ジャパンダイジェスト
ドクターの診察室


夏の旅行と健康

この夏、家族で欧州各地を旅行します。旅行中、異国の地で病気や体調不良にならないよう、どのようなことに注意したら良いでしょうか?

Point

  • 4人に1人が休暇旅行中に体調不良を訴えます。
  • 過密なスケジュール、無理な移動は禁物です。
  • 国・地域によっては飲料水に注意。
  • 旅行中は暴飲暴食を避け、十分な睡眠を。
  • 事前に流行感染症や訪問国の政情の情報を入手することも大切です。

休暇中の病気

● 休暇旅行中、4人に1人が体調不良に

ドイツの休暇(Urlaub)期間中、旅行者の4人に1人が旅先で発熱や胃腸症状など何らかの体調不良を訴え、10人に1人は深刻な体調不良を来たすと言われています。本来はリラックスするための休暇中に体調が悪くなることを、ドイツでは「休暇病(Freizeitkrankheit,Urlaubskrankheit)」と呼んでいます。

  • ウイルス性胃腸炎に際して
  • ● 旅行前の過度なストレス・疲れ
  • ● 過密なスケジュール
  • ● 移動距離・移動時間が長い
  • ● 普段とは異なる食生活
  • ● 時差や気温・気候環境の変化
  • ● 国・地域によっては水の細菌汚染
  • ● 休暇中にメール応答など仕事を続ける

● 風邪症状と消化器症状が多い

発熱、頭痛、咳など風邪症状、腹痛、下痢などの消化器症状が最も多くみられます。下痢や嘔吐のせいで、旅先のホテルの部屋で一日中寝ている状態になることも。

● 兆候は旅の前から

休暇旅行の体調不良には、旅行前のコンディションが関与していることが少なくありません。休暇中はリラックスして治るだろうとの早合点は禁物です。長期滞在型の休暇をとるドイツ人でも具合が悪くなるのですから、移動型の旅行ではさらに負荷がかかります。出発前に日常の仕事を片付けておきたいと無理をすることも過労を助長します。

  • 休暇旅行中の体調管理のポイント
  • ● 旅行前の体調は万全に
  • ● ゆとりあるスケジュール
  • ● 食べ過ぎ、飲み過ぎをしない
  • ● 滞在地では十分な睡眠を
  • ● 土地の気候にあった服装
  • ● 国・地域によっては飲料水に注意
  • ● 休暇中に仕事はしない

● 渡航先の飲料水にも注意

アフリカや中東地域では飲料水にも十分な注意が必要です。訪問国によっては歯磨きで口をすすぐときも、市販のペットボトルの水を使うようにしましょう。また、レストランでは、瓶入り清涼飲料水でも水道水から作った「氷」が入っていれば危険です。

●「休暇病」を防ぐ工夫

スケジュールに振り回されるような計画は避けましょう。普段食べ慣れない食材の食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎは避けましょう。休暇中は携帯電話をオフにし、できれば仕事のメールも読まないスタンスが大切、仕事開始の1~2日前に帰宅し、静かに体調を整えたいものです。

● 疾病保険カード(保険証)と常備薬を忘れずに

ドイツで発行された疾病保険カードを持っていきましょう。事前にドイツ国外での病気にも使えるかを保険会社に確認しておくことも忘れずに。高血圧などの治療中の薬があれば、必要な錠数を持参しましょう。

夏は日照不足解消のチャンス

● 日照不足解消の機会です

日焼けは避けたいと考えている女性の方も少なくない昨今ですが、しっかりした骨を維持するには太陽光に当たることが大切です。太陽光が皮ふに当たることにより、活性型ビタミンDがつくられ、骨(Knochen)へのカルシウムの取り込みを促します。冬の日照時間が日本にくらべて極端に少ないドイツでは、この季節に十分な太陽光を浴びておくことをお勧めします。

● 日焼けと皮ふの急性炎症

太陽光は大切ですが、浴び過ぎにも注意。短時間の間に皮ふが赤くなる日光皮膚炎(Sonnenbrand)は皮ふの急性炎症で、メラニンが皮ふに沈着して褐色になる日焼け(Sonnenbräune)とは異なります。日光皮膚炎を避けたい人は日焼け止めクリームを用意しましょう。

