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ドイツ女性参政権行使100年 - 21世紀の現在、女性は社会に何を求めるのか?

ドイツ女性参政権行使100年
21世紀の現在、女性は社会に何を求めるのか?

1919年の国民議会選挙で議員に選ばれた、社会民主党の女性たち 1919年の国民議会選挙で議員に選ばれた、社会民主党の女性たち

2019年1月19日、ドイツで初めて女性が選挙に参加してからちょうど100年を迎えた……。ドイツの顔とも言えるメルケル首相をはじめ、女性の影響力は大きいと感じられる一方で、あらゆる場面で男女間に格差があるのも事実だ。今年、ベルリンがドイツで初めて3月8日の「国際女性デー」を祝日に制定したことを機に、女性の権利について考える特集を組んだ。男女平等を実現させるための第一歩となった女性参政権獲得の歴史を振り返り、現代のドイツにおいて女性が求める権利を知ることで、さまざまな人々の間にある格差がまた少しずつ縮まっていくことを信じて。(Text:編集部)

ドイツで女性が参政権を得るまで ─ 知っておくべき5つのポイント

1世界的にみる女性参政権獲得への動き

女性参政権運動が始まるのは、18世紀のフランスから。この動きを皮切りに、19世紀に入ると各国で労働運動や社会主義運動と結びついた活動が本格化した。そして1893年に世界で初めて女性参政権が認められたのが、ジャシンダ・アーダーン首相が産休を取ったことでも話題になったニュージーランドだ。次いで1902年にはオーストラリア、1906年のフィンランド、1917年のロシア、1918年のカナダ・ドイツ・英国(条件あり※)と続く。女性の政治への参入を世界で初めて主張したフランスにおける女性参政権の実現は1945年。ちなみに、日本ではフランスと同じく第二次世界大戦後の1945年に女性参政権が認められた。

※1918年に英国で女性参政権が認められたのは30歳以上で、世帯主、世帯主の妻などいくつか設けられた条件に当てはまる人に限られていた。21歳以上の全女性に権利が与えられたのは1928年になってから。

2ドイツで初めて男女平等を訴えた人々

ドイツにおける女性運動の感心ごとは、もっぱら生活の向上や職業・労働、教育についてだった。フランスの二月革命の波及により、1848年にはドイツで三月革命が起こる。これを契機に文筆家で女性運動のパイオニアでもあるルイーゼ=オットー・ペータースが「女性新聞(Frauen Zeitung)」を発行し、女性の労働する権利を訴えた。1865年になると、友人で同じく女性の権利を唱える教師でジャーナリストのアウグステ・シュミット 、ドイツ社会民主党(SPD)の創設者の1人でもあるアウグスト・ベーベルとともにドイツで最初の女性協会「全ドイツ女性協会(Allgemeine Deutcher Frauenverein / ADF)」を発足。 ADFはのちにドイツの有力な女性団体へと成長し、女性の雇用機会の増大、職業教育、既婚女性の権利の保障など、さまざまな権利を訴え続けた。

3女性参政権に一役買った女性たち

ルイーゼ=オットー・ペータースルイーゼ=オットー・ペータース
Louise Otto-Peters (1819–1895)
文筆家、ジャーナリストとして活躍。ドイツの女性運動の先駆けとなる存在。1865年にライプツィヒにて「全ドイツ女性協会(ADF)」を設立し、代表を務める。女性が教育を受ける権利や雇用の権利を訴えた。

アウグステ・シュミットアウグステ・シュミット
Auguste Schmidt (1833–1902)
教育者、ジャーナリスト。ルイーゼ=オットー・ペータースとともにADFを設立した。1894年には「ドイツ女性協会同盟(BDF)」の初代代表に就任。クララ・ツェトキンの教師を務めていたことも。

ミナ・カウアーミナ・カウアー
Minna Cauer (1841–1922)
教育者、ジャーナリストとして、「女性福祉協会」や「ドイツ女性参政権協会」などの女性団体を設立し、女性の権利を訴え続けた。ベルリンで初となる女性の大学進学準備のための教育機関を設立した。

クララ・ツェトキンクララ・ツェトキン
Clara Zetkin (1857–1933)
活動家として、女性解放運動を主導。1891年にはSPDの女性向け新聞「平等(Die Gleichheit)」の編集者となり、1907年に新設された党婦人部長に就任した。ドイツにおける国際女性デーの提唱者でもある。

4女性の権利を唱えた団体

1865年に設立された全ドイツ女性協会(ADF)を皮切りに、ドイツでは女性の権利を訴えるさまざまな団体が結成された。なかでも戦前の欧州で最も大規模で影響力を持っていたのが、1894年3月28、29日に女性の公民権フェミニスト運動の包括的組織として設立された「ドイツ女性協会同盟(Bund Deutscher Frauenvereine / BDF)」だった。同協会は家族や結婚、教育への平等な権利、男性と同等の政治的権利を唱え続け、ナチスが政権を掌握する1933年まで存続した。そのほかにも、中絶を受ける権利など女性の権利全般を唱えた 「女性福祉協会(Frauenwohl)」(1888年設立)や、女性参政権を求める「ドイツ女性参政権協会(Deutschen Verein für Frauenstimmrecht)」(1902年設立)などの団体が存在した。

5現在のドイツ女性議員の割合

ドイツの首相を13年以上務めているアンゲラ・メルケル氏をはじめ、女性議員が活躍している印象が強いドイツの政界。しかし、2018年時点におけるドイツ連邦議会議員の合計709人に対して、女性議員はわずか30%ほどの219人しかいないのが現状だ。政党別に見てみると女性議員の割合が最も少ないのが極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の11%で、最も多いのが「同盟90 / 緑の党(Bündnis 90 / Die Grünen)」の58%となる。また、2013年に比べ、女性議員の数は7%減少しているという。ドイツで初めて女性参政権を行使した1919年から100年が経った現在でも、本当の意味での男女平等は実現されていない。

