日本に帰国してから今日まで、娘はドイツの友人と頻繁にコンタクトを取り合っています。そのほとんどがインターネット上で、フェイスブックやチャットが中心。一度始めるとエンドレスに話し続けます。娘がオンライン表示にした途端、ドイツ語でどっと話し掛けられるようで、返事をするのが大変になり、最近はわざとオフラインにしたままでいることも多いようです。
ドイツ人は概して情に厚いというのでしょうか、娘の友人たちは心のこもった言葉を掛けてくれるようです。「日本は楽しい?」「台風のニュースを見たけど大丈夫?」「日本では何が流行っているの?」「いつドイツに戻ってくるの?」と、優しい気遣いが感じられます。遠く離れていても、こうして友情が続いていることに感動さえ覚えます。単なる顔見知りでは友人にはなり得ません。友人とは、“あなたが好きだ”ということをはっきりと相手に伝え、いつも互いに気持ちを注ぎ合う。ドイツ人の友達付き合いというのは、恋人同士にも似た、そんな深い間柄を意味するようです。
イラスト: © Maki Shimizu
ところで、フェイスブックとはとても便利なもので、写真で近況が分かることもあり、相手の外見的な変化までばっちりと確認することができます。娘が16歳になったとき、同級生だった何人かのドイツの友人が仕事を持ち始めました。そのうちの1人は毎日一緒に小学校に通っていた女の子で、基幹学校(Hauptschule)出身。この年齢になると、すでに立派な社会人として成長していました。さらに実科学校(Realschule)に進学した友人も就職活動をスタート。職業訓練の一環として銀行や病院などで実習を受け、その立ち姿は写真で見るだけでも大人そのものです。ギムナジウムの友人はというと、相変わらずの勉強三昧にもかかわらず、濃いめの化粧をし、家族公認の彼氏がいて、体格は大人並みで、自己主張もはっきりとしているようです。
すると、そんな旧友を見た娘は、自分がとても子どもに思えてしかたがないと言い出します。彼女自身はテレビのアイドルに夢中になり、漫画も大好きで、まだ将来のことについては真剣に考えられない状態。それに比べてドイツの友人は、同い年なのに皆すっかり大人になってしまったと焦り始めたのです。「やばい、私って子ども過ぎる!」と、フェイスブックを見るたびに叫ぶのでした。そんなことが、なんと2年間も続きました。「たまにはドイツに遊びに行ったら?」とドイツ行きを促しましたが、娘はなんとなく旧友に再会するのが怖いようでした。
イラスト: © Maki Shimizu
しかし、その娘がとうとう決心するときがきました。この8月にドイツへ行くことにしたのです。昔懐かしいドイツの友人と、20日間を過ごします。これも娘が今現在、また人生の新たな転換期にいることの証拠です。
日本の大学へ進学しようか、ドイツで何かを見付けるのか。将来の夢がはっきり描けず、やりたいことが見付からない娘。それに比べ、人生を自分の足で歩き始めているように見えるドイツ人の友人たち。18歳になった彼らは、すでに飲酒も選挙も許された成人です。今年6月のフェイスブックには、卒業パーティーでのまぶしいくらいのイブニングドレス姿がアップされ、娘はその写真をいつまでも羨ましそうに眺めていました。
この夏、はたして娘はドイツでどこまで変身することができるのか。次回はその報告をしたいと思います。お楽しみに。
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