  • この夏報告されている流行感染症
  • ● 東南アジアのデング熱流行
  • ● サウジアラビアでのMERSの流行
  • ● アンゴラでの黄熱流行
  • ● 英国での大腸菌O157の流行
  • ●中南米のジカウィルス感染症
  • ● ブラジル南部でのインフルエンザ流行
  • WHO 2016 年7月、*PAHO 2016 年7月

ドイツの夏、日本の夏

● 暑くなくとも水分の補給を

日中と日没後の寒暖の変動が激しいドイツの夏、夜は薄着で外出して風邪をひくことも。日中も日本に比べて湿度が低く汗ばむことが少ないため、旅先で長時間、何も飲まないで歩いていると、知らず知らずのうちに脱水(Dehydration、Hypohydration)気味になることも。適度な水分補給を心がけましょう。

ドイツの月別の日照時間

● ダニ(ツェッケ)脳炎

3〜10月はダニ脳炎(初夏脳髄膜炎、FSME)の季節です。マダニ(Zecke)によって媒介されるウイルス性脳炎で、症状は日本脳炎(japanisches Enzepalitis)に似ています。ウイルスに汚染されたマダニはドイツ南部から中欧・東欧の森林地帯に多く生息しています。これらの地域の森林や山間部でキャンプやハイキングを予定している人は、ダニ脳炎(FSME)の予防接種と、皮ふに食いついたマダ二を取り除くツェッケ・ピンセット(薬局で購入)が感染予防に役立ちます。

● 猛暑の日本へ一時帰国

真夏に日本へ一時帰国する場合は、長時間のフライトによる疲れ、エアコンの効いた屋内と暑い屋外の温度差から体調を崩したり、睡眠中のエアコンで喉を痛めることも。また、暑さで頭が痛い、何となくボーッとするなど、熱中症の初期症状が疑われたら、生ぬるい水の入ったバスタブに浸かって体温を下げることも有用です。また、7〜9月の日本の夏は食中毒の多い季節です。特に細菌性の胃腸障害、中でもカンピロバクターが原因のものが増えます。

猛暑の日本へ一時帰国

旅先の感染症・安全情報

● 感染症情報

訪れる国や地域によって、ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、マラリアなどの蚊によって媒介される病気の感染症情報に注意しましょう。

● 旅レジの活用

訪問国の政治情勢やテロ情報への留意も大切です。安全情報としては外務省の海外安全アプリ「たびレジ」が有用です。スマートフォンのGPS機能により現在地および周辺国・地域の海外安全情報を表示します。緊急時には安否確認の連絡も行えます。今年の夏、あなたはどのように過ごされていますか?

「たびレジ」登録のメリット

最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 11:42
 

視界に現れる異常 - 飛蚊症と光視症

最近、ふと空を見上げたときなどに、視界に何か小さなゴミのようなものが浮いているように見えて、気になります。何かの病気でしょうか?

Point

  • 視界に浮遊物が見えるのは、飛蚊症。
  • 暗い所で一瞬光りが見えるのは、光視症。
  • ものがゆがんでみえるのが変視症。
  • 重篤な目の病気の前触れであることも、まずは眼科へ。
  • 偏頭痛に先立つ視覚異常は、脳血流の変化から。
  • 貧血で星が見えるのは、脳の虚血によるもの。

飛蚊症(ひぶんしょう)とは

● 症状は?

