はじめに

あの日を境に、私の日常はカチリカチリと音を立てながら、未知の世界へと進路を変え始めた。

「妊娠発覚」。そこから始まるのは、想像以上に孤独で、不安で、疑心暗鬼で、Google先生頼みの毎日。子どもを宿した喜びの大きさの分だけ、いや、それ以上に何かにおびえていた。

「何か」というのは、もうそれこそ、目の前にある食べ物を口に入れても良いものか、排泄物の状態から眠気の強さ（いつだって眠たかった）まで、何だって気になってしまう。変化したことも、変化しなかったことも、ぜーんぶ！

そして、逐一そのことを検索した。「妊娠○カ月　眠気」「妊婦　ムダ毛の量」などという具合に。すると、だいたい誰かがブログやQ＆Aサイトで、自身の体験を書いている。妊娠・出産関連の書籍では分からない、個人差レベルの情報。これが一番リアルに心に響いた！

ここでは、専門家ではない自身の個人的な体験だけれど、誰かの小さな疑問に答えるものになれば……そう願い、心配性で検索魔なDNDエディターが体験した、「うつ」すれすれの妊娠＆出産体験談を赤裸々にお伝えします。

検索ワード1
「妊娠初期　兆候」

ドイツ語単語

・Schwangerschaftstest：妊娠検査薬
・Periode, Monatsblutung：生理
・Folsäure：葉酸

うちもそろそろ……と、意識的に子どもを望むようになるまで、避妊しなければ自然と、そして割合すぐに子どもが宿るものだと思っていた。受精の仕組みやその確率について、知らないわけではない「つもり」だったが、子どもを授かり、産み、育てることに対して、わたしは絶望的に無知だったことを、今は全面的に認める。

何度目かの月のものを確認した後、自然に授かるという考えは幻想なのではないかと、本格的に妊活に取り組み始める。アラサーなのだ、焦りもある。基礎体温表を付け始め、生理の日付を手帳に記入（それすらしていなかった！）。排卵日を自動的算出し教えてくれるアプリをスマホに入れ、妊娠前から飲んでおくと良いとされる「葉酸」のサプリメントを飲み出したら、ちょっと前進した気がした。

しかし、それでも規則的にやってくる、1カ月の試みが失敗したことを告げる真っ赤なサイン。この、努力が積み重ならず、振り出しに戻る感じ、じわりじわりとキツクなってくる。なにせ、生理予定日が近づくと、「体温が高い気がする」「身体がだるい気がする」「ご飯の炊けたにおいが……？」なんて、キーワード『妊娠初期 兆候』の検索結果にひっかかる体調の変化に過敏になり、一喜一憂しているのだから。

生理が1日でも遅れたらソワソワ、「あ、妊娠していたらお酒を控えなくちゃいけないな」などと理由をつけては、待つことに耐え切れずに薬局やドラッグストアに走り、妊娠検査薬を購入。まったく反応しない検査薬にがっかりした後、たいてい生理はやって来る。こんなことを繰り返していたこと、夫クンにはもちろん内緒だ。妊娠検査薬も安くない。ドラッグストアdmでは、だいたい1本6～10ユーロ。妊娠が発覚するまで何本ムダにしたかは、墓場まで持っていく秘密とする。

この妊娠検査薬だが、排卵予定日から2週間後に使うタイプが一般的。しかし、私のようにせっかちな人は、「Frühtest」と書いてあるものを選ぼう。生理予定日の4日前から判定できることをうたっているものだ。そして、購入時は「今回は妊娠している気がする！」と思って（その自信はどこから？）、1本入りのものを選びがちだが、まとめ買いの方が単価は安いわけで。今となっては、アマゾンなどオンライン・ショッピングサイトで12本入りのものを買っておけば良かったな……と思う。

そんな私の妊活にも、妊娠検査薬の「陽性反応」というゴールが訪れた。例によって、「結婚式に出席するから、食事制限すべきか知っておかなくちゃ」と、つぶやきながら検査に臨んだのは、生理予定日から遅れること3日というタイミング。うっすらと、本当に薄くほんのりと現れた妊娠ライン。え？ これは陽性か？！ と迷うほどの反応。それでも、陽性です。妊活中の皆さん、お見逃しなく。

次回、婦人科での検診に続く。