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ドイツでの健康診断・人間ドック

ドイツの公的医療保険に入っています。健康診断か人間ドックを受けたいのですが、医療保険は適用されますか?

「健診」「検診」「人間ドック」どこが違うの?

診察と検査によって身体の異常をチェックする健康診断を、日本では「健診」と略し、学校健診、職場健診、入学や就職時の健康診断などがあります。「検診」は、がん検診のように、ある特定の病気を発見するために検査を行うことを指します。健康診断が限られた検査項目で行われるのに対し、人間ドックでは通常の健康診断より広い範囲で精密検査が行われます。これらは隠れた病気の早期発見や病気の危険因子を確認するのに役立ちます。「人間ドック」とは、あたかも船が定期的に受ける船全体の精密検査と似ていることから名付けられた純和製語です。

健康診断は何処で受けられますか?

ドイツでは通常、病院(Krankenhaus)ではなく開業医(Praxis)のもとで健康診断を受けます。かかりつけ医(Hausarzt / -ärztin)に希望を話してみてください。ドイツでは、健診システムが整っている日本とは、医療の仕組みが違うため、全く同じ意味のドイツ語はなく、Vitalitäts-Checks、Gründlicher Gesundheit-Checkup、Medizinische Untersuchungなどと呼ばれています。がん検診はKrebsvorsorge-Untersuchungです。

健康診断にはドイツの医療保険が適用されますか?

医療保険に認められている範囲内で、健康診断を受けられます。公的保険か、プライベート保険かにより、医療保険の適用となる年齢、検査項目が違ってきます。特に公的保険の場合、企業の海外就任者用の健康診断項目や日本の労働安全衛生法に規定されている項目のごく一部しか保険適用項目に含まれていません。ドイツの公的保険加入者は、35歳以上で2年に1度、保険でカバーされる成人健診を受けることができます。項目は一般診察、身体計測、血圧、血糖、総コレステロール値、尿検査一般です。小児と職業実習のための健診は一般診察のみで、採血や採尿は含まれません。

図1 あなたの健康管理は?

公的保険でがん検診も受けられますか?

50歳以上になると1年に1度、大腸がんのスクリーニングのため、3日法による便潜血検査を受けることができます。また、35歳以上から(保険によっては18歳から)2年に1回、皮膚がん検診を受けることができます。46歳以上の男性では、1年に1回、直腸診による前立腺がんの診察を受けられます(血液のPSA測定は含まれません)。

プライベート保険で受けられる健康診断の項目は?

公的保険と比べて、プライベート保険では幅広い検査項目が保険でカバーされます。多くの場合、一般末梢血液、肝・腎機能の血液検査、腹部超音波検査、心電図、胸部レントゲン検査、肺機能検査、ヒトヘモグロビン法による便潜血検査、胃の検査などです。ただし、すべてのプライベート保険で一律というわけではなく、契約内容によっても異なるので、事前に医療保険会社と医療機関に確認しましょう。

ドイツの人間ドック施設の選び方は?

半日~1日で集中してすべての精密検査を行えるのが人間ドックの特徴で、欧州の日系企業の定期健康診断や個人の精密検査に活用されています。来年2月からは、デュッセルドルにも新しい人間ドック施設ができます。最近は日本語の通訳スタッフを介さずに、直接日本語で診察し、日本語のレポートがもらえるところもあります。スケジュールや、利便性、検査メニューの内容、さらには旅行を兼ねて受診先を選んではいかがでしょうか。検査結果の解釈に日本人の正常範囲内を考慮してくれたり、異常値に対して個別に助言をもらえたり、必要に応じて日本の医療機関とも連絡を取ってくれるようなところが良いでしょう。

健康診断や人間ドックで指摘があったら?

大切なことは、問題を指摘された結果はそのまま放置しておかないことです。助言に従って精査を受け、適切な治療を開始すれば、健康診断はより価値のあるものになります。私たちの体調は絶えず変化しているので、グレーゾーンの値に対しては時間を置いて再検査することが大切です。

健康診断も万能ではない?

健康診断や人間ドックには、おのずと限界があります。測定外の項目は臨床所見から「恐らく大丈夫であろう」としか言えません。例えば大腸がん検診に用いられる通常の便潜血反応は、採便時に出血が混じらなければ陰性に出ることもあります。早期に肺がんを見付けるには胸部レントゲン写真より、胸部CTの方が検出率が高いという専門家も多くいます。がんの腫瘍マーカーにも、種類によってはグレーゾーンがあり、偽陽性や偽陰性もあります。受け取った結果の解釈に悩む場合は、担当医の先生から説明を受けましょう。

欧州生活での安心のために

大丈夫だと思っていたのに、健康診断で高血圧を指摘された、糖尿病が見付かった、中には肺がんを指摘されて手術したという人もいます。毎日の忙しい仕事、日本とは異なる気候と食事、外国語での日常生活、外出時の無意識の緊張感など、知らない内に体に負担が掛かっていることも少なくありません。家族の安心のためにも、1年に1度の健康チェックを考えてみましょう。

表1 健康診断コースの1例
内容
診察問診、聴打診、触診、視診
身体計測身長、体重、肥満度
血圧、脈拍数高血圧の有無
機器による検査腹部超音波、心電図、呼吸機能、甲状腺、血管壁など
眼と耳視力(眼圧)、聴力検査
血液貧血の有無、肝・腎機能、脂質、血糖など
ピロリ菌胃潰瘍の原因菌の有無
尿尿蛋白、糖、潜血、白血球の有無
便大腸がんスクリーニングの潜血反応
腫瘍マーカー前立腺がん、子宮頸がんなど
胸レントゲン検査異常所見があれば胸部CT
胃の検査胃透視または胃カメラ
(ノイゲバウア馬場内科クリニックの項目を参考)
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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