ジャパンダイジェスト

頑固一徹!ドイツのビール純粋令

世界で一番古く、今なお効力を持つ食品関連の法律をご存知ですか? それは、ドイツのビールに関する法律「ビール純粋令(Reinheitsgebot)」です。ビールの原料を「大麦、ホップ、水(後に酵母が追加される)」に限定したビール純粋令は、1516年にバイエルン王ヴィルヘルム4世によって制定されました。バイエルン生まれのビール純粋令が、5世紀を経た現在でもドイツ全土で適用されているという事実は、ドイツ人の頑固なまでの美味しいビールに対するこだわりの現れと言えるでしょう。

1871年にプロイセン王を皇帝とする連邦国家、ドイツ帝国が誕生すると、バイエルンは帝国に加わる条件として、「ビール純粋令をドイツ全土で有効にする」ことを要求しました。翌年に制定された酒税法では、帝国内でのビール醸造に澱粉や砂糖を使用することが認められましたが、バイエルンは純粋令を主張し続けます。そして同令に則って造られるバイエルンビールの美味しさは徐々に帝国内に広まり、1906年にはドイツ全土でのビール純粋令の適用が決まりました。もちろん、国内全土での適用には反対の声も上がりました。特に、それまで原料に大麦以外の麦芽やコーンスターチを使っていた北ドイツの醸造家は猛反対でした。しかし、ピルスナービールの流行も後押しし、副原料やスパイスを使用したビールは次第に消えていきました。ドイツ帝国崩壊後のワイマール共和国、第2次世界大戦中のナチス・ドイツにおいても純粋令は継承されます。

ビール純粋令
ラベルにはビール純粋令を謳った一文が。
今夜のビールには付いていますか?

ところが戦後、純粋令は窮地に追い込まれます。ヨーロッパ共同体(EC)諸国からの圧力がかかったのです。フランスが先鋒となり、「ドイツのみがビールの原料を限定することは、EC内の自由な貿易を阻害する」とEC紛争裁定委員会に訴えたのです。(確かに、ベルギーのフルーツビールやアイルランドのギネスビールなどバラエティー豊かなビールまでもが締め出されるのは残念です)1987年に欧州司法裁判所は、「純粋令を保護主義的規定であり、非合法」と判決を下しました。これにより、国内用に造るビールには純粋令を適用するが、国外からの輸入品と国外への輸出品には適応しないことになりました。さらに1993年の酒税法改正により、国内で醸造、消費される一部のビールにも、大麦以外の麦芽や砂糖を使うことが可能となりました。

法律改正により、ドイツのビールは変わったのでしょうか? いいえ、ドイツの多くの醸造家は変わらず純粋令を守り、ビールを造っています。最新の醸造設備が導入されても、美味しいビールを守るための頑固さは変わりません。ドイツで手にするビールには、しばしば「ドイツのビール純粋令に則って造られています」と印刷されたラベルが貼られています。純粋令に則ったビールは、無添加で栄養価が高く、安全で健康的な飲み物として消費者に愛されているのです。誰が何と言おうと、純粋令はこれからもドイツの誇りであり、美味しさを約束するブランドの1つです。

 
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