ジャパンダイジェスト
ドクターの診察室


日本で、ドイツで、性感染症が増加中!

日本のニュースで性感染症が増えていると知りました。どのような接触で感染するのでしょうか? なかなか話題にしにくいテーマなので教えてください。

Point

  • 日本で梅毒の患者数が急増中
  • 性感染症の予防にはコンドームが効果的
  • あなたが感染すると、パートナーにも感染
  • 無症状で感染に気付かないことも
  • 検査による早期発見、早期治療が大切

性感染症ってどんな病気?

● 感染のルートは?

性感染症(STD)はあらゆる性行為によって感染します。単に抱き合ったり、手をつないだりといった、軽い皮膚の接触では感染しません。若い人にみられる「伝染性単核症」は、唾液を介するキスで感染することから、「キス病(Kusskrankheit)」とも呼ばれています。日本のみならず、ドイツでも性感染症の増加がみられ、クラミジアに感染する人は年間10万人、性器ヘルペスやヒトパピローマウイルス感染症は年間8万人いると報じられました。特に休暇中に感染する人が多く、旅先での行動に注意するよう呼びかけられています。

  • 主な性感染症
  • ● 梅毒
  • ● 性器クラミジア感染症
  • ● 淋菌感染症
  • ● 性器ヘルペス感染症
  • ● 尖圭コンジローマ
  • ● エイズ(HIV)
  • ● ヒトパピローマウイルス感染症
  • 性行為でも感染する他の疾患
  • ● B型肝炎
  • ● ケジラミ症
  • ● 性器カンジダ症
  • ● 膣トリコモナス
  • ● 非クラミジア淋菌感染症
  • ● 伝染性単核症
  • ● 疥癬(かいせん)
  • ● ジアルジア症
  • ● 赤痢アメーバ
  • ● 細菌性膣症
  • ● 伝染性軟属腫

主な性感染症

● 性器クラミジア感染症

クラミジア・トリコモナスというウイルスによって発症するのが、性器クラミジア感染症(Chlamydiose)。男性は排尿痛、女性は下腹部の違和感がみられる程度で、無症状で進行することも少なくありません。放置しておくと男性は前立腺の炎症を、女性は子宮頸管炎や子宮内膜炎を起こすことがあります。治療には抗菌薬が用いられます。

● 淋菌感染症(淋病)

淋菌(Gonokokkus)による感染症です。男性の自覚症状は、排尿痛と尿に膿が混じる膿尿(Pyurie)。女性の場合はおりものの変化や出血がみられますが、症状が軽く、気づかないこともあります。不妊の原因になったり、生まれた新生児が淋菌性結膜炎を生じる可能性もあります。治療には、注射製剤の抗菌薬を用います。

● ヘルペス感染症(性器ヘルペス)

単純ヘルペスウイルス(I型、II型)によって起こります。外陰部のかゆみ、不快感に続いて、発熱と痛みを伴ったリンパ節の腫れ、小さな水疱、ただれが数多く現れます。症状が改善しても再発を繰り返すことがあります。抗ヘルペスウィルス薬を用いて治療します。

● 尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマ(Feigwarzen、Feuchtwarzen、Genitalwarzen)の多くは6型、11型のヒトパピローマウイルス(子宮頸がんは16型、18型が多い)の感染で生じます。ほとんどの場合で生殖器、肛門周囲にくびれのある良性のイボができます。イミキモド軟こう、凍結療法、レーザー治療、外科切除などの治療法があります。

● ケジラミ症

多くはしらみ(Laus)の一種である「ケジラミ」(Filzlaus)が陰毛に直接接触することにより感染します。自然治癒の可能性はなく、剃毛や薬剤シャンプーで治療します。

● エイズ(HIV)

エイズ(後天性免疫不全症候群)はHIV患者の血液や体液と接触することによって感染します。感染後2~3週間して風邪のような症状が現れ、その後、数年から10年間は症状がないまま経過します(無症状期)が、実はこの時期に次第に免疫機能が低下していきます。そのため、通常はかからないような弱い感染症に罹患したり(日和見感染)や悪性リンパ腫を発症したりします。

年代別にみた性感染症の割合

梅毒

● 日本で急増する梅毒

不治の病といわれていた梅毒(Lues、Syphilis)も、2010年頃までは日本国内の年間患者数が1000人を下回るほど減少傾向にあり、過去の病とみられていました。しかし、ここ数年の間に爆発的に患者数が増えている要注意の性感染症です。2015年に報告された梅毒の患者(Syphilitiker)数は数年前の4倍以上になっています(厚生労働省の統計より)。

年齢別にみた梅毒患者数

日本国内の梅毒患者の推移

● 梅毒の症状は?

