ジャパンダイジェスト

日独の歯科医院「何か違う!?」

日独の歯科医院「何か違う!?」

初めてドイツの歯科医院に行くと、日本の歯科受診とは異なるシステムに多くの人が経験する違和感。国が変われば状況も異なるのは当然なのですが、なぜ同じ歯科医療なのにこんなに違いがあるのか。今回のコラムでは、日本人患者さんからよく質問される、日本とドイツの歯医者さんの違いについてお伝えします。

❶ 歯科医院の臭い

日本で歯科診療所に一歩足を踏み入れると、まず最初に気になるのが独特の薬品臭。「そのニオイが鼻に入っただけで歯が痛くなってくる」という人もいるくらいですが、ドイツの診療所ではこの嫌な臭いがほとんどありません。この臭いの元は、虫歯を殺菌するための「ホルマリンクレゾール」や神経を保護する「ユージノール」という薬品。しかしドイツではホルマリンクレゾールは発がん性を有するために法律上禁止されており、ユージノールは患者さんに不快感を与えるために使用されていないため、診療所全体にこの臭いがありません。

❷ 診療室が個室

ドイツの診療室は基本的に個室になっており、治療中はほかの患者さんを見かけることはありません。これは患者のプライバシーを保護する目的(隣室の話し声や視覚的な遮断性)のほかに、万が一治療中に唾液や血液が空中に飛散して感染を引き起こすことを防ぐため。日本でも近年では少しずつですが、個室完備の診療所も増えてきました。

❸ 歯科医院内に上履き(スリッパ)がない

もともとドイツでは訪問先で上履きを利用する習慣はありません。しかしドイツの歯科診療所でスリッパの利用を採用すると、「不特定多数が同じスリッパを履くと(スリッパを介した)感染の恐れがある」とされ、衛生法のもとでは上履きを完全滅菌を行うか、すべてを使い捨てにする必要があり、現実的(経済的)ではないため使用されることはありません。

❹ マスクは治療中だけ

日本の歯科医院では、歯科医師やスタッフもほぼ全員常にマスクを装着していますが、ドイツではマスクは治療中しか使いません。これは、相手と話をする時にマスクをつける(=口元を隠す)のは失礼に当たるという概念から。また、マスクが邪魔をして言葉がはっきり聞こえなくなるのを避けるという理由もあります。

❺ 治療費を歯科医院で直接支払わない

日本では治療が終わるとすぐに受付で治療費を支払うことがほとんどです。ドイツの場合は、歯科治療費は高額になることが多く、現金でのやり取りによる紛失や盗難などのリスクを避ける目的や、保険や税務関係の処理にも確実なため、銀行振り込みによる支払いが一般的です。ただし、小額の治療費やデンタルケア用品の購入程度であれば、診療所で直接支払うこともあります。

ドイツと日本の歯科医院のシステムには多くの違いがある
ドイツと日本の歯科医院のシステムには多くの違いがある

❻ 妊娠中のスタッフがいない

日本の歯科医院では妊娠中のスタッフがお腹が目立ってきても働いていることがありますが、ドイツでは法律上、妊娠が判明した時点から感染などのリスクがある仕事は禁止されます。そのため、妊娠中のスタッフは診療室に立ち入る仕事は一切できません。また歯科技工士も業務上、胎児に悪影響を及ぼす可能性がある揮発性の材料などを使用するため、仕事の内容が限定されます。

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