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歯の写真撮影は何のため?

歯の写真撮影は何のため?

歯科医院で治療を受けたとき、口の中をカメラで写真撮影された経験がある人も多いのではないでしょうか。特に歯並びを改善する歯科矯正治療やクラウン治療では高い頻度で写真撮影が行われます。治療のための写真記録は歯科医療独特とも言えるでしょう。今回は、患者さんから多く受ける質問「普通の病気の診療では写真を撮ることはないのに、なぜ歯科治療では写真撮影をするのか」についてお話しします。

大きなフラッシュが付いた口腔内撮影用カメラ
大きなフラッシュが付いた口腔内撮影用カメラ

歯科診療で写真撮影を行う目的はさまざまですが、一番大きな理由は「治療経過や術前・術後の評価」のためです。例えばケガや風邪のため病院で診察してもらうとき、その目標は「治癒能力を最大限に生かして元の健康な状態に戻ること」です。ところが歯科の場合、虫歯のためのクラウン治療や歯科矯正治療で歯並びを変える治療は、「人為的に新たな状態をつくって身体に適応させる」という、一般医療とは大きく異なる治療が目標。そのため歯科治療では人工材料や機器を利用し、歯科医師の手によって多くの治療ステップを必要とします。その過程を評価するために簡単かつ確実に記録する手段が写真撮影なのです。写真以外でも歯型を取り、口腔模型を作って記録することができますが、時間がかかり煩雑な上、歯科治療では重要な「色」を見ることができないという欠点があります。また写真があれば、歯科医師やスタッフ間で治療についての検討や意見交換なども容易です。このように、治療をスムーズに行うためのツールとしての役割も果たします。

前歯の治療/術前(上)・術後(下)
前歯の治療/術前(上)・術後(下)

ドイツでは治療の評価以外で写真撮影をする理由として、プライベート保険の存在があります。プライベート保険加入者が大きな金額の歯科治療が必要になったとき、その歯科治療に十分な必要性や正当性があるかを評価するため、保険会社から口腔内状況の診査資料の提示が求められることがあります。そのなかでも、口腔内写真は重要な項目の1つになっており、近年ではドイツに限らず、プライベート保険制度を導入している国では治療前に質の高い口腔内写真記録が求められています。日本はドイツのような公的保険に代わるプライベート保険が存在しないため、保険のために口腔内写真撮影が行われることはありません。

かつての写真撮影はフィルムカメラを使用していたため、写真枚数に比例してコストがかかる上、撮影に失敗しても現像しなければ結果が分からないという不確実性がありました。しかし現在では、歯科医療の現場でもデジタルカメラの進歩の恩恵を受け、フィルム代を気にせずに高いクオリティーの写真を撮影することが可能に。口腔内の写真は「狭い範囲を大きく写す」という特殊な撮影のため、マクロレンズという被写体に近づかなくても高倍率で撮影できるレンズを使用したり、影を極力抑えてきれいに写すため、レンズの先端に取り付けることができるタイプのフラッシュを併用したりしています。口腔内撮影のための機材費用はまさにピンキリ。質にこだわらなければ数万円のものでも可能ですが、画質にこだわって大型センサーを搭載したカメラを導入すると、総額で50万円を超えることもあります。

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