ビールを買って飲もうと思ったら、グラスがない。仕方がないからそのまま飲んでしまおう。なんてことはありませんか? それは大変もったいないことです! ビールの美味しさの半分も味わえていないかもしれませんよ。
瓶に詰められたビールは、グラスに注いだときにもっとも良い状態になるように、炭酸がやや強めに造られます。瓶や缶から直接飲んだときに、苦味を強く感じたり、舌にピリピリとした感覚が残るのはそのせいです。グラスに注ぐと適度に炭酸が抜け、口当たりが柔らかくなります。ビールの泡は、液体が空気中の酸素に触れて酸化してしまうのを防ぎ、また、香りを泡で封じ込める役割があります。
香りをしっかりと楽しみたいなら、飲み口の小さいグラスよりも大きいものを選ぶと良いでしょう。飲むときに鼻がグラスの中に入るので、香りをダイレクトに感じられます。豊かな泡を堪能するなら、チューリップグラスのようにボディーから飲み口に向かう間にくびれのあるグラスを。泡がくびれ部分で一度ギュッと圧縮されるので、注ぐにつれてこんもりとした固い、奇麗な泡がグラスから盛り上がります。
ドイツの老舗グラスメーカー「シュピゲラウ」が、
ビール醸造家らと組んで製造した専用グラス
飲み口が反りかえったグラスやストレートのものは、香りがグラスから広がるので、華やかな香りのビールに最適です。また、傾けたときにビールが流れ出やすく、甘味を感じる舌先にダイレクトに触れるので、より風味を感じやすくなります。飲み口が内側にすぼまったものは、グラスの上部に香りがこもるので、複雑な香りのビールに。唇をすぼめてすするように飲むので、初めに酸味を感じる舌の両脇にビールが触れます。ビールが舌のどの部分に最初に当たるかで、そのビールの印象にも違いが出てきます。
これらのことを念頭に置いてビールそれぞれの専用グラスを見てみると、そのビールの魅力を最大限に引き出す形状をしていることに気付きます。ケルシュ(Kölsch)は直線的な細長いグラス。華やかな香りを感じつつ、冷たいうちにさっと飲み干せるようにできています。ヴァイツェンビール(Weizenbier)のグラスは上部が丸く、飲み口がすぼんだ形状。丸み部分に香りをためて、グラスを傾けるたびにフルーティーな香りが鼻に飛び込んでくるよう設計されています。この形状は、泡をこんもりと豊かに盛り上げる効果も。ピルスナー(Pilsner)はホップの香りを逃さないよう、飲み口は細めのフルートグラス。細長いシルエットが黄金色のビールと白い泡を美しく見せます。ジョッキはピルスナーやヘレス(Helles)に最適。直線的な形状のジョッキは麦の香ばしさを増幅し、苦味がまろやかに感じられ、勢い良く喉に流し込める上に、厚みのあるガラスは保冷機能を果たします。ジョッキの中でも1リットル入るマースは、勢い良く乾杯をしても簡単には割れないので、お祭りなどでよく見掛けます。
ビールは、ワイン以上にグラスの形状によって味わいが変わります。今宵はぜひ、ビールをグラスに注いで、じっくりと味わってみてくださいね。
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