メルケル首相とクランプ=カレンバウアーCDU党首メルケル首相とクランプ=カレンバウアーCDU党首

ドイツの主な女性参政権行使までの道のり

GESCHICHTE DES FRAUENWAHLRECHTS
1848年 ドイツで三月革命が起こる。
1865年 アウグステ・シュミット、ルイーゼ=オットー・ペータース、アウグスト・ベーベルが 「全ドイツ女性協会(ADF)」を結成。
1871年 ドイツ帝国成立。帝国議会にて25歳以上の男性のみが選挙権を得る。
1888年 ミナ・カウアーが 「女性福祉協会」を設立。女性の権利全般を要求する。
1891年 エアフルト党大会で、SPDが党プログラムに女性の参政権の要求を取り入れる。
1894年 女性運動の包括的な組織として「ドイツ女性協会同盟(BDF)」が設立される。
1902年 ミナ・カウアーら女性活動家が「ドイツ女性参政権協会」を設立。
1904年 BDFが主催する「国際女性会議」がベルリンで開催され、25カ国1000人以上が集まる。男女共同参画に注力する国際的な非政府組織「国際婦人参政権同盟(IWSA)」が設立される。
1907年 シュトゥットガルトで、第一回目となる「国際社会主義女性会議」が開催される。
1908年 結社法により結社の自由を制約する法律が廃止されたことで、女性の政治団体や政党への参加が許可される。
1911年 クララ・ツェトキンの提唱により初めて「国際女性デー」が祝われる。
1917年 ドイツ皇帝が選挙改革を進めるなか、女性選挙権の要求が盛り込まれていないことが判明。それに伴い女性活動家たちが12月にプロイセンの州議会に選挙権に関する宣言を渡す。
1918年 10月に58人もの女性団体の参加者がバーデン内閣(ドイツ帝国最後の内閣)に対し、合同書簡で「女性の投票意欲は同等である」と要求。ベルリンには数千人が集まり、女性投票権の権利を主張した。
  ドイツ革命により11月9日にドイツ帝国が崩壊し、のちにヴァイマル共和国の首相に就任するフィリップ・シャイデマンが共和国誕生を宣言。その3日後に男女普通選挙権の導入が決定した。
1919年 1月19日の憲法制定議会選挙は、初めて女性有権者が出席した選挙となる。女性有権者の80%以上が投票し、423人の議員のうち37人の女性議員が国会に参加した。

参考記事、ウェブサイト:Frauen macht Politik「Geschichte des Frauenwahlrechts in Deutschland」、Digitales Deutsches Frauenarchiv、NRD .de「Vor 100 Jahre n: Frauenerkämpfen das Wahlr echt」、世界大百科事典

最終更新 Mittwoch, 01 Juli 2020 14:22
 

ドイツ女性参政権行使100年 - ドイツの女性ムーブメント

ドイツ女性参政権行使100年
21世紀の現在、女性は社会に何を求めるのか?

2019年1月19日、ドイツで初めて女性が選挙に参加してからちょうど100年を迎えた……。ドイツの顔とも言えるメルケル首相をはじめ、女性の影響力は大きいと感じられる一方で、あらゆる場面で男女間に格差があるのも事実だ。今年、ベルリンがドイツで初めて3月8日の「国際女性デー」を祝日に制定したことを機に、女性の権利について考える特集を組んだ。男女平等を実現させるための第一歩となった女性参政権獲得の歴史を振り返り、現代のドイツにおいて女性が求める権利を知ることで、さまざまな人々の間にある格差がまた少しずつ縮まっていくことを信じて。(Text:編集部)

次の100年で何が変わるのか?最近ホットなドイツの女性ムーブメント

現代のドイツでは男女平等が実現している?さまざまなニュースや統計によると、残念ながらその道はまだまだ険しいようだ。女性参政権が行使されて100年が経ってもなお、女性の権利の主張は続いており、新たな広がりを見せている。そんなドイツの女性を取り巻く現状と、世界的な女性ムーブメントがドイツでどのように盛り上がったのかをまとめた。

ドイツにもまだある「ガラスの天井*」

*「ガラスの天井」とは、能力があるにも関わらず昇進を阻む見えない制限のたとえ。特に男性が優遇され女性が要職につけない状態のことを指し、1980年代から使われ始めた

一番身近な男女格差といえば、職場や家庭にあると感じている人が多いのではないだろうか。それは現代ドイツも決して例外ではなく、この2つは表裏一体の関係にある。ドイツ連邦政府の2017年の報告によると、子育て中の働く女性は男性よりも毎日平均87分も家事や育児、介護に時間を費やしているという。また、そういった無償の仕事を通算すると、2013年の統計では年間10億ユーロの生産価値があるという結果に。これは製造業全体よりも多い数値だ。また、ドイツのIW経済研究所の調査では、女性が昇進の機会を逃すのは、労働時間が男性よりも少ないことを理由の1つに挙げている。その裏には、先に挙げたように女性が家事や育児に時間を費やしているという前提があるという。管理職につく女性の4人に1人がパートタイムで勤務しており、管理職につく男性よりも労働時間が3〜4時間短く、それもまた、さらなる昇進を阻む理由になっているのだ。

企業が女性のキャリアをサポートするために会社の制度を改善したり、個人レベルでパートナーと完全に家事と育児を分担するなど、さまざまな試みがメディアでたびたび取り上げられているが、それは一部の例に過ぎない。現実と理想の間を埋めるには、まだまだ課題が多そうだ。

参考記事:Welt「Führungs-Frauen machenvielzuiel im Haushalt」(2017年6月29日)、Tiroler Tageszeitung Onlineausgabe「Debatte um Mann im Haushalt: Fr uentäglich 87 Minuten länger aktiv」(2019年1月18日)。

統計

女性は男性より21.5%収入が低い

1時間当たりの平均収入を比べると、EU全体では女性は男性よりも16.2%低く、ドイツはエストニア(25.3%)、チェコ共和国(21.8%)に次いで3番目に格差がある。特に、管理職ではその差が大きい。

Quelle:Eurostat / Gender Pay Gap:Wie vielwenigerver dienen Frauenals Männer?, 2016

管理職につく女性の割合は29%

ドイツは経済大国でありながら、企業内の幹部として働く女性の割合はEU全体平均の34%を下回る結果に。ちなみに1位はラトヴィアで46%、最下位はルクセンブルクの19%。

Quelle:Eurostat / Führungskr äfte, 2017

毎日子どもの世話をする女性88%、男性64%

25〜49歳の男女に毎日子どもの世話をするかどうかを調査した結果、ドイツでは20%以上も差があることが明らかに。EU内ではスウェーデンの格差が最小で女性96%、男性90%。

Quelle:Eurofound / Tägliche Kinderbetreuung und-erziehung, 2016

毎日料理や家事をする女性72%、男性29%

18歳以上の男女で毎日料理や家事をする割合は、なんとドイツでは40%以上も差があるという結果になった。子育てに熱心なスウェーデンでも女性74%、男性56%と開きがある。

Quelle:Eurofound / Tägliche Hausarbeit und Kochen, 2016

旧東ドイツでは男女平等が実現していた?

