ジャパンダイジェスト

Nr. 39 ドイツの夏休みの過ごし方

日本もドイツも夏休みの真っただ中。ドイツでは春頃から「夏の休暇はどう過ごす?」の質問が合言葉です。彼らは日本人から見るとうらやましいほど長い休暇を楽しんでいますね。先日、日本の小・中学生が宿題ということで、朝顔やヒマワリ、ホウセンカの鉢を学校からもらって帰ってきて、夏休みの間ずっと観察日記をつけていることを知ったのですが、「これってドイツではありえない」と思いました。なぜなら植物の世話をする必要があり、それを観察するとなったら、旅行になんて出掛けられませんよね!

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

ドイツ人の感覚では、バカンスとは2泊3日のようなものでなく、数週間や1カ月と長期にわたり家を留守にして旅に出ることを指すことが多いので、植木鉢の世話なんか到底できません。旅先に持っていくわけにもいかないし。そう考えると“植物観察”の宿題はまるで、「旅行に行かないで家にいなさい」と言われているみたいです。宿題以外にも日本の場合、夏休みには学校や部活、習い事などで何かしらの行事が予定されていて、出掛けないことが前提になっているなと思うことがあります。この状況を話すと、「日本の子どもは夏休みに休めないんだね。気の毒に……」とドイツ人に言われてしまいました。

娘が学校に通っている間にドイツの学校から夏休みの宿題を課された経験はありません。自由研究の宿題も、本当に何もなしです。夏休みの時期はちょうど学年の年度末。9月(または8月)からは新学年が始まるので、クラス替えや担任の先生が変わることもあって、どの先生も宿題の行方に責任が持てないのかもしれません。でも、本当のところは「夏休みは休むべし」ということではないでしょうか。日本のような塾の夏期講習もなく、宿題のストレスもなく、勉強の“べ”の字もない開放感で満たされた“自由時間”をひたすら遊ぶ。先生もしっかりお休みします。

では、もしお父さんとお母さんが働いていたら、子どもはその間をどう過ごすのでしょうか。ドイツの夏休みは6週間なので、例えばお父さんとお母さんが交互に休暇を取って子どもと一緒に過ごせる場合もありますし、シングルマザーの場合は3~4週間ほど仕事を休み、あとは児童館や教会などのサマープログラムに子どもを参加させることも。おじいちゃんおばあちゃんと過ごしたり、友達同士の家を行き来したり。子ども同士で一緒に遊びたくても、お互いのスケジュールは意外とタイトだったりするのです。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

ドイツと日本の夏休みの過ごし方、本当に違いますね。 私は「ドイツ人って子どもに勉強して欲しくないのかな」なんて思うこともあります。しかし、ドイツの子どもにとって実は夏休み直前は少しナーバスになる時期。終業日にもらう成績表の中には次の学年に進学できるかどうかの判定が書かれているからです。娘が小学5年生のときには、1クラス(33名)の中に進学できなかった子が3人いました。うち2人は4月に進学できないことを担任の先生から聞かされ、もう1人は夏休みの直前に「様子を見ていたがこの成績では難しい」と言われたようでした。シビアだなと思います。というわけで、夏休み直前には、学年終了パーティーが催されるのですが、それは同時に進学しないクラスメイトとのお別れ会でもあります。ドイツで学ぶ子どもにとって、夏休みは学業のプレッシャーから解放される貴重な時間でもあるのです。

 
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