明るい壁や空を見たときに、目の前を小さな糸くずやゴミのようなものが移動しているように見えることがあります。眼球の中の硝子体(しょうしたい)と呼ばれる卵白のようなゼリー状の物質に、何らかの原因で濁りができると、その影が飛蚊症として感知されます。眼球内を蚊が飛んでいるように見えるため、飛蚊症(fliegende Mücken)という名がつきました。目を動かしたり、視点を変えると、目の動きに少しおくれて浮遊物も移動します。

飛蚊症

● 原因1:生まれつき

胎児のうちは硝子体に血管が通っており、通常は生まれるまでにこの血管はなくなります。しかし、生後もその一部が硝子体の中に濁りとして残ることがあり、その影が網膜に映ります。特に心配する必要はありません。

● 原因2:加齢

50歳以降、年齢を重ねるに従って硝子体の容積は減り、硝子体と網膜の間に小さな隙間ができます(後部硝子体剥離)。また、加齢によって硝子体の構造が崩れ、硝子体ポケットと呼ばれる水の部分ができ、そこに繊維成分が濁りとして浮遊します。どちらも、飛蚊症を生じさせる原因です。

硝子体

● 原因3:強い近視

強い近視の人は、眼球の長さ(角膜から網膜の長さ) が伸びているため、硝子体も引き伸ばされています。それにより、硝子体の中に空洞ができやすく、そこに繊維成分が集まって飛蚊症の原因になります。また、網膜も絶えず硝子体側に引っ張られることで網膜が薄くなって、丸い穴(円孔)ができ、飛蚊症の原因になります。

● 原因4:網膜の亀裂、眼底出血

何らかの原因で網膜に亀裂が入ると、飛蚊症や光視症が現れます。網膜裂孔(もうまくれっこう)と呼ばれるこの亀裂がさらに進むと、網膜が剥がれて「網膜はく離(Netzhautablösung)」を起こします。また、網膜の血管が破れて血液が硝子体の中に流れ込んだような場合にも、突然の飛蚊症と視野障害をきたします。どちらも放っておくと失明の危険があるので、できるだけ早く眼科での治療が必要です。

視覚の症状の原因

光視症(こうししょう)とは

● 症状は?

光の見えないはずの暗闇の中で、視界にピカっと光が見えたり、キラキラと小さな光の点が横切って見えたりする症状です。

光視症

● 原因1:加齢

眼球内の硝子体の動きに伴い、網膜が刺激を受け、それが光として認知されることによって起きる症状です。原因として最も多いのは。加齢による後部硝子体剥離です。網膜と硝子体の間に癒着ができ、目を動かした際に網膜の一部が引っ張られて、その刺激が光として感じられるのです。

● 原因2:網膜剥離の前触れ

多くの場合、光視症は眼球の老化に伴う症状ですが、中には網膜剥離の前兆として起こる場合もあります。光視症の人の20%が網膜裂孔を生じるとされ、網膜裂孔がさらに進展すると網膜剥離を起こし、失明の危険も出てきます。光視症を経験したら、眼科を受診しましょう。

● 「 眼から火花が出る」?

頭を強く打って「星が見える」という表現がありますが、打撲や大きなくしゃみのような物理的な衝撃が網膜を刺激し、光として捉えられたために生じる現象であると考えられています。貧血や低血圧の人が急に立ち上がったときに見るチカチカ感は、一過性の脳の虚血現象と理解されています。

変視症とは

● ものが歪んで見える?

例えば、まっすぐに立っているはずのスカイツリーが、途中で曲がっているように見える視覚異常です。目のフィルムに相当する網膜の表面がゆがむことによって生じます。必ず眼科を受診してください。

変視症

● 黄斑変性症を疑う

変視症の多くは、網膜の中心にある黄斑(おうはん)の部分が加齢によって変化し、黄斑変性症を発症していることが原因です。黄斑変性症の人は、視野の中心だけがゆがんだり、ぼやけたり、暗く見えますが、視野の周辺部は正常に見えます。黄斑変性症は、日本人の失明原因の4位にランクインしています。

その他の視野の異常

● 偏頭痛の直前に起こる光の前兆

偏頭痛(Migräne)の痛みに先立って、視野に異常が生じ、のこぎりの刃型のギザギザした形が見えたり、ギラギラした光が広がってみえることがあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、このような前兆は偏頭痛の約1/2 の人にみられます。脳内の血流変化が原因で、目の病気ではありません。

● 不思議の国のアリス症候群

変わった病名ですが、突然、目の前のものが大きく見えたり(大視症)、周囲のものが小さく見えたり(小視症)、ゆがんで見えたり(変視症)、あるいは時間の経過が速くなったり、遅くなったり、様々なバリエーションの症状があります。多くの場合、数分で元にもどります。偏頭痛、ウィルス性脳炎の感染など、いくつかの原因が考えられます。