1980年代の東ドイツで働く女性1980年代の東ドイツで働く女性

社会主義国で自由のない国だったと思われがちな旧東ドイツだが、意外なことに現在のドイツよりも女性が経済的に自立しており、男女格差が少なかった。その背景には女性にも同等の教育機会が確保され、仕事と育児を両立させるためにさまざまな政策が行われていたことがある。今日でも、東部で組織のトップにつく女性の割合は29%で西部の24%よりも多い。また、男女の収入格差においても、2017年の統計によると東部では男女で7%しか違わないのに対し、西部では22%となっており大きな差があるという。

参考記事:Berliner Zeitung「Gehalt und Aufstiegschancen Warum funktioniert Gleichberechtigung im Osten besser?」(2018年10月14日)

ドイツではどう盛り上がってる?
3つの女性ムーブメント

2019年もドイツ各地で開催Women's March

ウィメンズ・マーチとは

2017年1月20日に行われたトランプ米大統領の就任式の翌日、首都ワシントンで50万人が「ウィメンズ・マーチ(女性の行進)」に参加した。ことの発端は、2016年11月にトランプ大統領が選出された直後、選挙キャンペーン中から女性蔑視の発言を繰り返してきた同大統領に抗議するため、2人の米国人女性がフェイスブック上でデモを呼びかけたこと。デモのドレスコードは、ピンク色の猫耳ニット帽(プッシーハット)。プッシーとは「猫」のほか「女性器」のことも指す。トランプ大統領が、スターならプッシー(女性器)を触ることだってできる、と発言したことに対する抗議の意味が込められている。デモには女性の権利を訴える男性や、歌手のマドンナや俳優のエマ・ワトソンをはじめとする多くの著名人も参加した。

同日、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの主要都市を含む米国全土のほか、ロンドン、ベルリン、パリなど、世界各地でも同様のデモが開催された。主催者によると、673カ所でおよそ500万人もの人が集まったという。現在ウィメンズ・マーチはNPO法人となり、毎年1月と国際女性デーを中心に抗議活動を続けている。

ドイツのウィメンズ・マーチ

2019年1月19日、3年目を迎えたウィメンズ・マーチ。米国各都市はもちろんのこと、ドイツ国内ではベルリン、フランクフルト、ミュンヘンなどで開催された。この日は、ドイツで女性参政権が行使されて100周年という節目でもあった。

ベルリンのウィメンズ・マーチでは「Frauenrechte sind Menschenrechte!(女性の権利は人間の権利!)」をモットーに、トランプ大統領への批判は大きなテーマにはなっていなかった。デモにはLGBTsや男性も含めて数千人が参加し、「大学教授の女性の割合は24.1%」や「本物の男性はフェミニストだ」など、女性を取り巻く現状やそれぞれの思いを書いたプラカードが掲げられた。また、フランクフルトのウィメンズ・マーチには約1200人が参加。女性参政権の記念日であることを踏まえ、発起人の1人が「今、私たちはほかの女性の権利のために戦い続けなければならない」とスピーチで訴えている。中絶に関する自己決定権、LGBTsの権利、労働者の権利……など、今やさまざまな基本的な権利を求めることがウィメンズ・マーチのアクションの一部になっている。そういったテーマの広がりが、ドイツで賛同者を増やした理由にもなっているのだろう。

参考記事:ハフポスト日本版「『これが民主主義のあるべき姿』全米370カ所で反トランプの"姉妹デモ"が発生」(2017年1月22日)、ハフポスト日本版「反トランプ『ウィメンズ・マーチ』:『女性の権利』のための長い闘い −大西睦子」(2017年2月5日)、Berliner Zeitung「Women's March Für mehr sexuelle Selbstbestimmung und gegen Diskriminierung」(2019年1月21日)、Frankfurter Neue Presse「Das war der zweite "Women's March" in Frankfurt」(2019年1月21日)、WOMEN’S MARCH 公式サイト:https://womensmarch.com/

ウィメンズ・マーチ2019年1月19日にベルリンで行われたウィメンズ・マーチ

ドイツでの成果はいまいち?#MeToo

#MeTooとは

ツイッターなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)で広まったハッシュタグで、過去に受けたセクシュアルハラスメントや性的暴力をSNSでシェアし、問題の深刻さを訴えるムーブメントのこと。2017年10月に映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラや暴行被害について、ニューヨークタイムズ紙が報道し、同氏の被害者が何人も名乗りを上げた。その後、米国人俳優のアリッサ・ミラノが、性的被害を受けたことがある人は経験をシェアしよう、と#MeTooのハッシュタグをつけてツイッターで呼びかけたのだ。そのアクションは瞬く間に世界中に広がり、多数の著名人が告発されるなど議論を巻き起こした。

ドイツの#MeToo

#MeToo ムーブメントが始まってちょうど1年後の2018年10月に、ドイツの週刊誌シュピーゲル紙が特集号「#frauenland」を発行。副題は「女性参政権から100年、#MeTooから1年―ドイツはどうモダンなのか?」。メルケル首相やドイツ人俳優のザンドラ・ヒュラーなどの12人の女性のポートレートが起用され、12種類の表紙で販売された。同誌では政治や経済だけでなく、育児や家事の問題、男女平等化が進むスウェーデンの紹介など、さまざまなテーマが取り上げられている。

この特集に合わせ、オンライン版シュピーゲルでは、#MeTooの議論が何をもたらしたか、をテーマに読者5000人以上に調査した結果を公開。その報告によると、半分の回答者は#MeTooで具体的に何か改善されたわけではないと考えていることが分かった。興味深いことに、女性よりも男性の方が#MeTooについて意見を交わしていることも明らかに。#MeTooをばかばかしいものとみなす人がいると指摘する女性読者がいる一方で、特に男性がハラスメントに対して敏感という意見もあった。また、これまでも性的な被害に対して抵抗してきたという読者からは、#MeTooのムーブメントによって自分の行いが正しかったと分かり気持ちが楽になった、というコメントも。とはいえ、調査結果が物語るように期待されるような大きな変化はなく、ドイツの#MeTooの熱は冷めつつあるようだ。

