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「mutterpass hülle（母親手帳 カバー）」

前回は、妊娠検査薬の陽性反応が出たところまでお話したが、ごくごく薄い陽性反応に対する私の最初の反応は、沈黙だった。驚きと、本当に妊娠が成立しているのかな？ と疑う気持ち（これまで散々振られ続けたのだ）が先にきて、さらには、夫に報告しても、こんなに薄っすらとした証拠では彼を納得させられないんじゃないかと、へんに焦る。

翌日、もう一度、検査薬を使用し、さらに濃く刻まれた反応を見てようやく、「こ、これは！ 夫に報告せねば！！」と、目が覚めるように気持ちが動き出した。「すぐに病院に行け！」という夫からの言葉を受け、自分が動揺していたことを気づかされる。

－そうです。妊娠検査薬の陽性反応が出たら、お次は、かかり付けの婦人科医院に連絡です。

電話をすると、すぐにアポイントメントがとれた。子宮外妊娠などのリスクを排するためにも、正常な妊娠かどうかを早急に検査する必要があると言われ、冷水を浴びた気持ちになった。「まだだ。まだ喜んではいけない・・・」

初診

妊娠の可能性を前提にしての初めての検診。もちろん、健康保険カードを忘れずに。ドイツでは、妊娠・出産期に必要な検診、検査や施術などは、すべて保険の適用を受ける（適用外の検査、薬などもある）。これは、本当にありがたいことだ。

問診（最終月経日、その他の自覚症状について聞かれる）、尿による検査、内診、そして、赤ちゃんの様子を見るのに大活躍する経膣プローブという棒状の超音波検査器具での検査を受ける。妊娠の兆候を1つひとつ確認し、いよいよ超音波検査によって映し出されたのは、黒い丸。「これが胎嚢（たいのう）です」という説明を聞いて、人の形にもなっていない、グレーの背景にぽっかり開いた穴のようなものが、愛おしく見えるのだから不思議だ。

さて、これで妊婦デビューと胸を張っても良いのかなと思っていたら、「まだ心拍が確認できないので、また来週いらっしゃい」とつれない先生。「その前に流産することもありますが、母体に責任はありませんよ」。

―皆さん、まだです。まだ喜んではいけません。

検診2回目

2回目の検診で、例の黒い丸がさらに大きくなり、その中に白っぽい丸が「トク トク」と脈打っていることを確認した。このときの気持ちを、私は絶対に忘れてはいけない。自分の中に、わが子が生きていると、始めて自覚した瞬間の衝撃と感動、忘れてなるものか！と、子育てに追われている執筆現在、また改めて胸に誓う。

そんな喜びに浸る、すでにマタニティーハイ気味の私に、「妊娠初期ですので、まだ流産の可能性はあります」と、現実に引き戻すのは、もちろん先生の役割だ。しかし、妊娠が確定したことを証明するように、「Mutterpass（母親手帳）」を手渡されると、また嬉しくなっちゃう。

「mutterpass hülle」検索で見つけた素敵なカバー
http://www.minilino.com/de/Mutterpass-Huellen/

ムッターパスは、身分証明書のように肌身離さず持っていなければいけない大事な書類。汚れないようにカバーをつけなくちゃ。素敵なカバーを。「mutterpass hülle」で検索して、オンラインで購入しようか、自分で縫おうか・・・。いろいろ不安はあるけれど、妊娠生活やっぱり楽しまなきゃ！ と、ご機嫌な私を、一気にブルーにしたのは、妊娠初期のあの症状。

次回、「つわり」の話へ。