去る9月15日、ビアソムリエの世界大会がミュンヘンで開催され、ドイツの醸造家Oliver Wesseloh氏が2013年のチャンピオンに輝きました。2位は米国のビール販売員Don Lindsay氏、3位はブラジルの貿易会社社員Tatiana Spogis氏です。
ビアソムリエとは、ドイツの権威あるデーメンス醸造アカデミー(Doemens)による認定資格を得た、ビールに関する幅広い専門知識、技術、利き酒能力、接客術を有するビールの専門家。世界中のビール業界で、醸造やサービス、マーケティングなどの幅広い分野で活躍しています。ビール市場の拡大に伴い、ドイツのみならず、イタリアやスイス、ブラジル、米国、日本でもビアソムリエの講習会が開かれるようになりました。
2009年から隔年で開かれているこの世界大会。3回目の今年は規模を拡大し、世界最大の飲料見本市「ドリンクテク(drinktec)」に合わせて開かれました。世界10カ国から54人の優秀なビアソムリエがエントリー。ドイツからは、2月からの予選を勝ち抜いた30人が出場しました。
大会は、まず決勝に進む6人を3回に分けて選出することから始まります。その審査項目は多岐にわたり、選出は非公開で行われます。初戦では、ビールの文化や醸造に関する基礎知識を問う筆記試験と、ビールの中に潜む香りを嗅ぎ分けたり、数種類のビールを試飲して銘柄を当てる官能試験が行われました。それまでは、料理との相性に関する筆記試験、3回戦ではビールの描写が問われます。
決勝戦は、静かだったそれまでとは対照的に、審査員やマスコミ、醸造関係者など、大勢の観衆の前でビールを大々的にアピールするプレゼンテーションです。ファイナリストは提示された8つの銘柄のビールの中から1つを選んで紹介します。ビアソムリエには、ビールの伝道師として世界中にその美味しさと文化を伝える使命があるため、プレゼンテーション能力は重要です。さすがは決勝戦。手振り身振りを交えながらのプレゼンは、どれも魅力的で、その知識量と表現力の豊かさに驚かされました。
その世界一に輝いたWesseloh氏はベルリンの大学で醸造を学び、米国で修業をした新進気鋭の醸造家。現在は友人とハンブルクで醸造所Kreativbrauereiを営み、5種類のビールを造っています。そのうちの1つを試飲させてもらったのですが、醸造所の名の通り独創的。米国のクラフトビールでしばし使われるドライホッピングという手法(発酵を終えたビールに直接ホップを投入し、ホップの香りをダイレクトにビールに移す)が行われています。フルーティーな上に、ホップの爽やかな香りが口いっぱいに広がり、これまでのドイツビールにない味わいでした。
ビアソムリエ大会で優勝したWesseloh氏(中央)
Wesseloh氏が優勝したことで、北ドイツで人気が高まりつつあった小規模醸造所の個性的なビールにスポットライトが当たるようになりました。この先、ドイツビールはますます多様化し、面白くなりそうです。
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