病原体の梅毒トレポネーマによって発症する全身感染症です。病期により、多くの臓器を巻き込んで様々な症状を引き起こします。潜伏期は約3週間。初期の症状は硬いしこり、潰瘍ができ、いったん良くなるものの、2~3カ月後には身体の広い範囲に赤い斑点が現れます。自然に消えますが、3~10年後に再度症状が出てきます。さらに進行すると、脳や脊髄が侵され、麻痺などの障害が現れます。

梅毒の症状の推移
 感染してから症状経過
1期 3週間 局所のしこりやただれ 自然に消失
2期 2〜3カ月 バラ疹 自然に消失
3期 3〜10年 結節性梅毒疹・ゴム腫 筋肉や骨を破壊
4期 それ以降 脳や脊髄の障害
血管のダメージ
機能性臓器障害

● 先天性梅毒

感染している母親の胎盤を介して胎児に感染します。妊婦健診で梅毒検査が行われるのはこのためです。症状がでる時期は個人差があり、乳児期の場合は2歳以降に、また小学校や思春期になって神経症状が現れる場合などあります。

性感染症を予防する基本

● Safer Sexという考え

コンドームを用いた「Safer Sex(安全なセックス)」の考え方が大切です。あなたが感染すれば、パートナーにも感染します。感染するような機会を経験し感染の可能性をぬぐいきれない時は、症状がなくとも一度医療機関に相談して検査を受けるようにしましょう。

● 早期発見、早期治療が大切

ほとんどは薬などによる治療が可能です。性感染症の中には放っておくと後年に合併症や後遺症が生じるものもあります。

● 何科を受診すればよいの?

男性は泌尿器科(Urologie)、女性は産婦人科(Gynäkologie)で診てくれます。最初から専門科に行くのがためらわれるときは、掛かり付けの医師(ハウスアルツト、Hausarzt/-ärztin)に相談し、紹介してもらいましょう。

● 予防注射はありますか?

唯一、子宮頸がんおよび尖圭コンジローマと関係するヒトパピローマウイルスに対する予防接種があります。日本では副作用の議論がなされていて、厚生労働省の定期接種に含まれているものの推奨はされていないという状況です。

  • 感染予防の基本
  • ● コンドームの使用
      防げる病気:性器クラミジア、淋菌性感染症、エイズ(HIV)
  • ● 無症状の感染もあることを認識
  • ● 感染が確認された場合はパートナーも検査を受ける
  • ● 早期に発見し、治療を開始することが大切
  • ● プロの性産業に近づかない
  • ● 女性は婦人科、男性は泌尿器科に相談
最終更新 Dienstag, 21 Februar 2017 12:46
 

冬の感染性胃腸炎

学校で、下痢や嘔吐といった不調を訴える生徒が多かったと聞きました。ノロウイルスが原因でしょうか? その場合、下痢が治まったら学校に行かせても良いのでしょうか?

Point

  • 冬はウイルス性の感染性胃腸炎が多くなります
  • ノロウイルスの流行は10月~翌年5月
  • ロタウイルスの流行は2月~5月
  • 下痢・おう吐に伴う脱水症状を防ぐことが大切
  • 効果のある抗ウイルス剤はなく、治療は対症療法
  • 患者の排泄物はできるだけ早急に処理・廃棄する

感染性胃腸炎

● 冬はウイルス、夏は細菌が原因

感染性胃腸炎(流行性下痢嘔吐症)は、細菌、ウイルス、原虫などが原因となって発病する病気です。冬はウイルスによる感染性胃腸炎(Magen-Darm-Grippe)が流行します。原因としてノロウイルス、ロタウイルス、アストロウイルス、腸管アデノウイルスが知られています。通常の非感染性の急性胃腸炎であれば、他人には感染しませんが、感染性胃腸炎の場合、複数の人が同時に発症し、広がりがみられます。

感染性胃腸炎
 ウイルス性細菌性
流行季節 冬に多い 夏に多い
代表的な例 ノロウイルス
ロタウイルス
病原性大腸菌
サルモネラ菌
腸炎ビブリオ
カンピロバクター
黄色ブドウ球菌
ボツリヌス菌