参考記事:ハフポスト日本版「セクハラや性暴力を告発する『#Me Too(私も)』 始まったのは10年前の黒人女性の"勇気"から。」(2017年10月19日)、Spiegel ONLINE「Hat #Me Too für Sie schonet wasver ändert?」(2018年10月11日)

シュピーゲル紙
「#frauenland」をテーマに掲げたシュピーゲル紙

ベルリンがドイツ初の祝日に制定国際女性デー

ベルリンの国際女性デー

2019年1月、ベルリンがドイツで初めて3月8日「国際女性デー」を祝日にすることを定め、来たる3月からさっそく施行されることになった。そもそも、ベルリンの祝日の合計数がほかの州に比べて少なかったため、長らく祝日制定については議論されていた。国際女性デーのほかにも、3月18日のドイツ三月革命の日やベルリンの壁が崩壊した11月9日なども候補に挙がっていたという。

昨年11月には、ベルリンのミュラー市長(SPD)は国際女性デーを祝日とすることを支持する意思を表明していた。特に、連立パートナーである緑の党支部長のニーナ・シュタールは女性の権利と男女平等への取り組みは同党のDNAだと述べ、この決定を非常に快く受け入れた。また、彼女は「平等権が達成されない限り、私たち緑の党は3月8日をお祝いするだけでなく、むしろ社会のためにデモを行い闘い続けます」と述べ、この祝日が政治的であることを重要だとした。また、SPDのレイド・サレーも、この祝日がすべてのジェンダー、バックグラウンド、国籍の人の平等の権利を尊重するというベルリンの精神に合致するものだ、とコメント。3月8日は各地でデモが予定されており、さらに5月8日にベルリンと欧州の各都市で、「Women for Europe – Europe for Women」と題されたウィメンズ・マーチと女性のためのフェスティバルが開催されるそう。

参考記事:DW「Berlin set to make International Women's Day a public holiday」(2018年11月25日)、WELT「Berlin erklärt 8. Märzzum geset zlichen Feier tag」(2019年1月24日)

最終更新 Sonntag, 08 März 2020 04:50
 

ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?ドイツ在住の日独バリスタに聞く

ドイツ在住の日独バリスタに聞いた ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?

ドイツの食と言えば、ビール・ソーセージ・じゃがいもの「三種の神器」が思いつく。ところが実際にドイツに住んでみると、街中にカフェが多く、コーヒーがとても身近な飲み物であることに気づいたという人もきっと多いはず。そんなドイツのコーヒー事情について、デュッセルドルフで活躍する日独のバリスタ2人に話を聞いた。さあ、ドイツでおいしいコーヒーを探す旅に出かけよう。(Text:編集部) 

参考資料:『COFFEE BOOK コーヒーの基礎知識・バリスタテクニック・100のレシピ』(誠文堂新光社)

ドイツでコーヒーが愛される理由

ドイツでのコーヒーの人気はさまざまな統計によって明らかになっている。なんとコーヒーの1人当たりの年間消費量は、ビールのそれを上回っているのだ。では、コーヒーがドイツで愛される背景には何があるのだろうか。それは歴史をひも解くことで見えてくる。

そもそも欧州にコーヒーがやってきたのは、17世紀頃だった。すでにコーヒーで貿易していたアラブ人たちがインドに種子を密輸し、さらにオランダ人貿易商がそれを国に持ち帰り移植したのが始まり。18世紀初頭になると、オランダに加えてフランスや英国が南米の植民地でコーヒー栽培をスタートさせる。ドイツでは、フリードリヒ大王が早くからコーヒー商売に目をつけ、国営の焙煎所でしか焙煎を許可しないなど、厳しく取り締まられていたそう。

コーヒーがドイツの市民にも飲まれるようになったのは、フリードリヒ大王亡き後の産業革命の時代。工場では1日中ストーブに「コーヒースープ」が火にかけられ、人々の体を温め、集中力や活力を高めたといわれている。その後、コーヒーはおいしく飲みやすくなるようにその都度改良され、市民の人気を獲得していった。また、第二次世界大戦後、再びコーヒーを飲めるようになったことは豊かさの証であり、コーヒーはドイツ人にとって戦後復興のシンボルでもある。

参考:ドイツコーヒー協会「Deutschland Wird Zum Kaffeeland」

  • ドイツ人は1人当たり年間 162ℓのコーヒーを飲む。
    コーヒーを飲む人のうち、毎日何度も飲むが 57.1%
    毎日飲むが 24.6%
    週に何度か飲むが 10.0%

    Quelle: Tchibo, brand eins Wissen und Statista / Kaffee in Zahlen

  • ドイツ国内のコーヒー1杯の平均価格は 1.91ユーロ
    スイスの 3.25ユーロに比べて1ユーロ以上も安い

    Quelle: Tchibo, brand eins Wissen und Statista / Kaffee in Zahlen

  • ドイツ人は1人当たり年間 6.65㎏ のコーヒーを 自宅で消費する。
    欧米諸国中では 8位、1位はフィンランドの 10.35㎏

    Quelle: Das Statistik-Portal / Wo die größten Kaffeeliebhaber zuhause sind

日独バリスタ対談日本もドイツもコーヒーが「熱い」!

若松さん(左)と、ピーターソンさん

  • 若松信孝さん(わかまつのぶたか)
    デュッセルドルフ在住の日本人バリスタ。ドイツでコーヒーに目覚め、ラテアートを独学で学び始める。ラテアートの大会へ出場経験も。Die Kaffeeにメインバリスタとして勤務。
    Instagram:@barista_nobi
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  • カイ・ピーターソンさん
    デュッセルドルフ在住のドイツ人バリスタ。東京のスペシャリティコーヒー専門店で働き、ハンドドリップを学ぶ。Copenhagen Coffee Labに店長として勤務。
    Instagram:@kai_rista
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日独のコーヒーの違い

  • 日本
    ● ハンドドリップが主流
    ● お客さんが新しいものが好きな傾向に
    ● カフェの敷居が高い ハンドドリップ
  • ドイツ
    ● エスプレッソマシンが主流
    ● お客さんがストレートに意見を言う傾向
    ● カフェが身近な存在 エスプレッソマシン

いまさら聞けないコーヒーのこと

Q:カフェラテとラテマキアートの違いは?
A:スチームミルクかミルクフォーム、または両方が入っているなど、その組み合わせによって名称が変わる。また、店によって配分も異なる。

