第24回 投資控除と特別償却
ドイツの所得税法7条gは、中小企業の投資能力を高めるための措置を設けています。その一つは、将来購入予定の財貨に対し先行して控除を行う、いわゆる投資控除です。もう一つは特別償却の適用で、これは通常の減価償却に加えて利用することができます。
今回は、上記の控除規定の内容について、また、どのような条件を満たせばこれらの優遇措置を適用できるかをご説明します。
1)投資控除の一般規定
投資控除額(Investitionsabzugsbetrag: IAB)は、財貨の購入または製造を行った場合に、その出費を前年に繰り上げて控除することを可能にする措置です。これを適用できれば、企業は今後行う予定の財貨調達や製造行為に対して、費用の最高40%までを「投資控除額」として営業利益から控除することができます。たとえば、2018年に1万5000ユーロの機械を購入する予定があるとすれば、2017年12月31日の時点で6000ユーロ(1万5000ユーロの40%)が投資控除額として有効となります。
2) 優遇措置を受けられる事業者
原則的には、以下の条件を備えた中小企業が、投資控除の適用を受けることができます。
● 収支報告を行っている事業者および自由業者で、営業資産が23万5000ユーロを超えていない者
● 損益計算の結果、年間利益が10万ユーロを超えていないこと
3) 対象となる財貨
優遇措置を受けることができるのは、固定資産のうち、事業目的に使われる新品または中古の減耗資産です。たとえば、機械、オフィス什器、コンピュータ、トラック、事業用に限定して使われる乗用車などです。
投資控除は、控除の年から数えて3年の事業年度の間に財貨を調達または製造する意図があれば、利用することができます。実際に発注していなくてもよく、2016年1 月1日からは具体的な投資・財務計画を提出する必要もなくなりました。
税務署に対する手続きは、投資控除を受ける財貨の機能と、投資費用の見通し額を記載した書類を提出するだけです。たとえば、トラック、トレーラー、またはフォークリフトのいずれかを購入する際には、「商用車」という記載で十分です。ただ、この場合には「乗用車」を購入して投資控除を利用することはできません。
4) 投資控除の比率と控除額
複数の財貨の調達を予定している場合にも、投資控除は、それぞれの財貨の購買または製造費用の40%に適用されます。その総計の限度額は年間20万ユーロです。
5) 投資控除の相殺
投資控除の対象となる財貨を実際に調達、または製造した年には、税務手続き上、今度は投資控除額を営業利益に加算することが必要になります。ただ、これと同時に、調達費用の最高40%(=投資控除の最高額)を控除することができます。減価償却の査定基準は、減額後の調達費用です。
例: 事業者Aが、2017年に乗用車購入費として1万5000ユーロを計画しました。Aは2018年に、実際に1万5000ユーロで乗用車を購入しました。
2017年末の時点で、6000ユーロ(1万5000ユーロの40%)の投資控除を適用し、これを営業利益から控除して、この年の納税負担が軽減されました。
2018年、乗用車を購入した後は、上記と同額の6000ユーロの投資控除額を営業利益に加算する必要があります。しかしこれと同時に、乗用車の購入費用は6000ユーロ分控除されるため、上記で加算された投資控除額は相殺されることになります。
減価償却の算定基準は、減額後の購入費用9000ユーロとなります。
2017年の投資控除適用により、実際に財貨が調達された2018年の事業経費が、前年に認められた形です。この結果、繰延税の扱いとなり、事業者にとっては資金手当を容易にする一助となります。
6) 特別償却
上記で述べた中小規模の事業者は、投資控除を受けられる財貨の調達または製造年と、その後の4年間、最高20%の特別償却(Sonderabschreibung)を適用することができます。
特別償却は、投資控除とは関係なく有効とされ、通常の償却と並行して利用することができます。
特別償却を適用するための条件は、財貨が調達または製造された年と、その翌年に、事業所内に置いておくことと、事業目的に使われることです。
減価償却は、事業経費として営業利益を減額し、納税上のメリットをもたらします。特別償却は通常の減価償却に加えて、それ以上の事業経費を最長5年間にわたって控除対象にできることが特徴で、事業者の納税負担をさらに軽減するために利用されています。
7) まとめ
投資控除の利用は、一定条件の下に納税を繰り延べ、財務上のメリットを得るために効果を発揮します。貴社の事例に合わせてご相談に応じますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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