ノロウイルス感染症

● 冬に多く発症

ノロウイルス(Norovirus)は10月~5月(特に11~3月)の冬の季節に流行し、どの年齢層の人にも感染します。一度感染しても、翌年に再び感染する可能性があります。ドイツ国内では、2016年の10月後半からノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行がみられました。ノルトライン=ヴェストファーレン州では前年同期比で患者届出数が3~4倍の流行です。

ルール地域のノロウイルス患者数(住民1000人当り)
都市患者数(人)
ボーフム 27
ドルトムント 103
デュイスブルグ 109
エッセン 57
ゲルゼンキルヒェン 14
ミュールハイム 6
オーバーハウゼン 39
(2016年12月1日号のDer Westen誌より)

● 経口感染と飛沫感染、2つのルート

ノロウイルスに汚染された食材を口にする(経口感染)、またはノロウイルス患者の排泄物が乾燥して飛散し、口に入ると感染します(飛沫感染)。10〜 100個とわずかでも、ウイルスが口に入ると感染します。

● 主な症状はおう吐と下痢

潜伏期は半日~2日間で、突然の激しい吐き気(Übelkeit)やおう吐(Erbrechen)、37~38度の発熱(Fieber)、腹痛(Bauchschmerz)と水様性の下痢(wässriger Durchfall)を起こします。症状は2~3日で回復します。

ノロウイルスに感染しても何の症状も現れない不顕性感染の人もいます。しかし、不顕性感染者も発病者と同じようにノロウイルスの感染源になり得ます。

● 下痢が止まっても要注意

下痢は発症後1~2日で治まります。しかし下痢が治まった後も、便中へのウイルス排出は1週間から1カ月間近くも続き、そこが感染源となることがあります。

● ノロウイルスによる食中毒

ノロウイルスに汚染された二枚貝(生ガキなど)が食中毒の原因になることもあります。


ロタウイルス感染症

● 毎年2~5月に流行

ロタウイルス(Rotavirus)の流行時期は2~3月で、ノロウイルスよりやや遅れて出現します。ロタウイルスによる急性胃腸炎は、0~6歳以下の子ども(特に生後6カ月~2歳)がかかりやすい病気です。

● 症状はおう吐、白色の下痢

1~3日の潜伏期間の後、最初は吐き気で始まり、水様性の下痢、37度前後の発熱、腹痛がみられます。米のとぎ汁のような白い下痢便はロタウイルスの特徴です。3日~1週間で回復に向かいます。

● 非常に強い感染力

ノロウイルスと同様、わずか10~100個のロタウイルスが体内に侵入しただけでも感染します。再感染の場合は、多くの場合、初回の感染に比べて軽症で済みます。

ノロウイルスとロタウイルスの特徴
 ノロウイルスロタウイルス
患者年齢 小児〜成人 乳幼児
感染力 強い 強い
流行時期 秋〜翌年の春 2月〜春
感染ルート 経口、飛沫 経口
感染力 強い 強い
学校での集団感染
食中毒
潜伏期 1~2日 1~3日
おう吐・水様性下痢
白色便
症状の回復まで 2~3日 5~6日
不顕性感染 * 多い
下痢回復後の菌排出 1週間〜1カ月
抗ウイルス薬 なし なし
予防ワクチン なし
* 感染はしても発病しないで経過する場合

感染性胃腸炎に感染したら

● 脱水症状を防ぐ

ノロウイルスもロタウイルスも、特効薬となる抗ウイルス薬はありません。症状に応じた、対症療法が行われます。症状が少し落着いたら、少量ずつ水分を摂取します。舌が乾く、皮膚に艶がないなど、脱水症状が疑われる場合は早急に医療機関を受診してください。

● 下痢止め薬は使用しない

整腸薬を除き、強い下痢止めは腸管内の原因微生物の体外への排泄を抑え、逆に回復を遅らせてしまう可能性があります。原則、強い下痢止め薬は使用しません。

● 吐物・排泄物の処理は迅速に

患者の吐物、便には大量のウイルスが含まれています。使い捨てのゴム手袋とマスクを着用し、排泄物が乾燥する前にできるだけ早く処理してください。処理後は十分な手洗い、うがい、鼻腔洗浄などを必ず行ってください。ノロウイルスで汚染された場所には、かなりの時間が経っても、まだ感染力を保ったノロウイルスが残っている可能性があります。