視覚異常

眼科受診時の留意点

受診前に電話で予約を取ってください。かかり付けの医師から紹介してもらっても良いでしょう。常用している治療薬、患っている慢性の病気があれば眼科医に伝えてください。目の変化が全身の病気と関係している場合もありますし、散瞳剤などが慢性の病気に影響したり、ほかの治療薬との薬物相互作用を起こすのを防ぐためです。まれに、説明がないまま検査室に案内され、検査結果や測定値の説明もなかった、という話を聞くことがあります。そのような場合、検査結果が後日、紹介元のかかり付け医に郵送されるのか尋ねてみましょう。

 

 

最終更新 Mittwoch, 19 Oktober 2016 17:51
 

子供の予防接種、 ドイツでは?

4月に日本から転勤してきました。日本での予防接種が途中の子供が二人います。続きの予防接種をドイツで受けることができるでしょうか?

Point

  • ドイツの予防接種は世界基準のWHOの推奨にのっとっています。
  • 日本脳炎とBCGは行われていません。
  • おたふく風邪の単独ワクチンはありません。
  • 子供の予防接種の日本での記録は母子健康手帳で分かります。
  • 予防接種のスケジュールは医療機関と相談しましょう。

ドイツの小児の予防接種

● 日本との接種項目の違い

ドイツのSTIKO(予防接種委員会)が推奨する小児の接種項目も、日本の厚労省が定めた定期接種項目も、14種と数は同じです。違いは、ドイツでは日本脳炎とBCG(結核の予防接種)が含まれておらず、代わりに日本では任意接種であるB型肝炎(10月より日本でも定期接種予定)、おたふく風邪、ロタウィルスが含まれています。

予防接種に関するドイツ単語

● 混合接種製剤が多いドイツ

ドイツでは、不活性ワクチン(Totimpfstoff)の6種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳、ヒブ菌、ポリオ、B型肝炎)を2歳前に4回接種します。生ワクチン(Lebendimpfstoff)も、3種混合生ワクチン(麻しん、風疹、おたふく風邪を含むPriorix®など)や4種混合生ワクチン(3種混合+水痘ワクチンを含むPriorix Tetra®など)が用いられます。その結果、幼児への注射回数が日本より少なくなっています。

● おたふく風邪のワクチンがない?

混合ワクチン製剤が主体となっているため、ドイツではおたふく風邪単独のワクチンは入手が難しく、代わりにMMR(麻しん、おたふく風邪、風疹)ワクチンの接種が行われます。

● 2歳までに大半の予防接種を終了

ドイツの予防接種スケジュールでは、2歳までにほとんどのワクチン接種が完了するようになっています。早い年齢で免疫を獲得し、地域全体として感染症を予防するのに役立っています。そのため、日本からドイツに来たばかりの子供が小児科を受診すると、ドイツの基準にのっとってあれも未接種これも未接種と指摘され、幼稚園や小学校の入園のために接種を勧められることがあります。

ドイツの小児予防接種(2歳未満)

ドイツでは含まれない予防接種

●日本脳炎

ドイツには、日本脳炎を媒介する蚊(Mücke)が生息していないため、日本脳炎の予防接種は行われていません。最近、オーストリアの製薬会社が製造する日本脳炎ワクチン(Ixiaro®)をドイツでも接種できるようになりました。日本脳炎は、日本のみならず東南アジア一帯において感染の危険があるため、アジアでの長期滞在を予定している子供は接種を考慮した方が良いかもしれません。

●BCGの接種

結核の予防接種であるBCGは、ドイツでは1975年以降行われていません。また、BCGワクチンの入手は実質的に困難です。その背景には、結核患者が多くないこと、そしてBCGの効果が疑問視されてきたことがあります。近年の研究で、感染リスクの高い子供にはBCG接種の予防効果があるという報告が多く出ており、WHO(世界保健機構)も欧州全体を結核の感染リスクの高い地域として警告を出しています。2012年にはドイツで約4200人の新規発症の結核患者が報告されています(2014年のロベルト・コッホ研究所の報告)。