コーヒー

Q:最近よく聞くスペシャリティコーヒーとは?
A:原産国や生産者はもちろんのこと、種子の状態からカップまでのすべての段階で徹底した管理がなされ、厳選された豆だけが使われた最高品質のコーヒーのこと。
参考:日本スペシャリティコーヒー協会ホームページ

Q:軟水と硬水で味が変わるのは本当?
A: 硬水のドイツでは軟水の日本と比べて、 コーヒーの味がとげとげしく感じられる 傾向に。硬水の場合は豆を細かく挽い た方が良い。ドイツで軟水を使いたい場合は、市販の軟水(Volvicなど)を使用 するのがおすすめ。


ドイツでバリスタとして働く若松さんとピーターソンさん。やはりドイツではコーヒーが身近な飲み物だと感じている。

ピーターソンさん(以下、P) 特にハンブルクは港があるので昔からコーヒーが人気で、博物館もある。ほかにもウィーンのコーヒー文化や第二次世界大戦後にイタリアから移民労働者がたくさん来たり、いろいろな影響がありそう。

若松さん(以下、W) お店のお客さんが言ってたんだけど、朝起きて飲むコーヒーは力の源だったり、友だちと一緒にリラックスするときに飲んだり、生活になくてはならないものだと。日本で言うと、緑茶のような存在なのかな。カイくん(ピーターソンさん)はいつからコーヒーを飲むようになったの?

P 17歳の頃、学校の食堂やキオスクで飲むようになったのが始まり。でも、そのときは全然こだわりとかがなくて……。

W 自分も日本ではコンビニで缶コーヒーを飲んでいたくらいで、本格的に飲み始めたのは欧州に来てから。日本のカフェのコーヒーは高いから、敷居が高いと感じる人が多い印象だね。

P 日本のカフェで働いていたとき、日本人の方がドイツ人よりもこだわりが強いと思った。コーヒーの質だけじゃなくて見た目やサービスも大事で、スタッフのトレーニングも厳しかった。ドイツのおもしろいところは、お客さんが厳しい(笑)。いつもと違う味、とか自分の意見を言うんだよね。

W ああ、それすごい分かる! 日本で「おいしい」と言われるとお世辞かなって思うんだけど、ドイツでは逆においしくないものはおいしくないとはっきり言ってくるから、「おいしい」は本当なんだと思う。

P 僕ははっきり意見はしないけど、コーヒー豆の生産国や焙煎方法についてバリスタに聞くことはある。気になる焙煎所とかスペシャリティコーヒーの生産者を調べておいて、外国を旅行したときに実際に訪ねることも。

W 本当によく勉強してるね。今度バリスタ仲間でカッピング(コーヒーのテイスティングのこと)をしたいと思っているんだけど……

若松さんとピーターソンさん対談中

コーヒーへの愛が止まらないお二人。そもそもバリスタになったきっかけとは。

W 日本でバーテンダーをしていた20代後半の頃、初めての海外旅行でドイツに。カフェやレストランをまわるうちに、日本とは違う時間の流れ方やサービスの仕方に衝撃を受けてね。それで、ワーキングホリデーでデュッセルドルフに来たんだ。当時働いていたカフェでラテアートというものを知り、夢中になったのが最初のきっかけかな。

渡独して2年目に、東日本大震災が発生。津波の映像を見て、とてもショックだった。ちょうどその年に、なでしこジャパンがW杯で優勝したのを覚えてる?日本を元気づけた彼女たちを見て、自分もいつかドイツで認められるバリスタになって、力の源であるコーヒーを被災地の人に届けたい。そう決意して、バリスタの資格を取得したんだ。その後、今の職場のメインバリスタとして働きはじめて5年目になるよ。

P 僕は学生時代にカフェでバイトしていたんだけど、本当に興味が出てきたのは日本に留学したときから。留学中も東京のカフェで働いてた。始めたばかりで友だちがいなかったとき、いろいろなカフェの人がお店に来てくれて、自分が休日のときは逆にその人たちのお店に行くようになったんだ。いろいろなコーヒーやバリスタと出会って、コミュニティーもどんどん広がったよ。  

どうせ働くなら、人を幸せにする仕事をしたいと思っていて。お客さんが仕事に行く前にカフェでポジティブな気分になってもらいたいし、自分自身も雰囲気のいいところで働きたい。コーヒーよりも人が好きなんだよね。

W デュッセルドルフやケルンにも同じ大会に出場しているバリスタが何人もいて、みんな顔なじみ。ベルリンやミュンスターにもいいバリスタがいるね。

P うんうん。僕たち2人もそうだけど、敵というよりもみんな仲間。

W そうだね。大会ではまだ結果が出せていないけど、いつもほかの出場者から刺激をもらってる。

ラテアート 若松さん 若松さんがラテアートの大会で描いたラテアート3点。白鳥の親子(右下)のモチーフは子ども連れのお客さんに出すと喜ばれる、と言う若松さん

コーヒーで誰かを幸せにしたい、という気持ちはお二人の共通するところ。一方で、若松さんはラテアート、ピーターソンさんはハンドドリップが得意だ。

W ドイツのカフェはエスプレッソマシンが主流だけど、日本はフィルターコーヒーが人気だね。このフィルターコーヒーがメインなのが、米国から始まったコーヒーの「サード・ウェーブ」。農園や焙煎の違いまでこだわり抜き、丁寧にハンドドリップで入れる。ドイツでも部分的にその波が来ているけど、日本ほどではないかな。スターバックスが流行した「セカンド・ウェーブ」の時代は、深煎りのコーヒーにミルクを注ぐタイプ。それに対して、サード・ウェーブは比較的浅煎りのものが多いよね。

P 浅煎りだから、酸味が出やすい。よくドイツにも日本にも酸味が苦手という人がいるよね。焙煎や淹れ方を間違うと嫌な酸味が出るんだけど、それは僕も好きじゃない。本当にいい酸味というのは、フルーツティーとかジュースみたいな、すごく甘くて香りも強い。酸味が好きじゃない人にも、ちゃんとしたコーヒーを試してもらいたいな。特に日本人は新しいものが好きだし(笑)。

W エスプレッソも本当においしいものは、ドライフルーツにチョコがついたような感じで、デザートを食べたような余韻が残る。酸味=酸っぱいではない、というのはバリスタとして伝えたいことだね。