● 消毒には次亜塩素酸ナトリウム

ノロウイルスとロタウイルスはアルコール消毒薬に対して抵抗力があり、効きません。消毒には、0.1%以上の家庭用の塩素系漂白剤が用いられます。

  • ウイルス性胃腸炎に際して
  • ● 脱水症状の予防と対策が基本
  • ● 強い下痢止め薬は原則用いない
  • ● 脱吐物・排泄物は早急に処理する
  • ● 乾燥した残留排泄物も感染源
  • ● ノロウイルスの排泄は1週間以上続くと認識
  • ● 消毒には次亜塩素酸ナトリウムが効果的
  • ● ノロウイルス対策は85度以上の加熱1分以上で
  • ● 早すぎる登園、当校、職場復帰は控える

予防のためのQ & A

● 予防接種はありますか?

ロタウイルスに対しては、ワクチンの予防接種が効果的です。しかし、残念ながらノロウイルスに対する予防ワクチンはありません。

● 幼稚園・学校はいつから?

ノロウイルス感染については、ノルトライン=ヴェストファーレン州の労働安全衛生研究所で、「ノロウイルス感染症の患者は、下痢が止まってから48時間(可能であれば72時間)は他者との接触を控えた方が良い」とされています。

● 加熱の予防効果は?

厚生労働省によると、ノロウイルスは加熱に弱く、85度の環境では1分間で感染性がなくなります。料理の十分な加熱(中心温度を85~90度以上に)が基本です。まな板、包丁、食器、布類は85度以上の熱湯に1分間以上、浸けておきます。

● 手洗いの効果は?

手洗いは付着しているウイルスを減らす有効な手段です。調理や食事の前、トイレの後に必ず実施。オムツ交換の後は手袋を用いたとしても手洗いをしましょう。

最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 11:06
 

原因不明の胃痛・胃もたれ - 機能性ディスペプシア

食後の胃もたれや胃の痛みが続いているのですが、検査で「異常なし」と言われました。「機能性ディスペプシア」という病気があると聞きましたが、どんな病気でしょうか?

Point

  • 機能性胃腸障害の1つで、胃痛、胃もたれ、早期の腹部膨満感が主な症状です。
  • 日本人の6~10人に1人が患っています。
  • 胃カメラで器質的な異常が見つかりません。
  • 治療は消化機能改善薬、胃酸分泌を抑える薬を使用します。
  • 規則正しい食生活、十分な睡眠が大切です。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは

● 主な症状は?

みぞおち(Oberbauch)の痛み、食後の胃もたれ、少し食べただけでお腹が一杯になる(Völlegefühl、vorzeitiges Sättigungsgefühl)など、不快な症状が続いているにもかかわらず、胃カメラ検査では異常が確認されず、そのほかに原因となり得る全身疾患もありません。命に別状はないものの、QOL(生活の質)を低下させる病状として捉えられています。

みぞおちの症状

● 病気にかかる確率は?

日本人の機能性ディスペプシアの有病率は高く、一般健康診断の受診者でみると10人から6人に1人(11〜17%)、腹部症状を訴えて外来を受診する患者の約半数(45~53%)にも上ると考えられています※。

● 機能性の胃腸障害とは?

消化器系の不快症状はあるのに、内視鏡検査などで形の変化を伴った(器質的な)異常が見つからない、一連の胃腸病を「機能性胃腸障害(Funktionelle Magen-Darm-Erkrankungen)」と呼んでいます。今回取り上げる「機能性ディスペプシア」のほか、「胃食道逆流症」(2013年12月20日発行968号掲載)「過敏性腸症候群」(2011年11月16日発行894号掲載)も機能性胃腸障害の仲間です。以前は「気のせい」「気持ちの問題」として、「慢性胃炎」「神経性胃炎」などと片付けられてきたものも含まれています。

機能性ディスペプシアの原因

● 原因1 胃の動き方の異常

食べた後に胃が「適切に動かない」、逆に「働き過ぎる」といった機能異常が現れます。ストレスによって自律神経系のバランスが乱れた結果、胃の働きがおかしくなることが要因として考えられています。正常な状態の場合、食物が食道から胃に入ると、胃は消化を助けるように形を変えて膨らみます。これを「胃適応性弛緩」といいます。しかし機能性ディスペプシアにかかると、約半数のケースで胃の膨らみ方に異常が認められます。それに伴い、胃の中に食べ物を適切にとどめておけなかったり、十二指腸への排出に問題が生じたりします。消化機能改善薬(アコチアミドなど)を用いると、胃適応性弛緩の改善がみられるという報告があります。

