ジャパンダイジェスト

2016年ドイツビールの新時代【最終回】

ビール純粋令*発布から500周年を迎えた2016年は、各地でお祝いのビールイベントが開催されました。伝統的製法で造られるビールを祝う一方で、伝統にとらわれない革新的な“クラフトビール”も次々と誕生し、ドイツのビールシーンはここ数年、大きな変化の時期にあります。

米国に端を発するクラフトビールは、自由な発想で造られるビールで、その味わいは苦かったり甘かったり酸っぱかったりと多彩。ベルギーのホワイトエール、英国のスタウト、米国のIPAなど、外国発祥のスタイルで造られることもあり、ハーブやフルーツ類を副原料として使用することも。特に北ドイツは比較的自由な気風があり、クラフトビールも柔軟に受け止められています。ベルリンの「Brauhaus Lemke」やハンブルクの「Ratsherrn Brauerei」など、自由な発想で造る若い醸造所が次々に設立され、クラフトビールを扱うバーや酒販店も増えています。大小様々なクラフトビールのイベントが開催され、年々規模を拡大していることからもその人気のほどがうかがえます。

クラフトビール
ビール純粋令は一つのブランドとして大切にしつつ、
新しい製法のビールも次々に誕生している。

ビール純粋令発祥の地で、ビアガーデンやオクトーバーフェストなど独自のビール文化を築いてきた南ドイツにも、クラフトビールの波は訪れています。地元愛が強く、伝統を重んじ、「自分の町で造られるビールが一番」「純粋令以外のビールは邪道だ」と排他的になる人も多いなか、老舗の醸造所もクラフトビールを造るようになりました。例えば、アウグスブルクで1386年から続く「Brauhaus Riegele」や、バイロイトで1887年創業の「Brauerei Maisel」。これらの老舗醸造所では、古くから地元で愛飲されている定番のラインナップは大切にしつつ、挑戦的なクラフトビールも次々にリリース。新しく設立された醸造所「Crew Republic」「Camba Bavaria」も国内外にビールファンを増やしています。

ドイツのクラフトビールは、他国のスタイルで造っても模倣に終わらず、ドイツらしい何杯飲んでも飲み飽きないうまさや、麦芽の豊かな風味を感じます。長年ドイツが培ってきたビール造りの基礎知識はクラフトビール造りにも大いに生かされています。新進気鋭のクラフトビールがドイツの古き良きビール文化を壊すかと言えば、それはNein! 他国を旅すれば、自国の素晴らしさを再発見すると同じように、他国のビール文化に触れることでドイツビールの伝統の素晴らしさに気付くことでしょう。ビール王国ドイツが、自国のビール文化を守りつつ、クラフトビール造りを楽しむようになった今日、ドイツ発のクラフトビールが世界中のスーパーマーケットの棚を賑わせる日はもう近くまで来ています。ご近所で見つけたら、いち早く試してみてくださいね。

89回続いた「ビール小話」は今号が最終回。応援ありがとうございました。来年からはボトルビールと、ビールが生まれた街を紹介する新連載がスタートします。お楽しみに!

*ビール純粋令:1516年にバイエルン公ヴェルヘルム4世が制定した法律で、ビールの原材料を「麦芽、ホップ、水、酵母」に限定している。現在でも有効な食品に関する法律としては世界最古

 
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