欧州の人口10万人当たりの結核の罹患率

成人になってからの追加接種

● 破傷風は10年に一度

幼少時にDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)の3種混合を受けて以来、破傷風についてあまり気にしていない人も多いと思います。しかし、花壇での土いじり、サッカーでの怪我、自転車の転倒など、大人になってからも感染のリスクがある破傷風に対し、免疫を維持するには10年に一度の追加接種が必要です。

●B型肝炎の予防接種

かつてA型肝炎、B型肝炎の予防接種を受けた人も、時間の経過とともに抗体価(感染予防に必要な免疫のレベル)が下がってきます。A型肝炎ワクチンの予防効果は10年以上(から生涯にわたって)、B型肝炎ワクチンは3年以上と考えられています。B型肝炎はワクチンの追加接種により予防効果を維持できます。

初夏脳炎の予防接種

毎年、夏が近づくと話題になるのがマダニ(Zecke)に媒介されるウイルス感染症の初夏脳炎(略してFMSE)です。日本脳炎と似た症状や後遺症を引きおこします。ウイルスを保有している可能性のあるマダニが生息しているのは南ドイツ、スイス、オーストリア、さらにポーランドなどの東欧・中欧地域です。これらの地域での子供のキャンプ活動や森林内でのハイキングを予定する場合には、十分なゆとりをもって予防接種を検討しましょう。

 

留意点

● 母子健康手帳は大切な情報源

予防接種の指針が改定されることがあるため、子供の生年によって接種項目や回数が異なっている現状があります。日本の母子手帳には、予防接種の詳しい記録がなされています。子供の予防接種について相談する際は、必ず母子手帳を持参しましょう。

● ワクチンは薬局で購入

予防接種も多くの場合は医師の書いた処方箋を持って薬局で購入、その後に医師からそのワクチン接種を受けることになります。ワクチンの種類によっては医療施設に置いてあるものもあります。

● 生ワクチン接種後は4週間の間隔を

子供の麻しんやおたふく風邪の生ワクチン接種後4~6週間は、別のワクチン(不活化ワクチン、生ワクチンにかかわらず)の接種はできません。黄熱病の予防接種も生ワクチンです。複数の予防接種が必要な場合には、まず投与スケジュールについて医療機関と相談しましょう。

● 予防接種は義務ではありませんが

ドイツのSTIKOから推奨されている予防接種は、接種を義務付けられているわけではありません。しかし、ドイツの幼稚園への入園や、スポーツクラブでの活動に参加する際に、予防接種の証明書を求められることはあります。

● 予防接種のスケジュールは医師と相談を

例えば、B型肝炎は規定の回数の予防接種終了後4週間で十分な予防効果が確立されます。黄熱病は接種後10日後から予防効果があります。初夏脳炎ワクチンは1回目の接種後、早くて10日ほどで抗体の上昇がみられます。いずれにしても、翌日から予防効果がある予防接種はありません。

 

最終更新 Dienstag, 24 Mai 2016 12:17
 

ドイツの医療で戸惑わないために

この4月にドイツ赴任になりました。海外勤務は初めてです。ドイツで病気になった場合には、どのように診察を受けたらよいでしょうか。日本との違いはあるのでしょうか?

Point

  • 受診には疾病保険カードが必要。
  • 診察前に、まず電話予約。
  • 外来診察は開業医(Praxis)で。
  • 病院(Krankenhaus)は入院や高度な検査のため。
  • 夜間の急患は病院か大学病院の救急外来で。
  • 救急車を呼ぶときは電話112番へ。

疾病保険カード(Gesundheitskarte)を用意

● 疾病保険カード

日本の健康保健証に当たる電子カードです。診察に訪れた際、まず受付で提示します。この疾病保険カードには、被保険者の氏名、生年月日、性別、住所などの情報がICチップ内に記録されています。

● 公的疾病保険とは

ドイツの9割の人が法定保険である公的疾病保険(以下、公的保険)に加入しています。疾病保険組合である疾病金庫(Krankenkasse)によって運営されており、月々の保険料は収入に応じて高くなります。