みぞおちの症状

● 原因2 胃の知覚過敏

さらに、刺激に対して胃が痛みを感じやすくなっていると考えられています。そのため、通常では何ということもない少量の食事でも満腹感を覚えたり、胃酸の刺激を、痛みとして知覚することがあります。

胃の知覚過敏

● 原因3 その他の影響因子

ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、脂肪分の多い食事、アルコールやタバコ、幼少時のトラウマといった心理的因子などが、増悪因子として関与していると考えられています※。

機能性ディスペプシアの治療

● 胃もたれ、膨満感に対して

胃が適切に機能していないことが多いので、胃の運動を正常に近づける作用のある消化管機能改善薬(アコチアミド、商品名アコファイド®など)が治療に用いられます。漢方薬の「六君子湯(りっくんしとう)」にも胃運動改善効果があると報告されています。

● 胃の痛みに対して

胃の痛みには胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤のオメプラゾールなど)が用いられます。

● 不安やストレスに対して

強いストレスが背景にある場合には、医師や臨床心理士と相談しながらストレスを改善する方法を模索します。場合によっては、軽い不安や緊張を取り除くために抗不安薬が用いられることもあります。

● ピロリ菌の除菌

胃・十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が陽性の場合には、抗菌薬を用いた除菌を進めます。

機能性ディスペプシアの治療
症状
胃のもたれ 胃の運動を改善する薬
早期の満腹感
胃の痛み 胃酸の分泌を抑える薬
強いストレス、心理的要因 リラックスさせる植物製剤、抗不安薬
ヘリコバクター・ピロリ菌 除菌のための抗菌薬

日常生活で気をつけること

● 甘いもの、脂肪、アルコールは控えめに

脂肪分を多く含む食事、強い香辛料、甘いものの摂り過ぎは胃に負担を掛け、胃もたれの原因となります。外食の際、ドイツ食は脂肪成分の比率が和食に比べて多いことにも留意しましょう。過度のアルコールは胃酸の分泌を促し、胃の症状を悪化させます。

● 食後はリラックス・タイムを

食後すぐに活動を開始すると、交感神経が働き、胃の働きがうまくいかないことがあります。胃の運動を促進するのは、心身がリラックスしているときに優位となる副交感神経ですので、食後はひと休みしてから活動を再開しましょう。

● 規則正しい食生活

食事の時間が不規則になってしまうのは現代人の生活の特徴。しかし、深夜の夕食や就寝直前の食事は胃に負担をかけ、夜間の胃酸分泌を促すので、好ましくありません。

● 十分な休養と睡眠

理屈では分かっていてもなかなか難しいのが十分な睡眠時間の確保です。胃腸は、ストレスや睡眠不足の影響を受けやすいので、適度な休養と十分な睡眠がとても大切です。ちょっとドイツ式に「明日でも良いことは明日に延ばす」というスタンスで根を詰め過ぎないようにしてみましょう。夜遅くまでメールをチェックしたり、ウェブサイトを閲覧したりする習慣も好ましいとは言えません。

● 体を動かす

自家用車をお持ちの場合、車での移動の多くなるドイツ生活。通勤時、乗り換えのためにホームを走る機会もなくなり、運動不足になっていませんか? 身体を動かすことは胃腸の運動を改善します。階段を使うなど、日々の生活の中で歩く機会を増やしましょう。


日常生活で気を付けること
脂肪分、アルコール、甘いものは控えめに
食事の直後はリラックスする時間を
就寝直前の食事は避ける
十分な睡眠
仕事、家事から離れる時間を
体を動かす

※日本消化器病学会
「機能性消化管疾患 - 診療ガイドライン 2014:機能性ディスペプシア(FD)」
www.jsge.or.jp/files/uploads/FDGL2.pdf

 

 

最終更新 Mittwoch, 19 Oktober 2016 17:51
 

インフルエンザ予防接種今年の流行シーズンを前に

子供には点鼻によるインフルエンザ予防接種ができると聞きましたが、注射型とどのように違うのでしょうか? 妊娠中も受けられますか?

