血圧とは、そもそも何ですか?
血管を流れる血液の圧力です。血液を全身に送り、栄養分や酸素を運ぶのに必要です。ポンプに当たる心臓が収縮して血液を送り出す時の最大圧が収縮期血圧(最高血圧)、その後心臓が血液を吸い込む作業をしている時が拡張期血圧(最低血圧)です。血圧は「心臓から送り出される血液量」と「血管のしなやかさ」で決まります。
高血圧は症状のないサイレント・キラー
高血圧が続くと、第1に血管壁が厚くなり、内腔が狭くなります。第2に必要以上に高い血圧の影響で臓器に負担が掛かり、機能障害の原因となります。これらの変化は痛みを伴わずに進行するため「サイレント・キラー」と呼ばれます。高血圧から引き起こされる病気には、心筋梗塞、脳卒中、四肢の閉塞性動脈硬化症、腎障害があります。
高血圧の診断基準は?
収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上が継続して計測されれば「高血圧(Bluthockdruck、Hypertonie)」と診断されます(図1)。収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧100mmHg以上の場合は薬物による治療が必要です。自宅で血圧を測定した場合は、安静時の収縮期血圧135mmHg以上もしくは拡張期血圧85mmHgで血圧が高いと言えます。
血圧の正常値は、収縮期血圧130mmHg未満、かつ拡張期血圧85mmHg未満。血管障害の予防のためには、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満が望ましいとされています(日本高血圧学会)。
図1 高血圧の診断
血圧の値は絶えず変化する?
緊張した時、怒った時、興奮した時、運動時など、私達の血圧は絶えず変化しています。病院に入ると緊張して血圧が上昇する「白衣性高血圧」の人もいます。血圧は、起きて活動している時間帯は高めで、睡眠中は低くなります。睡眠中の血圧下降が十分でないと、血管障害が生じやすいとも言われています。
右腕と左腕で血圧は同じ?
左右の腕で測った血圧は、ほぼ同じです。しかし、大動脈炎症候群(高安病、Takayasu Arteritis)に罹ったことがあると、腕に流れる動脈が断片的に細くなり、疾患のある腕の血圧値が低く測定されることがあります。
本態性高血圧と2次性高血圧
高血圧症患者の9割以上は原因が特定できない「本態性(ほんたいせい)高血圧」です。一方、体中のホルモン異常(内分泌性高血圧)、腎臓への血管が細くなる(腎血管性高血圧)、腎臓の病気(腎性高血圧)など原因が明らかな高血圧は、「2次性高血圧」と呼ばれます。35歳以下の若年性高血圧の約半数は2次性高血圧で、原因疾患の治療により血圧も改善します。
糖尿病と高血圧
糖尿病患者の約半数に、高血圧の合併がみられます。この高血圧が糖尿病による動脈硬化を促進し、糖尿病による腎障害(糖尿病性腎症)をも悪化させます。高血圧を伴った糖尿病患者は、血糖と共にきちんとした血圧コントロールが大切です。
日常生活の改善のポイント
高血圧による血管障害を防ぐためのポイントは、「塩分制限」「コレステロールを抑える」「禁煙」そして「運動」です。肥満のある場合は、体重を1kg減らすことで血圧値を2mmHg下げることができると言われています。また、散歩をする、エレベーターの代わりに階段を使う、電車・バスはひと駅前で降りるなどのちょっとした運動でも、年間の運動量が大きく違ってきますので、こつこつ頑張りましょう。
イライラ感が続くときは
ストレスが多く忙しい生活は、それ自体が血圧上昇の原因。逆に、血圧の上昇がイライラの原因になっていることもあります。最近どうも怒りっぽくなったなと感じたら、血圧を測ってみてください。血圧の正常化と共に、イライラ感がなくなることもあります。
ドイツの食事と高血圧
日本人の1日の塩分摂取量の半分以上は醤油と和風の加工食品から摂られているそうです。ドイツでもビールに合う美味しい外食、缶詰、即席食品、ソース類など、塩分が多く含まれている食品が少なくありません。また日本と比べ、動脈硬化の天敵である脂肪含有量の多い食事や、カロリー数が非常に高い食事もあるので留意しましょう。
血圧の薬
血圧の薬は、大別すると「心臓から送り出す血液の量」を調整する薬と、血管を拡げて「血管の抵抗性」を改善し、血圧を下げる薬に分けられます(図2)。ドイツでは、異なった作用を持つ薬が合剤として用いられることもあり、各々の薬に特徴があるので、かかりつけ医の説明を十分に聞くようにしましょう。降圧薬によって血圧は比較的すぐに下がりますが、一旦厚くなった血管の壁が元に戻るには数年以上の降圧薬の継続を要します。
図2 高血圧の治療薬