● プライベート保険とは

一定額以上の収入がある場合(2016年:月収4687.50ユーロか、 年収5万6250ユーロ )、法定保険である公的保険の加入義務が解除され、よりサービスの充実した民間疾病保険会社の保険(以下、プライベート保険)に加入することができます。入院では1~2人個室が利用でき、部長や教授の診察を受けられます(契約内容による)。保険は略してPrivat(プリバート)と呼ばれます。

公的保険とプライベート保険

どの病院にいくべきか

ドイツの開業医と病院の関係

●開業医(Praxis)の役割

ドイツの外来診療は各専門科の開業医(男性はArzt、女性はÄrztin)が担っています。診察を受けるには予約が必要です。早く来た人が先に診察を受けられるわけではありません。予約なしでの受診は、相当長い待ち時間を覚悟しなければならないこともあります。開業医の中には、公的保険を受け付けていないところもあります。

●かかりつけ医となる家庭医の役割

公的保険には「かかりつけ医」とも言うべき「家庭医(Hausarzt)」という制度があります。普段の診療を担う医療機関の入口的な存在で、必要に応じて他科の開業専門医への紹介や、入院が必要なときに病院に連絡を取るという仕組みになっています。

●病院の役割

病院(Krankenhaus)は、主に入院患者や精密検査など高度な医療を扱う場所です。ドイツの病院を訪れると、日本のように外来患者が列を作って順番待ちをしている光景は見られません。退院後は通常、家庭医もしくは紹介元の開業医で経過観察が行われます。

●快適な(?)入院生活

入院治療は基本的に日本と同じです。一般に、入院期間はかなり短期間で、食事はドイツ食。日本のように看護師が親切にお世話をしてくれるわけではありません。あらかじめそういうものだと理解していれば、納得がいくでしょう。

診療費の支払いは?

公的保険の場合、診療内容が疾病保険組合の認めた範囲であれば、特に支払いはありません。プライベート保険の人は、後日送られてくる請求書の金額を指定口座に振込みます。その請求書と、支払いを示す書類をプライベート保険会社に送ることで、契約の規定に沿った額が本人に払い戻されます。

夜間・休日の救急外来

● どこへ行けば診てもらえるか?

夜間や休日の急病は、病院や大学病院(Uni-Klinik)の救急外来(Notfallambulanz)で診察を受けることができます。都市によっては医師会が開設している救急診療所(Notfallpraxis)も利用できます。疾病保険カードと、身分証明書(Personalausweis)またはパスポート(Reisepass)を持参しましょう。また、救急車で来院したものの、薬の処方のみで帰宅する場合の帰りのタクシー代も忘れずに。

● 救急車は「112」

救急車は、電話番号「112」で呼びます。ドイツの救急車には、患者搬送車両(Krankenwagen)と日本の救急車に近い車両(Rettungswagen)、医師も乗っている車両(Notarztwagen)の3種類があります。電話をする際は、①自分の名前、住所、電話番号、②何が問題か(例えば、腹痛は「Bauchschmerz」)、③医師の同乗が必要か、などを伝えるため、あらかじめ簡単なメモをしておくと良いでしょう。

ドイツの開業医と病院の関係

処方箋は医師が、薬は薬局で

● 処方箋(Rezept)

作用の強いものや服用の仕方に注意が必要な薬剤(Arzneimittel、Medikament)には、医師の処方箋が必要です。「医師の処方箋が必要な薬剤(Rezeptpflicht-Arzneimittel)」と言われます。処方箋なしに薬局(Apotheke)から直接購入できる薬は、OTC薬剤です。

● 薬代の支払い

公的保険の場合には、薬の金額によって一定の少額を支払います。プライベート保険の場合は、薬局で全額を支払い、その後、領収金額の印字と薬局の署名の入った処方箋(とレシート)を加入している疾病保険会社に送ります。契約の規定に則った形で払い戻しがなされます。

