ラーデボイル（Radebeul）のケッチェンブローダ（Kötzschenbroda）

ドレスデンから西の地域は、エルベ川沿いになだらかな斜面のワイン畑が続く、ザクセンのワイン産地です。この街の中心地から北西約10kmにある緑豊かなラーデボイルには、斜面を利用した庭や大きな住宅が建ち並び、ワインの芳醇さが漂っています。中でもケッチェンブローダは、通りに面してかわいらしい家並みが続く一角。1271年の記録では、ここには60軒の農家しかなかったようですが、今では毎年秋のワイン祭りの開催地として親しまれています。
www.radebeul.de

路面電車の停留所、モーリッツブルガー通り（Moritzburger Straße）に降り立つと、眼前に広がるのは変哲のない普通の街の風景。しかし道の向こうに続く斜面、その先に建つ大きな白い給水塔が見えると、ザクセンのワイン生産地の心臓部に来たことを実感します。ラーデボイル西駅（Radebeul West）の前を通り、ほんの3分ほど行くと、アルトケッチェンブローダ通り（Altkötzschenbroda）に出ます。通りの中央には緑道があり、夏はレストランやカフェのテラス席となります。

路面電車の停留所
Moritzbwger Straße

この通りの家はどれも、間口の狭い切妻が通りに面していて、それが奥に細長く延びています。京都の町屋や古代ローマのスキエラ型住宅と同様、過密な街中に誕生した住宅の建て方ですが、それらと異なるのは家と家の間に細い通路があり、後方の住宅や庭に通じている点です。どの家の外壁も青やピンク、黄色などカラフルですが、淡い色なので全体としてやさしい印象を与えています。さらに窓が小さく、しかも位置が低いので、ミニチュア模型のようなかわいらしさがあります。綺麗に飾り付けがしてあったり、お店であれば小さなショーウインドウになっていたりするので、窓を眺めながら歩くだけでも楽しめます。

21番地にあるハイマーツシュトゥーベ（Heimatstube）は中でも際立って小ぶりな木組みの建物。かつては農作業小屋で、現在はギャラリーとして利用されています。歩けば天井や壁にぶつかりそうなほど小さなこの建物の広さは、3フロアあわせてたったの30㎡！　入り口のドアの上には工事現場用のトラテープが貼ってあり、頭をぶつけても痛くないよう、発泡スチロールが設置されているのが笑えました。

ミニチュアのように小さくて目を引くHeimatstube。
4〜6、9〜11月の日曜日（14:00〜18:00）オープン

途中、カフェ・レストラン「Alte Apotheke」にてひと休み。かつての郵便局や薬局は立地が良く、立派な建物である場合が多いので、興味を引かれたのです。テーブルの上の一輪差しをよく見ると、薬品用のガラス瓶。店内を見渡せば、薬局時代に使用されていたガラス瓶や秤、販売していた薬や宣伝ポスターがあちこちに。壁に掛かる白黒の写真を見て、昔の姿を想像しながらコーヒーをいただきました。

ひと際大きくて目立つ建物。
かつて薬局だったレストラン・カフェ
Alte Apotheke
Altkötzschenbroda 48,
www.alte-apotheke24.de

この通りの先には教会（Friedenskirche）があり、その脇の小道を下ります。両側が石の壁で石畳の小道は、「いったい、いつからこのままなのだろう？」と思うほど古さを感じさせました。ひしめき合う建物の裏側には果樹園が広がり、のどかな雰囲気。それを抜けると突然、視界が開けてエルベ川の土手に出ます。土手沿いに歩いて駅前の通りに戻ってきました。次回は9月のワイン祭りの時に訪れたいと思います。（福田 陽子）

タイムスリップしたような
静寂さが漂う教会脇の小道

エルベ川沿いの道。
見晴らしがよく、夏は川を渡る風が心地良い

① Deutsche Bahn S1にて
Dresden Hbf 10:00発→Radebeul West 10:21着
② 路面電車にて（10分おきに出ている）
3番・7番Dresden Hbf→Pirnaischer Platz。
4番に乗り換え、Moritzburger Straße下車
①② ともに1人片道3.80ユーロ