ドイツに住んでいると、日本のようにあらゆるところでアナウンスが流れないことに気付く。都市近郊を走る電車では、主要駅でない限り、行き先や駅名を知らせてくれることはほとんどない。それと同様に、全く告知なくやって来るのがサマータイムだ。今回は、日本では馴染みのないサマータイムという制度について、また同じく、キリスト教徒以外は聴き慣れないドイツの祝日について、みてみよう。
サマータイムとは
サマータイムとは、デイライトセービングタイムとも呼ばれ、夏期に時間を1時間進めることによって、電気使用量を抑えようという取り組みである。主に夏の日照時間が長い高緯度地域で導入されており、欧州ではアイスランド、ロシア、ベラルーシを除く国と地域で実施されている。
日本でもたびたびその是非が議論されているサマータイム。日本と同緯度、または緯度が低い地域で導入されている国は、トルコ、ナミビア、モロッコ、メキシコの一部などだ。サマータイムを導入している先進国と地理的に近く、経済的、人的交流が多い地域が多いように見受けられる。
このように、欧州に住む人々にとっては馴染み深い制度であり、サマータイムが始まる日については公に告知がなされない。ドイツでは、サマータイムは通常3月の最終日曜日に開始され、10月の最終日曜日に時間を元に戻す。日曜日に切り換えをするのは、経済活動に支障が出ないようにするためだろう。
現在、ドイツはサマータイムに突入しており、終了するのは10月26日。標準電波を受信して、誤差を自動修正する電波時計やパソコン、携帯電話などの電子機器の時間設定は自動的に切り替わるが、その機能がない普通の目覚まし時計などは要注意だ。
ドイツの祝祭日
日本の国民の祝日は年間15日。これは世界的にみても多い方で、ドイツの法律で定められた祝日は9日(日曜日に当たる祝日も含めると11日)、フランスは10日、英国は8日である。
祝日の日数だけを見ると、日本の方が欧州諸国より多いが、有給休暇の日数は欧州諸国の方が多いため、全体の休暇日数は逆転する。日本の有給休暇は、一般的な会社では10日から支給が開始されるのに対し、ドイツは勤務開始1年目から24日に設定されている。したがって、日本は国が定めた祝祭日を合わせると合計25日、ドイツは合計33日(2014年は35日)となる。以前の記事(946号・2013年1月18日発行)で、日本人の有給取得日数の少なさに触れたが、有給の取りづらさは、社会的な慣習にもその一因があるだろう。有給休暇より祝日が多い方が、日本人にとっては休みやすいのかもしれない。
ドイツの法律で定められた休日 (2014年)
日付 | 名称 | 意味 |
1月1日(水) | Neujahrstag 新年 |
年の初めを祝う |
4月18日(金) | Karfreitag 復活祭聖金曜日 |
復活祭の前の金曜日、 キリストの受難と死を記念する |
4月20日(日) | Ostersonntag 復活祭 |
キリストが死後3日目に復活したことを 記念・追憶する |
4月21日(月) | Ostermontag 復活祭月曜日 |
同上 |
5月1日(木) | Tag der Arbeit メーデー |
夏の訪れを祝い、労働者が統一して 権利要求と国際連帯活動を行う日 |
5月29日(木) | Christi Himmelfahrt キリスト昇天祭 |
キリストの昇天を祝う |
6月8日(日) | Pfingsten 聖霊降臨祭 |
聖霊降臨、集まって祈っていた信徒に 聖霊が降った出来事を記念する |
6月9日(月) | Pfingstmontag 聖霊降臨祭月曜日 |
同上 |
10月3日(金) | Tag der Deutschen Einheit ドイツ統一記念日 |
1990年に東西ドイツが 再統一したことを記念する |
12月25日(木) | 1. Weihnachtstag クリスマス 第1日 |
イエス・キリストの生誕を祝う |
12月26日(金) | 2. Weihnachtstag クリスマス第2日 |
同上 |
※復活祭は、春分の日の後の、最初の満月を迎えた次の日曜日に祝われるため、日付が変動する。同じく、復活祭聖金曜日、キリスト昇天祭、聖霊降臨祭も移動祝日である。
今年のドイツの祝日は、上表の通りである。
こうして見てみると、聴き慣れた祝日とそうでない日があるのではないだろうか。やはり特徴的なのは、キリスト教に関係した休みが多いということ。日本人にも馴染みの深いクリスマスが2日間にわたって休日となることから、ドイツの歴史がいかにキリスト教と深く関わっているか、そして、ドイツ人にとっていかに重要な日であるかが分かる。
もう1つ特徴的なのは、連邦制を取るドイツには、一部の州にのみ通用する祝日があるということだ。例えば、1月6日は三王来朝(Heilige Drei Könige)として、バーデン=ヴュルテンベルク州、バイエルン州、ザクセン=アンハルト州では、法定祝日となっている。
また、このような祝日がある州の企業や学校は、当然休みとなる。企業も、本社の所在地によってではなく、事業所のある州の法律に則った休日が施行されるため、こちらの州の事業所では通常通りなのに、隣の州では休みということになるのだ。
日本の「国民の祝日」
国民にとって祝日は、それぞれ下記の意味を成すとともに、心身を休める大切な休日でもある。それでは、休日の多い年と少ない年があるのはご存じだろうか?
「国民の祝日に関する法律」では、祝日が日曜日に当たった場合、振替休日が発生するが、土曜日に当たった場合には発生しない。そのため、土曜日が祝日になる日数が多い年は、休日が少なくなるのだ。土日を含む休日が一番少ない年は118日、多い年は124日となる。近年で、休日が少なくなる年は2017年、多い年は2020年となる。
日付 | 名称 | 意味 |
1月1日 | 元日 | 年の初めを祝う |
1月の第2月曜日 | 成人の日 | 大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうと する新成人を祝い、励ます |
政令で定める日 | 建国記念の日 | 建国を偲び、国を愛する心を養う |
3月20~21日頃の いずれか1日 |
春分の日 | 自然を称え、生物を慈しむ |
4月29日 | 昭和の日 | 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の 時代を顧み、国の将来に思いを寄せる |
5月3日 | 憲法記念日 | 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する |
5月4日 | みどりの日 | 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、 豊かな心を育む |
5月5日 | こどもの日 | 子どもの人格を重んじ、子どもの幸福を祈る とともに、母に感謝する |
7月の第3月曜日 | 海の日 | 海の恩恵に感謝するとともに、 海洋国日本の繁栄を願う |
9月の第3月曜日 | 敬老の日 | 多年にわたり社会に尽くしてきた 高齢者を敬愛し、長寿を祝う |
9月23日頃 | 秋分の日 | 祖先を敬い、亡くなった人々を偲ぶ |
10月の第2月曜日 | 体育の日 | スポーツに親しみ、健康な心身を培う |
11月3日 | 文化の日 | 自由と平和を愛し、文化の発展を願う |
11月23日 | 勤労感謝の日 | 勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う |
12月23日 | 天皇誕生日 | 天皇の誕生を祝う |
※建国記念の日は、2月11日と政令で定められている。
※春分の日と秋分の日は、国立天文台が毎年2月に翌年分を発表している。
法律で定められた祝日
Gesetzliche Feiertage
<参考文献とURL>
■ www.schnelle-online.info "Gesetzliche Feiertage"
■ www.ffn.de "Feiertage und ihre Bedeutung"
■ www.time-j.net 「世界の国のサマータイム導入状況について」
■ 内閣府「国民の祝日について」
■ Hotels.com「世界の休暇数調査」26.03.2013
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