● 薬箱ごと薬瓶ごと

処方箋で購入した薬剤もそのまま薬箱もしくは薬瓶ごと渡されますので、事前に医師から指示された数の錠剤(カプセル剤)を取り出して服用します。薬箱の大きさには1箱中の錠(カプセル)数によって通常、数の少ない順にN1、N2、N3の3種類があります。

● ジェネリック医薬品の普及

ドイツではジェネリック医薬品(後発医薬品、Generika)が普及しています。公的保険では処方全体の75%、ジェネリック薬のある既存薬だけでみると、実に90%以上を占めています。公的保険でジェネリック薬があるにもかかわらずオリジナルブランドの薬剤を希望した場合、差額は自己負担となります。

トラブルを避けるヒント

● 検査や治療を理解していますか?

「何の説明も受けずに検査を受けた」「薬を処方されたが、何の薬か分からない」という話を耳にすることがあります。ドイツ語や英語がよく分からないときは、安易に勧められるれるままに「Ja(はい)」とは返事しないこと。良く分からないときは、尋ね直すようにしましょう。

最終更新 Dienstag, 19 April 2016 12:28
 

副鼻腔炎(蓄膿症)の多様な症状

最近、鼻が詰まることが多く、同時に顔の頬が痛く感じることがあります。自分は花粉症と思っていましたが、友人から蓄膿症ではないかと言われました。蓄膿症とはどんな病気でしょうか。

Point

  • 副鼻腔の炎症により膿(うみ)が溜まった状態。
  • 風邪、アレルギー性鼻炎、虫歯などが原因。
  • 鼻汁、鼻づまり、顔や頭の痛みが出現。
  • 疲労感、集中力低下の原因にも。
  • 風邪や鼻炎を悪化させないことが大切。
  • 治療は薬剤、鼻腔の洗浄、手術療法など。

副鼻腔炎はどんな病気?

●急性の副鼻腔炎とは
黄色の鼻汁・鼻づまり・顔の痛み、頭痛がみられる副鼻腔の粘膜の炎症のうち、1~2週間程度で治る一時的なものが「急性副鼻腔炎」です。多くは風邪のウイルスや細菌感染の後に続いて起こります。副鼻腔炎はドイツ語で「Sinusitis」、もしくは「Nasennebenhöhlenentzündung」という長い呼び名もあり、日本語の「副鼻腔炎」はこれを直訳したものです。

●慢性の副鼻腔炎と「蓄膿症」
急性の副鼻腔炎を繰り返し、副鼻腔の炎症が3カ月以上続くものが「慢性副鼻腔炎」です。そして、副鼻腔に膿(Eiter)が溜まった状態を「蓄膿症(Empyem)」といいます。

●副鼻腔炎の引き金は?
ウイルスや細菌の感染、アレルギー性鼻炎などが、副鼻腔炎の引き金となります。また、虫歯(特に副鼻腔と接する上の奥歯)が原因になることもあります。

副鼻腔炎をきたす要因

●アレルギー性鼻炎との関係
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎とは異なる病気です。しかし、鼻(鼻腔)と副鼻腔は、非常に細い自然孔(しぜんこう)でつながっており、この部分に炎症が波及すると、粘膜が腫れて、通り道がすぐにふさがってしまいます。そのため、アレルギー性鼻炎のある人は風邪から副鼻腔炎を起こしやすいとされています。

●顔面に8カ所ある副鼻腔
顔の下の広い範囲にまたがって位置する、左右4カ所、計8カ所の空洞が副鼻腔です。各々、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)と呼ばれます。副鼻腔の働きには、顔への外力を弱める、吸気の加湿、ろ過、声の共鳴作用、免疫と関係するというような諸説がありますが、あまりよく分かっていません。

副鼻腔炎の症状

●顔の痛み、頭痛、頭重
炎症のある副鼻腔によって異なる場所の痛みが生じます。例えば、頬や歯の痛み、目の周囲の痛み、額のあたりの痛み、頭重感です。

副鼻腔炎の位置と症状

●鼻汁と後鼻漏
ドロッとした粘調性の黄緑色の鼻汁(Nasensekret)が出ます。鼻腔の後ろから喉に流れる鼻汁(後鼻漏 こうびろう)は、しばしば痰(たん)として自覚されます。長引く咳の原因が後鼻漏であることもあります。

