ジャパンダイジェスト

第22回 ミニジョブと短期労働

ミニジョブと呼ばれる少額給での労働と、期間を限定した短期労働は、所得を得る上で魅力的な手段の一つです。特にミニジョブは、フルタイムで働いている人にとって、非課税で副収入を得ることができる便利な選択肢です。一方、短期労働は、就業期間が最初から限定されている場合に採用されます。今回はこの二つの雇用形態についてまとめました。

1)ミニジョブ

● ミニジョブとは

ミニジョブ(Minijob)として認められるのは、月額給与が450ユーロ以下の雇用です。原則的に、週に何時間働くかは問われません。

● 雇用者の義務

雇用者は毎月、ミニジョブの被用者に支払う給与額の最高30.99%を、社会保険料としてミニジョブセンター(Minijob-Zentrale)に納めます。その内訳は、年金保険(15%)、健康保険(13%)、賃金税(=所得税2%)、賦課金(最高0.99%)です。このほか、雇用者は所属の職業組合に対して労災保険の保険料を納める義務があります。被用者がプライベート健康保険に加入している場合には、健康保険の保険料を雇用者が一部負担する必要はありません。

賃金税については、一括2%でなく、被用者の賃金税カード(Lohnsteuerkarte)に準じた賃金税を納めることも可能です。この場合には、ミニジョブセンターへの賃金税納税は発生しません。被用者の年収が基礎控除額(現在8820ユーロ)を超えない場合には、賃金税が免除されるため、この方法を採用するのが得策です。

● 被用者側の留意点

年金保険は雇用者が納めますが、原則的には被用者も少額の年金保険料を自分で支払います。雇用者はこれを給与額から差し引き、被用者に代わって保険料を納めます。これにより、被用者には労働時間と給与に対応した年金受給資格が与えられます。ただ、被用者の意思で年金保険に加入しないことも可能で、この場合には、被用者は保険料の一部を負担しない代わり、年金の受給資格も制限されます。

フルタイム勤務している被用者は、副業としてミニジョブ1件だけを非課税で、また社会保険料の納付義務を負わずに行うことができます。2件目以降のミニジョブの収入は、本業の収入と合算され、総額を課税対象額として税金と社会保険料を納めます。

● ミニジョブの特殊性

ミニジョブ社員は時短社員と同じです。つまり、有給休暇の権利と病欠時と祝日を含めた給与支払い継続が保証されます。雇用者はミニジョブ社員の出勤記録を残し、給与台帳に記帳する義務があります。最低法定賃金の8.84ユーロ(現在の時給)は、ミニジョブ社員にも適用されます。労働時間口座(Arbeitszeitkonten)のシステムを利用してフレックス制で勤務することは、ミニジョブ社員にも原則的に認められていますが、例外規定に注意が必要です。個別の事例を検証することをおすすめします。

2)短期労働/季節労働

● 短期労働とは

短期労働(kurzfristige Beschäftigung)とは、暦年の就業期間が最長3カ月、または累計70日間以内の雇用形態を指します。この規定は、2014 年12月31日以降にスタートした有期雇用契約を対象とし、2018年12月31日まで有効とされています。短期労働は、いわゆる「生業としての活動」(berufsmäßige Tätigkeit)ではない労働、つまり経済的な目的が最優先でない労働と定義され、ミニジョブとは違い収入の額は問われません。たとえば主婦、年金生活者、学生が企業で補助的な作業を行う短期間の就業が典型的なケースです。

● 雇用者の義務

短期労働もミニジョブセンターに登録する必要がありますが、社会保険料の納付義務はありません。雇用者には、約1%の賦課金を納付する義務のみ発生します。ただ、賃金に対しては賃金税(連帯税と教会税も加算)が課税されます。これについては、各被用者の源泉所得税課税指標(Lohnsteuerabzugsmerkmale)に準拠して算出する、または給与から一括25%を差し引くという二つの方法があります。雇用者は、控除した賃金税を事業所所在地の税務署で申告、納税します。また、職業組合に対する労災保険料も支払います。

● 留意点

雇用者は短期労働者に関しても勤務記録を付け、法定最低賃金を遵守しなくてはなりません。場合によっては被用者に病欠時にも給与を受け取り、休暇を取得する権利が与えられます。短期労働が期間を限定した雇用であることは、特殊な状況により有期雇用であることが明らかでなければ(一時的な季節労働、被用者が有期労働許可の保持者であるなど)、事前に契約として取り決めておく必要があります。

3)まとめ

以上ミニジョブと短期労働の一般的な規定をご説明しましたが、事例によっては対応が複雑になる場合もあります。特に一人の被用者が複数の雇用者で勤務するケースがこれにあたります。同様に特定の雇用をミニジョブとして扱うか短期労働として扱うかも、雇用者にとっては社会保険料の納付免除が可能かどうかという点で、重要な意味を持ちます。弊社では個別の事例に応じてご相談を承っています。

(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

ジャパンデスク
担当:田中
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