Point

  • 生後6カ月未満は予防接種をしません
  • 生後6カ月から2歳まで、18歳以上は注射型ワクチン
  • 2〜17歳までは点鼻型または注射型ワクチン
  • 妊婦と高齢者へは予防接種が特に勧められています
  • 十分な睡眠、帰宅後のうがい、手洗いが大切

注射型ワクチンと点鼻型ワクチンの違い

● 注射型ワクチン

注射型は、WHO(世界保健機構)が予測した流行ウイルス株3種類に対しての予防効果が期待できる不活性化ワクチンです。一部に4種のウイルス株に対するワクチンもあります。

● 点鼻型ワクチン

点鼻型は、4種類のウイルス株に対して予防効果が期待できる生ワクチンです。温かい人体の中で活動が弱まるように弱体化させたウイルス株を用い、鼻に噴射することでインフルエンザに擬似感染した状態し、免疫を作らせるワクチンです。注射と違い痛みはありません。

注射型ワクチン/点鼻型ワクチン

注射型ワクチンと点鼻型ワクチンの相違点
注射型ワクチン 点鼻型ワクチン
ワクチンは 不活化ワクチン 生ワクチン
ウイルス株 多くは3種類 4種類
投与時の痛み あり なし
多い副作用 注射部位の発赤 感冒様の症状

年齢によるワクチンの選択基準

● 生後6カ月未満

インフルエンザ(Influenza)の予防接種(Schutzimpfung)は行われません。この時期の乳児において予防効果が証明されていないからです。

● 生後6カ月から2歳

注射型(Intramuskulär)の不活化ワクチンを大人の半分量接種します。副作用のリスクが不明なため、点鼻(Nasal)型の予防ワクチンは用いません。

● 2歳から17歳までは 

18歳誕生日までは点鼻型の生ワクチン、もしくは注射型の不活化ワクチンを選択できます。注射型ワクチンの場合、生後35カ月までは大人の半分量を接種します。

● 18歳以上

注射型の不活性化ワクチンのみが用いられます。

ワクチンのタイプと適応
注射型ワクチン 点鼻型ワクチン
生後6カ月未満 × ×
生後6カ月〜2歳 ×
2〜17歳
18歳以上 ×
妊婦、授乳中の女性 ×
ぜんそくの小児 ×
アスピリン使用 できる 避ける
他の予防接種 すぐできる 4週間空ける
18歳以上 ×

点鼻型ワクチンの留意点

● ワクチン接種後の4週間は予防接種を控える

生ワクチンのため、接種後4週間はほかの予防接種を控えてください。

● ぜんそくがあれば不可

鼻腔内へのワクチン投与がぜんそく発作の引き金になったり、症状の悪化につながることを防ぐため、ぜんそくを有する5歳未満の小児、1年以内にぜんそく発作がみられた人には投与できません。

● 妊婦・授乳中は不可

妊婦および妊娠の可能性のある場合は生ワクチンである点鼻型ワクチンは使えません。また、母乳への移行と乳児への影響が否定できないため、授乳中の女性への接種もできません。

● 免疫の低下している病気の人は不可

血液疾患、悪性腫瘍で免疫の低下した患者、治療のため大量のステロイド剤や免疫抑制剤を用いている人は、点鼻型の生ワクチンを用いることができません。

● アスピリンの併用は控えて

解熱鎮痛剤の一種であるアスピリン(Aspirin、Acetylsalicylsäure)との関連が強いライ症候群(Reye-Syndrom)を引き起こさないよう、点鼻型の生ワクチン接種後の4週間はアスピリンの使用を避けることが大切です。

インフルエンザ予防接種に関するQ & A

● 妊娠中でもワクチン接種は可能ですか?

妊娠中、インフルエンザは症状が重篤化しやすく、合併症のリスクも増えます。そのため2010年以降、ドイツのロベルト・コッホ研究所のワクチン接種委員会(STIKO)は、妊婦への注射型ワクチンによる予防接種を強く推奨しています。妊娠中どのステージでも予防接種は可能ですが、安定期に入った妊娠中期以降の投与がより望ましいとされています。

● 胎児へのワクチン接種の影響は?

注射型ワクチンの予防接種を受けた母親のインフルエンザに対する抗体は、胎盤を通して胎児にも移動します。そのため、生後の新生児にも約6カ月間は母親から得たインフルエンザ予防効果が続くと考えられています。授乳中であっても、注射型ワクチンであれば接種は可能です。

● ワクチンは風邪予防にもなりますか?

通常の「風邪」症状に対して、インフルエンザの予防ワクチンは予防効果がありません。

● 卵アレルギーの人は?

