東日本大震災から3年が経ち、日本の地ビール全体の底上げと、東北地方の活性化を目的とした「東北魂ビール」が誕生しました。ドイツ人の郷土愛からヒントを得たという発起人のいわて蔵ビール代表、佐藤航氏にお話をうかがいました。
「東北魂ビール」とは、どのようなビールですか。
東北地方にある3つのビール醸造所、岩手の「いわて蔵ビール」、福島の「福島地ビール」、秋田の「あくらビール」が共同で醸造したビールです。最初に出したのは、フルーティーな甘味の中にホップの苦味と生姜のスパイシーさがある「アップルジンジャーIPA」。リンゴは、検査に合格した福島県産のものを使っています。福島県は桃やリンゴなどの果実の名産地でしたが、震災以降、放射能の風評被害により作物が売れなくなってしまいました。それでは福島の農業が駄目になってしまう。東北魂ビールの第一の目的は、醸造所同士が技術交流することによって地ビールの品質向上を図ることですが、長期的視点では地域づくりと地方の活性化を目指しています。今後、多数の醸造所を巻き込んで東北魂ビールを造れたらいいなと思います。
若い頃、ドイツでビール修業をし、
刺激を受けたという佐藤航氏
東北地方は復興しつつあるとはいえ、ビールは地域づくりに役立ちますか。
ドイツ人って地元のビールが世界一美味しいと思っているでしょ。地元の作物を使い、地元で消費され、故郷を離れても地元を誇りに思えるビール。それが私たちの理想です。独りよがりではなく、本当に美味しいこと。美味しければ、おじいちゃんからその孫まで一緒に醸造所に行って飲み続け、そして会話が生まれる。今、私たちが美味しいビールを造ることによって、ずっと先の未来まで残るコミュニティーができればいいなと思っています。
ドイツの地産地消がお手本なのですね。ドイツは地域色も豊かです。
日本の地域にもそれぞれ特徴はあります。東京で過ごした学生時代、地方出身の友人が広島のもみじまんじゅうや大阪のお好み焼きを自慢するのが本当にうらやましかったことを覚えています。自慢できる地元のものなら、何でもいいんですよ。私は、たまたま実家が代々酒蔵を営んでいて、親父の代に地ビールを造ることになったので、ビールから地元を好きになってもらいたいと思って動いています。ですから「東北魂ビール」では、生姜やリンゴで東北らしさを、いわて蔵ビールでは酒米や山椒、牡蠣で岩手県らしさを出そうとしています。地元のものを使うと地域産業の活性化にも繋がります。ビールが地域経済を循環させ、日本中が元気になればいいですね。
日本の地ビールも美味しくなり、国内外の審査会で表彰されたり、海外に輸出されたりしていますよ。日本人が海外旅行に出掛けた際、日本の地ビールを見付けてもっとお国自慢ができるように、技術交流をし、品質を上げていきたいです。
ビールから生まれる郷土愛って素敵ですね! 私もビールを飲んで地元を自慢したいと思います。
いわて蔵ビール
www.sekinoichi.co.jp/beer/
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