これまで6回にわたりビールの原料について見てきましたが、その締めくくりとして、ビールの造り方をご紹介しましょう。知ってから醸造所見学に行くと、楽しさ倍増ですよ。ビール造りを象徴する大きな醸造窯は、醸造所によって2 ~ 4基あります。各醸造所の違いは設備の構造のみで、基本的なビールの造り方はどこも同じです。
ドイツビールの基本的な原料は麦芽(Malz)、ホップ(Hopfen)、水(Wasser)、酵母(Hefe)ですね。ヴァイツェンには小麦(Weizen)も使われています。これらの原料からビールが出来る仕組みを簡単に説明しますと、「麦芽に含まれるデンプンを酵素が糖に分解し、酵母が糖を食べると、アルコールと炭酸ガスになる」です。
いくつかのドイツ語の単語と醸造方法さえ知っていれば、
醸造所見学は充分に楽しめます。この夏、訪れてみては?
まずは麦芽造り(Malzherstellen)。大麦に水を与えて芽が出たところで温風乾燥させ、成長を止めます。発芽する際、麦の中で後に糖化の工程で活躍することになる酵素が造られます。小さな醸造所では、麦芽の状態になったものを購入しています。そして、麦芽を粉砕機で殻ごと粗く粉砕(Schroten)します。
次は糖化(Maischen)です。煮沸釜に粉砕した麦芽と湯を加えて加熱し、温水に溶け出したデンプンを、麦芽中の酵素が糖に分解します。酵素が活性化するのは62 ~ 70度。麦芽には数種類の酵素が含まれており、最大限に活性化する温度はそれぞれ異なります。どの酵素をどれくらいの時間活性化させるかによって糖化の程度やタンパク質などの成分が変わるので、造り手は理想とする麦汁の成分になるよう時間や温度、加熱方法を工夫しています。糖分をたっぷり含む糊状の麦汁(Maische)になったら、温度を77度以上に上げ、酵素の働きを止めます。
さぁ、甘い麦汁と出がらしになった麦芽を分離(Trennung)しましょう。専用の濾過(ろか)装置を持つ醸造所もありますが、古くからあるのは麦芽自体をフィルター層として使う方法です。麦芽が沈殿し、液体と分離したら底の栓を開いてゆっくりと液体を抜き出します。麦芽滓がフィルターの役割をし、澄んだ液体だけが出てきます。一度濾しただけでは、麦芽滓の隙間にエキス分がまだたくさん残っているので、上から温水シャワーをかけてさらにエキス分を取り出します。
続いては煮沸(Kochen)。麦汁を煮沸釜に移し、60 ~ 90分間ぐつぐつと煮沸します。もくもくと水蒸気が上がり、醸造所内には甘い香りが漂ってきます。途中で、苦み付けのためのホップが投入されます。煮沸には、ホップの苦味成分を引き出す目的のほか、殺菌、麦汁濃度の調整、その他濁りの元になる凝固性タンパク質を取り除きやすくする効果もあります。煮沸の終盤の段階で、香り付けのためのホップを再投入します。今回はここまで。次は、いよいよ発酵に進みます。
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