注射型ワクチンは、製造過程で鶏卵を用いるため、卵アレルギーがある人の場合は留意が必要です。詳細はかかりつけの医師へ相談してください。

● なぜ毎年予防接種が必要ですか?

予防接種の効果が5〜6カ月程度と短いこと、毎年少しずつ異なったウイルス株のインフルエンザが流行するためです。接種後、体内で十分な量の抗体が作られるのに約1〜2週間を必要とします。流行シーズン中に日本への一時帰国をされる人は、日程的なゆとりをもってワクチンを接種しましょう。

● ドイツで受けた予防接種は日本でも効きますか?

世界保健機構(WHO)が毎年発表する流行予想のウイルス株に基づいてワクチンが製造されます。そのため、日本とドイツでは同じウイルス株に対しての予防効果が期待されます。

● ワクチン接種の予防効果の割合は?

予防接種のインフルエンザ予防効果は健康な人で60〜70%といわれています。100%の予防率があるわけではありませんが、予防接種によりインフルエンザ感染の機会を減らし、発症した際に重症化することを抑える効果が期待できます。

日常生活での インフルエンザ感染予防

● うがい、手洗い、十分な睡眠

外出より戻ったらまず、うがいと手洗いをしましょう。インフルエンザウイルスは鼻腔粘膜を介して感染・増殖するので、ぬるま湯で軽く鼻腔洗浄をするのも良いでしょう。十分な睡眠は免疫力を高め、予防に役立ちます。インフルエンザにかかったら、お年寄りや子供が集まる場所に立ち入ることは控えます。発熱中や解熱後、すぐに職場に顔を出すことで、同僚に迷惑を掛ける可能性があることも理解しておきましょう。

インフルエンザ感染予防の基本

● 流行前の予防接種
● 帰宅したらうがい・手洗い、鼻腔を洗う
● 睡眠時間を十分にとる
● 発症したら職場に行かない
最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 10:47
 

夏の旅行と健康

この夏、家族で欧州各地を旅行します。旅行中、異国の地で病気や体調不良にならないよう、どのようなことに注意したら良いでしょうか?

Point

  • 4人に1人が休暇旅行中に体調不良を訴えます。
  • 過密なスケジュール、無理な移動は禁物です。
  • 国・地域によっては飲料水に注意。
  • 旅行中は暴飲暴食を避け、十分な睡眠を。
  • 事前に流行感染症や訪問国の政情の情報を入手することも大切です。

休暇中の病気

● 休暇旅行中、4人に1人が体調不良に

ドイツの休暇(Urlaub)期間中、旅行者の4人に1人が旅先で発熱や胃腸症状など何らかの体調不良を訴え、10人に1人は深刻な体調不良を来たすと言われています。本来はリラックスするための休暇中に体調が悪くなることを、ドイツでは「休暇病(Freizeitkrankheit,Urlaubskrankheit)」と呼んでいます。

  • ウイルス性胃腸炎に際して
  • ● 旅行前の過度なストレス・疲れ
  • ● 過密なスケジュール
  • ● 移動距離・移動時間が長い
  • ● 普段とは異なる食生活
  • ● 時差や気温・気候環境の変化
  • ● 国・地域によっては水の細菌汚染
  • ● 休暇中にメール応答など仕事を続ける

● 風邪症状と消化器症状が多い

発熱、頭痛、咳など風邪症状、腹痛、下痢などの消化器症状が最も多くみられます。下痢や嘔吐のせいで、旅先のホテルの部屋で一日中寝ている状態になることも。

● 兆候は旅の前から

休暇旅行の体調不良には、旅行前のコンディションが関与していることが少なくありません。休暇中はリラックスして治るだろうとの早合点は禁物です。長期滞在型の休暇をとるドイツ人でも具合が悪くなるのですから、移動型の旅行ではさらに負荷がかかります。出発前に日常の仕事を片付けておきたいと無理をすることも過労を助長します。

  • 休暇旅行中の体調管理のポイント
  • ● 旅行前の体調は万全に
  • ● ゆとりあるスケジュール
  • ● 食べ過ぎ、飲み過ぎをしない
  • ● 滞在地では十分な睡眠を
  • ● 土地の気候にあった服装
  • ● 国・地域によっては飲料水に注意
  • ● 休暇中に仕事はしない

