音楽・演劇大学のピアノ・デュオの修士課程で日々精進をしている「ロストックな人」。ということで、今回はピアノ演奏中とお話している雰囲気のギャップに驚く、彩さん・リサさん姉妹にオンラインでお話を伺いました。
Piano Duo Sakamotoのリサさん(左)と彩さん(右)
2020年10月末にコンクールの課題が発表され、翌年3月のビデオ予備審査と、6月のビデオ1次予選を勝ち進みました。そして9月から、ミュンヘンで観客を入れての2次予選、準決勝、決勝という長い道のりを経て、堂々の第3位、そして聴衆賞を受賞。「二人でずっと憧れてきたコンクールで、(ミュンヘンの)ヘラクレスホールに『やっと来たな』という思い」だったといいます。そして決勝でバイエルン放送交響楽団とモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」を演奏し終わり、盛り上がる観客席を見た時に「全てが浄化されていった」ように感じたと語ってくれました。
ミュンヘン国際音楽コンクール決勝のステージ
いつからか私の書く記事で毎回出てくる「コロナ禍で」という決まり文句。今回も例外ではなく、課題が発表されてすぐにドイツではロックダウンになりました。大学も閉鎖されてしまったため自宅での練習を余儀なくされ、ご近所さんと折り合いをつけなければならない時期もあったそうです。「(予選に)一つひとつ受かったことは運が良かった」とおっしゃっていましたが、その実、ものすごい時間を練習に費やしていていたよう。「練習するために生活をしていました」とお二人が語るように、この素晴らしい結果は努力の結晶以外の何物でもない、と感じました。練習で行き詰まった時には、ロストックの港に行って美しい夕焼けを眺めたりすることでとても癒されたのだとか。
ロストックの港での一コマ
ちなみにロストック音楽・演劇大学では、ピアノ・デュオの巨匠であり、ピアノ・デュオを専門とする世界初の教授であるシュテンツル兄弟が若手を育成しています。そのため世界中からピアノ・デュオ奏者がロストックに集まって、日々練習に励んでいるのです。
コンクールが終わった今、お二人は少し休憩を挟んで、年明けのピアノ・デュオ修士の卒業試験の準備に取り掛かるとのこと。これからも、お二人が奏でるピアノに、多くの人々が魅了されていくことでしょう。
坂本彩・坂本リサ オフィシャルサイト:www.pianoduosakamoto.com
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
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