ジャパンダイジェスト

第9回 所得税の確定申告

ドイツでの所得税確定申告の提出締切は、毎年5月31日です。今回は、どのような人に確定申告の義務があるのか、また、どのような人が任意で申告できるのかをまとめました。申告のシステム、所得税還付の可能性、各種の控除対象についても併せてご説明します。

1. 申告義務を有する人

基本的には、ドイツに住んで収入を得ている人、また、国外在住者であってもドイツで収入を得ているすべての自然人に所得税の申告義務があります。夫婦の場合は、原則として両方の所得を合わせて提出することになっており、税法上は1件の申告とみなされます。

一方、大部分の被用者には申告義務がありません。ただし、これは被用者が自分の雇用者以外からの収入源を持たず、さらに自営業者ではなく、被用者としての労働だけに従事している場合に限られます。このような被用者の場合は、毎月の給与から賃金税が天引きされ、雇用者から税務署に納税されます。支払うべき所得税は、すでにこの賃金税でカバーされているというわけです。

とはいえ、被用者であっても任意の確定申告をするべきかどうかを1度確認してみると良いでしょう。賃金税の査定では標準控除額が採用されていますが、この額は往々にして実際に発生した経費よりも低く設定されています。必要経費を計上し、任意で申告することにより、税金が還付されることが少なくありません。

2. 確定申告のシステム

所得税の納税額を算出するためには、まず所得全額を合算します。職業(自営業者、被用者、家主、年金受給者など)に関係なく、所得の合計額から所得に直接関係のある支出(必要経費、営業経費など)を差し引いた額を算出します。

被用者には、年間で一括1000ユーロの必要経費の控除が認められていますので、もし実際の経費がこれを上回った場合には、この時点で所得税の還付を受けられることになります。

この算出額から、さらに特別支出が差し引かれます。特別支出とは、その年に発生した例外的な支出や年少者扶養控除のことなどです。こうして算出された課税対象所得をもとに、所得税納税額が査定され、この金額から住居内で行われる各種サービス業務や職人への支払い額の一部などを控除することができます。

3. 例外的な支出の例

特別支出、例外的な支出などには、以下のものが相当します。

• 特別支出
特別支出の項目の中で大きな割合を占めるのは、保険料です。特に、保険金全額一括支払いのオプションを含まない老齢年金保険の保険料(被用者対象のリースター年金、自営業者対象のリュールップ年金)がこれに当たります。2014年からは、就業不能保険も特別支出の対象になっています。
上記以外の保険料については、控除の上限額が設けられています。年金受給者と被用者は年間1900ユーロまで、それ以外のすべての納税義務者は、健康保険料の補助を受けていない限り、年間2800ユーロが上限となっています。夫婦の場合は、それぞれの保険料に対してこの上限が認められます。この際、法的健康保険で認められている基本保険料だけが100%控除される点に留意してください。追加でプライベート保険に加入している場合、追加保険料は控除対象になりません。
その他の特別支出で代表的なものは寄付金で、これも100%控除可能です。子どもの養育費(幼稚園やベビーシッターへの支払い額の3分の2、子ども1人につき年間上限額4000ユーロ)や、最初の職業に就く際の職業訓練費(上限6000ユーロ)なども、特別支出として認められます。

• 例外的な支出
例外的な支出とは、ほとんどの場合、病気によって追加で発生した出費を指します。薬代、診察料などがやむを得ない理由で発生した場合には、所得額に準じて決められた上限を超える額について、控除が認められます。このほか、障がい者や要介護者に対しては、様々な標準控除額が設定されています。

• 住居内サービスと職人への支払い
住居内で行われる各種サービス業務(清掃など)や、 改装、修理、改修などの職人に対する支払いについて、支払い額のうち人件費分の20%(上限額はサービス業務が4000ユーロ、その他の改装費などが1200ユーロ)が、納税額から直接差し引かれます。賃貸物件では、通常は家主がこうしたサービスを依頼しますが、その費用は賃借人が共益費の一部として負担するため、賃借人個人の確定申告で控除対象となります。これらの費用は、家主からの共益費請求書(Nebenkostenabrechnung) の中で、「所得税法第35条に該当する経費」(„Kosten im Sinne von § 35 EStG“)と明記されています。

まとめ

以上のように、任意で確定申告をすることは多くの点で意味があります。被用者においては、賃金税として納税するより査定が有利になる場合があり、所得税が還付されるケースも少なくありません。弊社では、ドイツ以外の国で収入がある場合や、お客様に個別に該当する必要経費についても、喜んでご相談に応じます。確定申告の期限は5月末となっていますが、税理士が申告書類を提出する場合は、提出期限を年末まで延長することが可能です。お気軽にお問い合わせ下さい。

(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

ジャパンデスク
担当:田中
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