● 渡航先の飲料水にも注意

アフリカや中東地域では飲料水にも十分な注意が必要です。訪問国によっては歯磨きで口をすすぐときも、市販のペットボトルの水を使うようにしましょう。また、レストランでは、瓶入り清涼飲料水でも水道水から作った「氷」が入っていれば危険です。

●「休暇病」を防ぐ工夫

スケジュールに振り回されるような計画は避けましょう。普段食べ慣れない食材の食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎは避けましょう。休暇中は携帯電話をオフにし、できれば仕事のメールも読まないスタンスが大切、仕事開始の1~2日前に帰宅し、静かに体調を整えたいものです。

● 疾病保険カード(保険証)と常備薬を忘れずに

ドイツで発行された疾病保険カードを持っていきましょう。事前にドイツ国外での病気にも使えるかを保険会社に確認しておくことも忘れずに。高血圧などの治療中の薬があれば、必要な錠数を持参しましょう。

夏は日照不足解消のチャンス

● 日照不足解消の機会です

日焼けは避けたいと考えている女性の方も少なくない昨今ですが、しっかりした骨を維持するには太陽光に当たることが大切です。太陽光が皮ふに当たることにより、活性型ビタミンDがつくられ、骨(Knochen)へのカルシウムの取り込みを促します。冬の日照時間が日本にくらべて極端に少ないドイツでは、この季節に十分な太陽光を浴びておくことをお勧めします。

● 日焼けと皮ふの急性炎症

太陽光は大切ですが、浴び過ぎにも注意。短時間の間に皮ふが赤くなる日光皮膚炎(Sonnenbrand)は皮ふの急性炎症で、メラニンが皮ふに沈着して褐色になる日焼け(Sonnenbräune)とは異なります。日光皮膚炎を避けたい人は日焼け止めクリームを用意しましょう。

  • この夏報告されている流行感染症
  • ● 東南アジアのデング熱流行
  • ● サウジアラビアでのMERSの流行
  • ● アンゴラでの黄熱流行
  • ● 英国での大腸菌O157の流行
  • ●中南米のジカウィルス感染症
  • ● ブラジル南部でのインフルエンザ流行
  • WHO 2016 年7月、*PAHO 2016 年7月

ドイツの夏、日本の夏

● 暑くなくとも水分の補給を

日中と日没後の寒暖の変動が激しいドイツの夏、夜は薄着で外出して風邪をひくことも。日中も日本に比べて湿度が低く汗ばむことが少ないため、旅先で長時間、何も飲まないで歩いていると、知らず知らずのうちに脱水(Dehydration、Hypohydration)気味になることも。適度な水分補給を心がけましょう。

ドイツの月別の日照時間

● ダニ(ツェッケ)脳炎

3〜10月はダニ脳炎(初夏脳髄膜炎、FSME)の季節です。マダニ(Zecke)によって媒介されるウイルス性脳炎で、症状は日本脳炎(japanisches Enzepalitis)に似ています。ウイルスに汚染されたマダニはドイツ南部から中欧・東欧の森林地帯に多く生息しています。これらの地域の森林や山間部でキャンプやハイキングを予定している人は、ダニ脳炎(FSME)の予防接種と、皮ふに食いついたマダ二を取り除くツェッケ・ピンセット(薬局で購入)が感染予防に役立ちます。

● 猛暑の日本へ一時帰国

真夏に日本へ一時帰国する場合は、長時間のフライトによる疲れ、エアコンの効いた屋内と暑い屋外の温度差から体調を崩したり、睡眠中のエアコンで喉を痛めることも。また、暑さで頭が痛い、何となくボーッとするなど、熱中症の初期症状が疑われたら、生ぬるい水の入ったバスタブに浸かって体温を下げることも有用です。また、7〜9月の日本の夏は食中毒の多い季節です。特に細菌性の胃腸障害、中でもカンピロバクターが原因のものが増えます。

猛暑の日本へ一時帰国

旅先の感染症・安全情報

● 感染症情報

訪れる国や地域によって、ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、マラリアなどの蚊によって媒介される病気の感染症情報に注意しましょう。

● 旅レジの活用

訪問国の政治情勢やテロ情報への留意も大切です。安全情報としては外務省の海外安全アプリ「たびレジ」が有用です。スマートフォンのGPS機能により現在地および周辺国・地域の海外安全情報を表示します。緊急時には安否確認の連絡も行えます。今年の夏、あなたはどのように過ごされていますか?

「たびレジ」登録のメリット

最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 11:42
 

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