P それに、バリスタの仕事はコミュニケーションも大事。コーヒーは苦くて濃い、と思っている人もいるから、何も言わずにフィルターコーヒーを出すと「酸っぱい!」というのが第一印象になってしまう。でも、最初に「これはベリー系の甘味がありますよ」と説明すれば、第一印象は全然違うものになる。

W 道しるべをあげるような感じかな。自分の場合はラテアートを楽しみに来てくれる人もいる。忙しいときでも、一人ひとりがその人の一杯を楽しんで帰ってもらえるように「おいしくな~れおいしくな~れ」といつも頭の中で唱えるようにしてる。

P コーヒーの味をつくるのは、カップの中とお客 さんの頭の中だと思う。バリスタに自信があるかどうかも大切で、すごく失礼なバリスタだったらコーヒーもおいしくないはず。プロとして、技術とコミュニケーションの二つをうまく使っていきたいな。

W ちょっとしたお客さんへの気配りとかも、カイくんはきっと日本で学んできたんだろうね。ちなみに「フォース・ウェーブ」が2018年にすでに来ているという噂。特定のバリスタが抽出したコーヒーを飲みたい、というニッチなところまで来ているそう。

ピーターソンさん ハンドドリップ 豆から湯量までを慎重に計量しながら丁寧にハンドドリップをするピーターソンさん。コーヒーを入れる数分間はとにかく集中するとのこと

その後、ピーターソンさんのハンドドリップで、いくつかコーヒーを試すことに。

P 僕は結構香りが強いアフリカ系が好きで、これはケニアの豆でレッドベリー系の香り。

W うーん、フルーティー!紅茶のようだね。

P こっちはコスタリカの豆。うちのお店が直接取引しているところだから、生産プロセスもすごくこだわって生産されてる。(飲みながら)ケニアよりも味がダイレクトな感じ。

W あ、本当だ。甘味が強いね。なかなか日本人以外には伝わらないんだけど、ブラジルの豆って、たまにあんこのような甘味を感じる。そういうのって、ドイツでもある?

P あるある。ケニアの豆でルバーブの香りってあるんだけど、日本ではあまりなじみがないよね。じゃあ、次はエアロプレスで……

若松さんとピーターソンさん対談中

まるで調香師のようなバリスタの会話は、この後もしばらく続いたのであった。次ページは、そんなお二人直伝のおいしいコーヒーを飲むポイントをご紹介!

最終更新 Donnerstag, 29 September 2022 08:53
 

ドイツでコーヒーをもっと楽しむ秘訣

ドイツ在住の日独バリスタに聞いた ドイツでおいしいコーヒーに出会うには?

ドイツの食と言えば、ビール・ソーセージ・じゃがいもの「三種の神器」が思いつく。ところが実際にドイツに住んでみると、街中にカフェが多く、コーヒーがとても身近な飲み物であることに気づいたという人もきっと多いはず。そんなドイツのコーヒー事情について、デュッセルドルフで活躍する日独のバリスタ2人に話を聞いた。さあ、ドイツでおいしいコーヒーを探す旅に出かけよう。(Text:編集部) 

参考資料:『COFFEE BOOK コーヒーの基礎知識・ バリスタテクニック・100のレシピ』(誠文堂新光社)

ドイツでコーヒーをもっと楽しむ秘訣

ドイツのコーヒーの魅力が分かったところで、実際にカフェで豆を選んだり、おうちで楽しむ方法をご紹介。考えすぎず、ときには感覚に頼ってもみても。自分だけの最高の一杯に出会えるかもしれない。

おいしいコーヒー豆選び

豆の種類や原産国、焙煎方法で味の可能性は無限大。コーヒーの種類を勉強するのもいいけれど、まずは気になったものから試してみては?

1スーパーではなく専門店へ

スーパーで販売されているコーヒー豆は、粒の大きさがまばらで均等に焙煎されていないことも。カフェなどの専門店なら、原産国だけでなく生産者も明記されたスペシャリティコーヒーをはじめとする、大切につくられたコーヒー豆がたくさん並んでいる。

2バリスタをフル活用しよう

自分の好みの味を伝えてぴったりなコーヒーを選んでくれるのは、バリスタの仕事の一つ。今まで出会ったことのない味に出会えるかも。下記のドイツ語も参考に、バリスタとのおしゃべりも楽しんで!

豆選びのためのドイツ語

深煎り dunkele röstung
浅煎り helle röstung

酸味 Säure
ほど良い酸味 angenehme Säure
バランスの取れた ausgewogen
強い kräftig

口当たり Textur
軽い leicht / fein
爽やか erfrischend
なめらか cremig
濃厚な dick

フレーバー(表現の一例) Geschmack
ベリー系 beerig
ナッツ系 nussig
甘さ系 süß
スパイス系 würzig

3深煎りはエスプレッソ向き

焙煎時間の長い深煎りのコーヒー豆は、苦味が出やすいためエスプレッソに向いている。夏にはアイスコーヒーにしても◎。一方、浅煎りの場合は酸味や香りが出やすい傾向がある。店によって焙煎方法も違うので、あくまで参考程度に。

4どう飲むかで豆の挽き方が変わる

ハンドドリップでフィルター越しに淹れるのか、エスプレッソマシンで圧力をかけて淹れるのかで、水が挽いた豆の間を通る速さが異なるため、それぞれに合った挽き方を選ぶ。お店で挽いてもらう場合は、自宅でどう飲むかを伝えればOK。

5賞味期限は挽いてから1~2週間

コーヒー豆は挽くと酸化が進むため、その都度飲む量を自宅で挽くか、挽いてからできるだけ1~2週間に消費するのがベスト。冷蔵保存はほかの食べ物の匂いがうつるのでNG。遮光できて密閉性のある容器に入れるか、光が入らないところで保存しよう。

挽き具合の目安

エスプレッソマシン 細挽き(Feine Mahlung)
フィルター 中粗挽き(Mittelfeine Mahlung)
フレンチプレス 粗挽き(Grobe Mahlung)

若松さんおすすめのブレンド

Espresso Xenia (ニカラグア × インド)
チョコレートのような香り。深煎りでミルクとの相性が良く、ミルクコーヒーが好きな方におすすめ。抽出はエスプレッソマシンだけでなく、フィルターでも。

Brasil San Rafael (ブラジル)
ナッツのような香りで、酸味が少なくマイルドで飲みやすい。日本人のリピーターも多い。抽出はハンドドリップなど、フィルターで飲むのがおすすめ。

