初めての海外赴任でドイツに来ました。3歳と5歳の子どもがいます。万が一病気になったとき、どのような手順を踏んで病院へ行ったら良いでしょうか。
Point
- 外来診療は、まず開業医院を訪れます。
- 病院は、主に入院治療のための施設です。
- 診察には基本的に予約が必要です。
- 保険証を忘れずに持参しましょう。
- 薬はすべて薬局で処方されます。
- 休日・夜間の急病の際は、病院の救急外来へ。
診察を受ける
・外来診療は開業医院で
ドイツでは、開業医院(Praxis)が外来診療を担っています。一方、病院(Krankenhaus)は主に入院患者の治療を行う施設で、外来待合室が患者で混雑する日本の病院ような光景は見られません。
・診察は予約が必要
受診する専門科を問わず、受診する際には予約が必要です。来院した順に診察が受けられる日本とは異なるので、注意しましょう。
・保険証を忘れずに
ドイツで日本の健康保険に相当するのが「疾病保険(Krankenversicherung)」です。ICチップが埋め込まれた保険証はキャッシュカードと同じ大きさで、所有者の基本的な情報が記録されています。
・掛かり付け医(家庭医)
公的保険(後述)には、「掛かり付けの総合外来」とも言える家庭医(Hausarzt/ärtzin)の制度があります。家庭医は通常の外来診療に加え、ほかの専門診療科への紹介や、病院への入院手続きの手配もしてくれます。プライベート保険(後述)の加入者は、このような仕組みにとらわれない、幅広い診療を受けることが可能です。
・専門診療科
婦人科、眼科、耳鼻科、皮膚科、神経内科、整形外科、放射線科などの外来診療も、各開業医院が担当しています。
疾病保険(Krankenversicherung)
健康保険には、法定疾病保険である公的保険(Kassenversicherung)と、民間疾病保険であるプライベート保険(Privatversicherung)があります。
・公的保険
ドイツ国民の9割が加入しています。保険でカバーされる検査や薬の範囲には、公的保険組合が設けた一定の制限がありますが、原則的に治療費は無料です。
・プライベート保険
カバーされる検査項目や治療の適用範囲が、公的保険よりも幅広くなっています。教授や部長クラスの医師の診察を受けることができ、入院する場合は1〜2人用の個室の使用が可能です。一方、契約条件やその理由によっては、特殊な治療や高額な検査が適用外となることもあります。また、ドイツに来る以前の慢性疾患に対する治療は、契約条件によってはカバーされないことがあります。
救急外来について
・夜間の救急外来
夜間や休日の急診は、病院や大学病院(Uni Klinik)の救急外来(Notfallambulanz)で受けられます。また、開業医が交代で診療をしている救急診療所(Notfallpraxis)を設けている都市もあります。受診の際は、保険証と身分証明書(パスポート)を忘れずに持参しましょう。
・救急車を呼ぶには
救急車は「112」番に電話します。ドイツの救急車には、患者搬送のためのクランケンヴァーゲン(Krankenwagen)、日本の救急車に近いレットゥングスヴァーゲン(Rettungswagen)、医師が同乗するノートアルツトヴァーゲン(Notarztwagen)の3種類があります。住所(居所)や電話番号、症状などを、慌てずに伝えましょう。
入院が必要なとき
・入院生活
入院生活自体は基本的に日本と同じで、一般的に入院期間は日本と比べて短いです。貴重品や大金は、病室に持ち込まない方が良いでしょう。
・退院後は
入院した病院での継続治療の必要がなければ、紹介元の家庭医などの開業医院で外来治療を続けます。退院時に担当医が経過をまとめ、患者本人と紹介元の医師に渡してくれます。
薬について
医薬分業が進んでいるドイツでは、治療薬はすべて薬局(Apotheke)で購入します。
・OTC薬品と処方薬品
薬には、1. 医師の処方せんなしに薬局で直接買える一般医薬品(OTC-Arzneimittel)と、2. 医師からの処方せんが必要な薬(Rezeptpflichtige Arzneimittel)があります。
・医師の処方せん(Rezept)
診察の際に、医療機関のスタンプと医師の署名が入った処方せんを受け取ります。薬の飲み方は処方せんをもらうときに、医師に確認しておくと良いでしょう。
・薬の購入
薬局では、公的保険の加入者は薬の種類によって一定額を、プライベート保険の加入者は全額を支払います。金額の記入された処方せんとレシートをプライベート保険会社に送ると、後に払い戻されます。
・日本からの治療薬を継続したい場合
高血圧や糖尿病などの慢性疾患のため、日本の医療機関から処方されていた薬については、医師に相談しましょう。日本のものと全く同じ成分や容量の薬がない場合は、同じ薬効で似た作用を持つほかの薬に置き換えてもらってください。
予防接種について
・ワクチンも薬局から
予防接種(Impfung)ワクチンは、まず医師の処方せんを持って自分で薬局へ行って購入し、再び医師を訪れて注射をしてもらいます。
・小児の予防注射
日本の勧奨予防接種とドイツの基本予防接種では、接種項目とスケジュールに違いがあります。日本で予防接種をほとんど済ませていても、ドイツの小児科医からは不足していると指摘されることもあります。子どもの年齢、ドイツでの滞在予定年数も考慮に入れて、医師からの助言を参考にしてください(子どもの予防接種については、2010年6月18日発行・821号参照)。
・出張前の予防注射
出張などで訪れる国によっては、狂犬病、破傷風、A型肝炎、マラリアなどの疾病に感染するリスクが高い地域があります。免疫が成立するまで複数回の接種が必要なワクチンもありますので、そういった地域へ出張の際には、時間的にゆとりをもって予防接種を受けるようにしましょう(大人の予防接種については、2010年7月16日発行・825号参照)。
来院時によく使用するドイツ語
単語 | ドイツ語 | 読み方 |
---|---|---|
医師 | Arzt(男性)、 Ärztin(女性) |
アルツト、 エルツティン |
保険証 | Gesundheitskarte (Krankenversicherungskarte) |
ゲズントハイツカルテ |
診療時間 | Sprechstunde | シュプレッヒシュトゥンデ |
薬 | Medikament | メディカメント |
処方せん | Rezept | レツェプト |
往診 | Hausbesuch | ハウスべズーフ |
血液 | Blut | ブルート |
尿 | Urin | ウリーン |
発熱 | Fieber | フィーバー |
頭痛 | Kopfweh、 Kopfschmerz |
コップフヴェー、 コプフシュメルツ |
咳 | Husten | フーステン |
のどの痛み | Halsschmerz | ハルスシュメルツ |
おう吐 | Erbrechen | エルブレッヒェン |
吐き気 | Übelkeit | ユーベルカイト |
腹痛 | Bauchschmerz | バウフシュメルツ |
下痢 | Durchfall | ドゥルヒファル |