また、炎症による鼻腔の粘膜の腫れと鼻汁により、鼻づまり(verstopfte Nase)を生じます。口で呼吸するため、口内の乾燥や扁桃腺や咽頭の炎症を来たし、副鼻腔炎の治りを遅らせることもあります。これらはいびきの原因にもなり、長引くと睡眠時無呼吸(ドイツニュースダイジェスト1月22日発行1018号掲載)と関わってくることもあります。

●花粉症との違い
花粉症(Heuschnupfen)の場合はサラサラした鼻汁で、目のかゆみやくしゃみを伴うことが多いのに対し、副鼻腔炎では目のかゆみはなく、黄色の粘度の高い鼻汁が出るのが特徴的です。花粉症が副鼻腔炎の引き金になることもあります。

花粉症との相違点

●味覚と臭いの変化、口臭
鼻腔の粘膜の炎症と鼻づまりから、食べ物の味が変化したり、臭いが分からなくなることも。悪臭をともなった鼻汁のため、口内に広がる嫌な臭いや、生臭い口臭(Mundgeruch)を自覚することもあります。

●鼻ポリープ(Nasenpolyp)
慢性副鼻腔炎の5〜10人に一人にみられます。鼻腔粘膜の一部がポリープ状に腫大した良性のできもので、鼻茸(はなたけ)ともいいます。いくら鼻をかんでも改善しない鼻づまりの原因になります。

●疲労感や集中力の低下
慢性副鼻腔炎を放置すると、慢性の頭重感、疲労、集中力の低下をともない、日常の生活の質に影響が出る こともあります。

●中耳炎と髄膜炎
さらに炎症が周囲に波及した場合、中耳炎や目の炎症を来たしたり、髄膜炎の原因になることもあります。

副鼻腔炎の診断

●耳鼻科による検査
副鼻腔炎の専門科は耳鼻咽喉科です。鼻鏡などで鼻腔粘膜の変化を調べたり、鼻からの分泌物から原因となっている細菌の種類を調べます。アレルギー性鼻炎が疑われる場合には、原因となるアレルゲン物質の検査もします。

●放射線科での検査
レントゲン写真(副鼻腔単純X線検査)では、骨で囲まれた部位の病変の診断をするのに限界があるため、重症例や合併症が疑われる場合には、より多くの情報が得られるCTやMRI(ドイツではMRT)検査による画像診断が行われます。

年齢層0~5歳の副鼻腔炎患者の鼻汁からの検出菌

副鼻腔炎の治療

●薬による治療
軽症の急性副鼻腔炎の場合は、ウイルス感染が主であるため抗菌薬は用いられませんが、中等症以上ではウイルス感染の後につづく細菌感染が原因であることが多く、副鼻腔の粘膜を正常化する薬とともに抗菌薬が用いられます(「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」より)。頭や顔の痛みに対しては、鎮痛解熱薬が用いられます。アレルギー性鼻炎の人はその治療も必要です。

●鼻の吸引・洗浄
鼻腔内に溜まった鼻汁を吸引。または、鼻から管を入れて鼻腔や上顎洞も洗浄します。

●手術による治療
薬で良くならない場合には、内視鏡を使った副鼻腔の手術(ESS)が行われ、副鼻腔内の肥厚した粘膜や溜まった膿を取り除きます。カビの一種である真菌(Pilz)が副鼻腔炎の原因である場合にも手術が勧められています。

●日常で気をつけること
風邪や鼻炎を症状が軽いからといって放置しないことが大切です。睡眠不足、疲労、過度のストレスは、感染に対しての免疫力を低下させますので、規則正しい生活を心がけてください。鼻汁はズルズルとすすらずに、小まめにかむよう心がけましょう。ただし、子供の場合は、あまり勢いよく鼻をかみ過ぎると、耳管に鼻腔内の細菌が入って中耳炎の原因にもなりますのでご注意ください。副鼻腔炎を繰り返す人には、「鼻うがい」も効果的です。

日常生活上の留意点

最終更新 Dienstag, 22 März 2016 15:45
 

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