Bobby Blend (エチオピア × インド)
若松さんのオリジナルブレンド。ダークチョコレートに、レモンのような酸味が◎。抽出はモカエクスプレス(直火エスプレッソメーカー)やハンドドリップで。

若松さんおすすめのブレンドいずれもDie Kaffeeで購入可

おいしいコーヒーグッズ選び

コーヒー豆のおいしさを最大限に引き出すには、器具選びも手を抜かずに! これからグッズを集めるためのヒントにどうぞ。

1日本製グッズがドイツでも人気

ドイツ生まれのメリタのコーヒー器具が定番だが、日本生まれのハリオ(写真)の人気が急上昇中で、バリスタの大会でも使用されるほど。注ぎ口がコントロールしやすいケトルは若松さんのおすすめで、Die Kaffeeでも購入可能。一方、ピーターソンさんはKINTOを愛用。欧州ではオンラインショップなどで手に入る。

HARIO:www.hario.com
KINTO: www.kinto.co.jp

日本製グッズ

2持ち運べて便利なエアロプレス

もともとアウトドア向けに考案された比較的新しい抽出方法。ピクニックや旅行先に持っていけば、いつでもコーヒーを楽しめる。ピーターソンさんは豆の種類によって、あえてエアロプレスを使用するほど愛用。Die Kaffeでも購入可能。

エアロプレス

3家で挽くならコーヒーミルにも予算をかけて

安価な電動ミルだと豆の挽き具合にブレがあるため、予算に余裕がある場合はできるだけ質の良いものを(ピーターソンさん)。ただし、高価なものは手入れも大変なのでハンドミルもおすすめ(若松さん)。

4エスプレッソマシンなら「デロンギ」がおすすめ

多くのカフェで愛用されているデロンギは、エスプレッソの国・イタリアのメーカー。家庭用のマシンでも安定したクレマ(表面の泡)のエスプレッソが抽出できる。おいしいミルクの泡立てには練習が必要(若松さん)。

デロンギ

おいしいハンドドリップ

ゆっくり時間のあるとき、家族や友人にコーヒーを振るまいたいときは、ぜひハンドドリップで。ピーターソンさん直伝の丁寧においしく入れるための3つのコツをご紹介。

ハンドドリップ

1ドリッパーを温める

ペーパーフィルターの紙の匂いを取るため、フィルターをドリッパーにセットし、お湯を流しなつつ温める。カップもお湯を入れて温めておくとなお良し。

2お湯の温度は80~90度

沸騰したお湯はNG。少し冷ましてから淹れると、ちょうど良い味に抽出できる。抽出温度によって味が変わったり、好みもあるのでいろいろと試してみるのが◎。

3始めの20~30秒は蒸らす

お湯を注ぐと豆からガスが発生するため、味がきちんと出るように豆がお湯に浸ったら注ぐのをストップ。20~30秒待ち、その後何度かに分けて注ぐ。

コーヒー1杯分のレシピ:豆16g:湯250ml *豆6gに対して100mlが目安

ピーターソンさんのおすすめ

  • KENYA
    対談の最後でお二人が試していたケニアの豆。カシスジュースのような香りにバニラの甘さがある。KENYA
  • COSTA RICA
    コスタリカの農家と直接やり取りをして生産している豆。アーモンドとプラムのようなドライフルーツの香りが特徴。COSTA RICA
  • ETIOPIEN
    ウォッシュド(水洗式)で精選されたエチオピアの豆。アールグレイとレモンの香り。アイスコーヒーはアイスティーのよう。ETIOPIEN
  • BRASILIEN
    砂糖の入っていないダークココアパウダーのような香りが特徴のブラジルの豆。ミルクと一緒にコーヒーを飲む人におすすめ。BRASILIEN

*いずれもCopenhagen Coffee Labで購入可

若松さんが働いているカフェ

Die Kaffee Privatrösterei

Die Kaffee Privatrösterei
– Olga Sabristova
月曜~金曜9:00-19:00、 土曜8:00-18:00、日曜定休
Schwerinstr. 23, 40477 Düsseldorf
die-kaffee.de

数々の受賞歴がある自家焙煎カフェ。常時20種類以上のコーヒー豆のほか、コーヒーグッズも販売している。毎週土曜は、近くの公園のマーケット帰りのお客さんでいっぱい。

ピーターソンさんが働いているカフェ

Copenhagen Coffee Lab

Copenhagen Coffee Lab
Benrather Str店
月曜~金曜8:00-19:00、土曜9:00-18:00、日曜9:00-16:00
Benrather Str. 18-20, 40213 Düsseldorf
http://copenhagencoffeelab.com

デンマーク・コペンハーゲンに本店を構えるカフェ。デュッセルドルフに4店舗、デュースブルクに1店舗ある。オリジナル焙煎のコーヒー豆の販売のほか、デニッシュパンなどおやつも充実。

最終更新 Dienstag, 27 September 2022 11:49
 

「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言

使い捨てSTOP「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言 プラスチックごみ
ゼロ宣言

2018年10月、欧州議会にて2021年からの使い捨てプラスチック製品の販売を欧州連合(EU)内で規制する法案が可決。それを受け、ドイツでは今年1月1日よりリサイクル不可のプラスチック容器などに規制を設ける法律「包装法(Verpackungsgesetz)」が施行された。環境問題に対して意識が高いドイツにおけるプラスチック製品・ごみの現実や対策を通じて、ドイツで暮らす私たちが考えるべきこと、実践できることなどこれからの生活のヒントを探る。
(text&interview:見市 知)

プラスチック製品の規制Q&A

Q1 なぜ包装法のような法案が出てきたの?

テイクアウトのコーヒーやランチの利用、小分けにされた食品など手軽で便利になったライフスタイルによって発生する包装ごみの量は、ドイツで年間181万6000トン、1人当たり220kgと言われている(2016年連邦統計庁調べ)。このうち最も問題視されているのが、リサイクルされずに海洋に漂うプラスチックごみの存在だ。昨年10月の欧州議会では、2021年からストローや皿、フォークやナイフ、柄の部分にプラスチックを用いた綿棒などの使い捨てプラスチック製品の販売をEU域内で規制する法案を可決した。これに先駆けて米大手コーヒーチェーンのスターバックスも、プラスチック製ストローの段階的な使用禁止方針を発表。使い捨てプラスチックに代表されるごみ問題への厳しい対応は、いまや世界的な流れとなっている。

海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ

Q2 ドイツにおける包装ごみ問題の深刻度は?

