ビール王国と呼ばれるドイツですが、近年はビール離れが進み、2014年の国内ビール生産量は946万klで、7年連続でダウン。1989年のドイツ統一以来、最低を記録しました。反対に消費を伸ばしているのが、アルコール度数0.5%未満のノンアルコールビールです。
ドイツでこれが飲まれるようになったのは1970年代後半ですが、2000年頃から注目されるようになり、2012年にはビールシェアの4%を占めるようになりました。ドイツのみならず欧米で市場が拡大中。ドイツではパッケージにAlkoholfreiやDriveと表記されています。
ベルリン・マラソンの公式飲料、エルディンガーのノンアルコール・ヴァイツェン
ノンアルコールビールには、大きく分けて3つの造り方があります。日本で多いのは麦汁にアルコールを造る酵母は入れずに炭酸を加える方法と、清涼飲料水にビールの風味を付ける方法。アルコールは0.00%で、いくら飲んでも酔うことはありません。ドイツでは、普通のビールからアルコールを除去する方法が主流です。わずかにアルコールを含むので、多飲すれば酔ってしまうかも。味は通常のビールと似ています。ノンアルコールビールが売り上げを伸ばしている理由には、飲酒運転の罰則が強化されたこと、企業のグローバル化が進み、勤務中の飲酒を禁止する職場が増えたこと、そしてドイツ人が健康志向になったことが挙げられています。
近年では、ノンアルコールビールがアスリートの健康を増進させるとして注目を浴びています。その論拠は、ミュンヘン工科大学予防リハビリスポーツ医学部のヨハネス・シェル教授が発表した研究。マラソンランナーやボクサーのように体を酷使するスポーツ選手は、競技後に免疫力が弱まり、感染症に罹りやすくなりますが、ノンアルコールビールが免疫力の低下を防ぎ、身体の回復を早めるというのです。特に小麦を使ったヴァイツェンビールはポリフェノールを多く含み、効果的なのだとか。
もちろん、ほかの食品からもポリフェノールを摂ることはできますが、ノンアルコールビールは低カロリーでモルト由来のミネラルやビタミン、炭水化物などの栄養素が豊富に含まれているので、よりスポーツに適しているのではないでしょうか。多くのスポーツドリンクは甘くて飲み飽きてしまいがちですが、苦いビールなら飽きることなく飲め、水分補給と疲労回復効果が期待できそうです。ビールは塩分との相性も抜群ですから、汗と共に失われたナトリウムを食品から摂るにも良いですね。
毎年9月に開催されるベルリン・マラソンのゴール地点では、ヴァイツェンを専門に造っているエルディンガー社のノンアルコールビールが配られています。テニスやゴルフなどのスポーツを観ていると、合間にノンアルコールビールを飲んでいる選手を目撃することがあります。普段は断然、通常のビールを飲む私ですが、たまにはノンアルコールも飲んでみようかという気になってきました。
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