前回に引き続き、日本の学校への短期入学、そして本帰国した際の子どもの進学について、お話ししていきたいと思います。
ドイツに住むご両親の中には、いつか日本に戻りたいけれども、その時期は自分たちの都合では決められないと思っている方が多いようです。子どもの教育はどうするのか。ドイツでの永住を決意したご両親ならともかく、いつか日本に帰る心積もりをしている家族にとっては、頭の痛い問題です。子どもにとって、帰国のベストタイミングはいつなのでしょうか。
イラスト: © Maki Shimizu
その答えの1つとして、ドイツにはない「受験」のタイミングを見計らい、帰国の契機として考える親御さんが私の周りでは見受けられました。ドイツと違って日本の大学進学率は高く、いずれは日本の大学に入学させたいと思うご両親。そのために、帰国生として受験する計画を立てている方もいました。なるほど・・・・・・と思いながら、私自身は帰国日の予定などあまり本気で考えてはいませんでした。
ところが、私が娘の進学について考える日は、突然やってきました。彼女はその頃ちょうどドイツの学校でいう7年生。日本では中学1年に当たります。それまで自分がドイツ人だと思い込んでいた娘。現地校の生活は順調で友達も多く、大量の宿題には泣かされていましたが、学業はほどほどであるにしても、困難を感じることは親子共にありませんでした。ドイツに定住する可能性もありましたし、娘自身の日本への関心が薄かったこともあり、日本の受験のことや日本語教育などについて、私はあまり真剣に考えたことがありませんでした。全く“考えなかった”というわけではありませんが、「どうしようかな」という程度でした。正直なところ、娘に対して施していた日本語教育に自信がなかったこともあり、我が子が日本で暮らすのは無理なのではないか? と思っていたくらいです。
しかし、そんな娘が急に「日本に帰りたい」と言い出したのです。我が子は見た目も血筋的にも生粋の日本人。10年近くドイツに住み、現地の幼稚園、小学校、ギムナジウムへと進み、言葉もしぐさも思考回路もすっかりドイツ人でした。そんな娘がある時、我に返ったように、日本へ帰りたいと言い始めました。何があったのでしょうか。様子を見ていると、どうやら自分が日本人であることを自覚し始めたようなことを言い出したのです。「私って日本人なんだよね。それなのに日本のことをよく知らないし、日本語が上手く話せないのは変だよ」。彼女は日本人である自分を急に意識し始めて、「日本の学校に行きたい」と何度も言うようになりました。こんな日が来るとは思ってもいませんでした。それが分かっていれば、日本の学校への短期入学を少しでも多く体験させておいたのにと、今さらながら思いました。というのも、娘の日本語能力は中学1年でありながら小学校3年生レベル。日本の中学校に短期入学をさせたとき、国語の先生が(!)「これはヤバイね」とつぶやくほどだったのです。
イラスト: © Maki Shimizu
急に帰りたいと言われても、一体どうしたら良いの? 私は大いに戸惑いました。もし本当に中学1年という時期に帰国することになれば、高校受験という大きな関門が目の前に控えています。日本語がどこまで上達するのか、また、どこまで日本の環境に慣れることができるのか、はたまたこの子のアイデンティティーはどうなっていくのか・・・・・・。多くのことが未知数で、不安でいっぱいになりました。本当に帰国して大丈夫なの? このお話の続きはまた次回にいたしましょう!
< 前 | 次 > |
---|