ビールと言えば、暑い日にキンキンに冷やして飲むゴールド色のアルコール。日本では、そんなイメージがありますよね。日本の大手メーカーが醸造・販売しているビールのほとんどは、「ピルスナー」と呼ばれるスタイルのビールです。しかし「日本地ビール協会」のスタイル・ガイドラインによれば、世界には85種類のスタイルが存在するそうです。銘柄は1万種類以上あるでしょう。「そんなにたくさんあったら混乱するよ」という声が聞こえてきそうですが、 心配ご無用。発酵の種類は3つだけです。主要なスタイルが生まれた地域と、それがどの発酵グループに属しているのかさえ抑えておけば、飲み友達に一目置かれますよ。
1つ目は上面発酵ビール(エール)。発酵中に酵母が表面に浮かび上がってくることから、こう呼ばれています。エール酵母(サッカロマイセス属セレヴィジア種)を使い、16〜21度の常温で約3〜6日かけて発酵させます。フルーティで華やかな香り、豊かな味わいが特徴のビールです。
2つ目は下面発酵ビール(ラガー)。ラガーは貯蔵という意味です。ピルスナーはこのグループに分類されます。ラガー酵母(サッカロマイセス属ウヴァルム種)を使って、4〜10度の低温で約6〜10日かけて発酵させます。発酵が進むにつれ、酵母は下に沈殿します。さらに低温で1カ月間熟成させる必要があるため、この発酵法が広まったのは冷蔵技術が発明された19世紀以降です。シャープですっきりとした味わいが受け、今や世界中で最も飲まれているピルスナーですが、ビールの歴史からしてみれば新入りなのです。
そして3つ目は自然発酵ビール。培養管理されていない自然の酵母から造られるビールで、ビールの原型と言えるものです。現在、常時流通しているのは、ベルギーのセンヌ川近郊で造られているランビックというビールだけです。麦汁を外気に晒し、空気中や屋根裏に棲息している野生の酵母を取り込んで1〜3年熟成させます。その間に、多くの種類の酵母が入れ替わり立ち替わり発酵を繰り返します。強烈に酸っぱく、独特の風味がします。
生まれた国 | スタイル | |
上面発酵 | ドイツ | ケルシュ、アルト、ベルリーナヴァイセ、ヴァイツェン など |
イギリスとアイルランド | ペールエール、ブラウンエール、ポーター、スタウト、スコッチエール、バーレイワイン など | |
ベルギー | トラピスト、ゴールデンエール、セゾン、ホワイト、 フランダースレッド、フランダースブラウン など | |
アメリカ | アメリカンペールエール など | |
下面発酵 | ドイツ | エクスポート、ヘレス、メルツェン、デュンケル、ボック、ラオホ、シュバルツ など |
チェコ | ピルスナー など | |
オーストリア | ウィンナー など | |
アメリカ | アメリカンラガー など | |
自然発酵 | ベルギー | ランビック、フルーツランビック など |
ケルンのケルシュとデュッセルドルフのアルトビールは、エール酵母を用いて高温で発酵させ、熟成は下面発酵の手法に基づいて低温で行うことから、ハイブリットビールとも呼ばれています。上面発酵のフルーティな香りと下面発酵のシャープな味わいを兼ね揃えたビールです。
ビールは紀元前6000年にメソポタミア地方(現イラク、シリア)で誕生して以来、長い歴史の中でその土地の風習や土壌、気候、民族的な嗜好などを反映し、多種多様なスタイルへと発展してきました。ビールにも土地柄が出ているので、そんなことを思いながら飲んでみるのも楽しいかもしれません。美味しいビールは世界中に溢れています。分類表を手掛かりに、ビールの世界を冒険してみてください。
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