ジャパンダイジェスト

まずは自己紹介から

まずは自己紹介から

今回から当コラムを担当する宮川順充です。私は札幌で生まれ育った生粋の道産子です。1995年に日本で歯科医師免許を取得し、その後、研修医と大学院を経て2003年まで計8年間、神奈川歯科大学の歯科矯正学講座に在籍していました。

その当時、所属していた医局がオーストリアの大学と学術的・臨床的提携があった縁で、2004年からウィーンで生活するようになったのが欧州生活のきっかけです。オーストリアではドナウ大学院大学で、特に顎機能関連について講義や実習指導をしていました。

ウィーンでの実技実習の様子(筆者:写真右)
ウィーンでの実技実習の様子(筆者:写真右)

大学には欧州を中心に、世界中から受講生が集まっていました。すでに開業している歯科医師や、他大学所属の若い医局員や研修生も参加しており、大きな刺激を受けました。また、大学から派遣され、欧州各国を訪問する機会もあり、それぞれの国や地域の歯科医療事情や社会的背景について、身を持って知ることができました。

臨床は、主にウィーン市内にある病院で経験を積みましたが、日本人と欧州人の顎や咬み合わせの違いに大いに戸惑いました。ウィーンで臨床の仕事を始めた当初、オーストリア人の治療がいくら頑張っても一向に進まず、自分の技術が急に落ちてしまったのではないかと本当に悩みました。しかし、日本人の資料と欧州人の資料とを照らし合わせると、一般的に認識されている以上に、根本的な部分で顎と咬み合わせの構造が異なることに気が付きました。念のため、過去の論文を調べてみたのですが、日本人と欧州人の骨格や咬み合わせの違いと、その治療方法の差などの報告はありませんでした。しかし、ウィーンで行ってきた症例を最初から見直し、治療方針を大きく転換すると、驚くほど上手く進むようになったのです。

ウィーンの病院には日本人の患者さんも多く来院しており、常に異なる人種を比較しながら、患者さんに合わせた診断・治療を行っていました。その貴重な経験が今に生かされています。

3年間のオーストリア生活を終えた後、カリフォルニアの歯科臨床教育機関に講師として1年間赴き、先進的な他分野の専門家との出会いを通して、考え方の幅を広げられた1年でした。

縁あって、シュトゥットガルトの歯科診療所「ランドハウス歯科医院」に勤務することになったのは2009年から。今の同僚(2014年から経営パートナー)とはオーストリア時代からの付き合いです。当院では4人の歯科医師(日本人1人、ドイツ人3人)が治療に当たり、歯科技工士3人、日本人コーディネーター1人、歯科衛生士3人、歯科助手5人など、総勢25人のスタッフが患者さんをサポートしています。現在の歯科医療は、専門分野や技術が細分・特化されており、患者さんの状態によってベストな治療を行うために、それぞれ専門(クラウン、歯周病、インプラント、歯根治療、矯正など)の歯科医師が治療を行います。

シュトゥットガルトの歯科診療所「ランドハウス歯科医院」
シュトゥットガルトの歯科診療所「ランドハウス歯科医院」

次回からは、人種や文化の違いを意識しながら、ベストな治療法を模索してきた経験を通して見えてきたドイツの歯科事情をご紹介します。皆様が、ドイツでも健康な歯を維持し、幸せなドイツ生活を送れますように。

 
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