包装ごみの年間排出量は2016年の調査によるとEU平均が年間1人当たり167kg、これに対してドイツは220kg。一方、プラスチックごみに限定した場合には、EU平均が年間31kgなのに対しドイツは37kgに(2015年ユーロスタット調査)。ちなみにプラスチックごみのリサイクル率はEU平均が40%なのに対し、ドイツは49%と平均を上回る。同調査でプラスチックごみの排出量が最も多いのがアイルランドの60.7kg(リサイクル率は34%)、最も少ないのがブルガリアの13.9kg(同61%)となっている。環境保護の意識が高いイメージのドイツにおいて意外な数字だが、テイクアウトのコーヒーや食事に用いられる使い捨て容器、オンラインショッピング利用の人気などが、 包装ゴミが多い理由として挙げられている(連邦環境庁調べ)。

包装ごみ年間排出量/プラスチックごみ年間排出量

Q3 施行された包装法によって変わることは?

包装法により、包装や容器に対して義務付けられるリサイクル率の段階的な引き上げを実施。2019年にはガラス瓶がこれまでの75%から80%に、紙類は70%から85%に、アルミニウムは60%から80%に、プラスチックなどの化学合成物質は36%から58.80%に引き上げられる。2022年には第2段階として、これらの数値をさらに引き上げる予定だ。スーパーマーケットなどの店舗においては、飲料品のボトルが再利用可能なものであるかどうかの表記を、消費者が一目で分かるように明示することが義務付けられる。さらに今後、連邦政府によりパッケージ管理中央センターが設置され、メーカーは商品パッケージに関する申告が義務化される。

リサイクリング義務付け率

製品 2018年まで 2019年から
ガラス瓶 75% 80%
紙類 70% 85%
アルミニウム 60% 80%
化学合成物質
プラスチック製品含む
36% 58.80%

Q4 物価上昇など、消費者の負担は?

包装法の目的は、プラスチックごみを減らすこと。そのため連邦政府はプラスチックなどの包装に課税するのではなく、リサイクルの促進をうたっている。また、一定条件の下で使い捨て容器にもデポジットが義務付けられるが、値上がりするのはデポジット料の部分。メーカーがプラスチック製品を減らし、またはリサイクル可能にすることを通してシステムが強化され、そして消費者がこれに賛同し、リサイクル・システムを機能させていくことが重要となる。リサイクル業者のDer Grüne Punkt(グリューネ・プンクト)などでは、環境に優しいリサイクル可能なパッケージに対して、メーカー側が負担する手数料が引き下げられる仕組みを導入している。

リサイクル可能なボトルリサイクル可能な表示がなされている製品

Q5 プラスチックを使わずに生活することは可能?

2018年1月のシュピーゲル・オンライン版に、マーラ・ファイゲル記者が30日間の「プラスチック断食」にチャレンジした記事が掲載された。なかでもプラスチック回避が最も困難だったのが、プラスチック容器やマイクロプラスチックが用いられていることが多い化粧品や洗剤だったと言う。しかしパッケージフリーショップや自然派ショップを活用し、布製の買い物袋やガラス容器を買い物時に持参、30日間プラスチックを使わない生活を実現させた。ファイゲル記者は「プラスチックを回避して生活することは、簡単ではないけれど可能だ」とコメント。「人はプラスチック製品に依存して生きている。プラスチックに頼らずに生きることは、自分の使っているものに対してより自覚的になることだ」とも述べている。

プラスチック容器プラスチック容器が主流の化粧品は回避が難しい

Q6 包装ごみ問題に対するドイツ人の意識は?

2018年11月に実施された連邦消費者センター連盟の委託で行われたエムニート研究所の世論調査によると、96%が包装ごみを減らすことを重要だと捉えているという結果に。回答者の5人に1人が「週に1回は何らかのテイクアウト用容器を利用する」という。一方で、62%の人が「テイクアウト用容器をほとんど利用しない」と答えたほか、以下のような回答があった。

  • 値引きと引き換えに自分専用容器の持参を支持71%
  • 使い捨て容器の使用を禁止するべき57%
  • テイクアウト用容器にデポジットを適用するべき55%
  • テイクアウト用容器を有料化するべき157%
  • 再利用容器の使用に対して、財政支援を行なうべき50%

梱包ゴミについてのアンケート

パッケージフリーショップのオーナーに聞く! エコな暮らしのヒント

Frau Ramona Dornerルタナトゥア オーナー
ラモーナ・ドーナーさん
Frau Ramona Dorner


rutaNatur

Prinzregentenstr. 7, 86150 Augsburg
https://rutanatur.de

rutaNatur壁一面に並ぶバルク・ビンズ

プラスチックごみ問題に対する意識が高まる中、ドイツで今、静かな広がりを見せているのが「パッケージフリー運動」だ。これは、ゼロ・ウェイスト運動の流れを汲む、プラスチックごみを減らすライフスタイルの提唱として始まったもの。ドイツで最初のパッケージフリーショップは2014年、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の州都キールに誕生した「ウンフェアパックト(Unverpackt: ドイツ語で「無包装」の意味)で、ここでは定期的にワークショップも開催しており、同様のコンセプトでお店を開きたい人たちのために有料で、具体的なアドバイスと基本情報を提供している。現在、ドイツ国内にあるパッケージフリーショップの数は70軒以上を数える。その一つが、南ドイツのアウグスブルクにある、パッケージフリーショップ「ルタナトゥア(rutaNatur )」だ。

量り売りによって無駄なごみを出さないがコンセプト

市街中心部の片隅の、ちょっと目立たない通りにある「ルタナトゥア」。「偶然通りかかって入ってくるお客さんは少ないです。大半がこの店の存在を知って目指してくる人たち」と、オーナーのラモーナさんは語る。小さな店舗の中で目を引くのが、壁一面にずらりと設置されているバルク・ビンズと呼ばれる円筒形の透明なケースだ。ナッツや米などの穀類、コーヒー豆やパスタなどを、客がセルフサービスで自由に量り、買うことができるというシステム。これは、パッケージフリーショップのシンボル的な存在でもある。店の中央には有機栽培農家がつくった野菜や果物。このほか、小麦粉や砂糖、クッキーやチョコレートも量り売りされている。客はめいめいが、自宅から空き瓶やタッパーウェアを持参、または店で容器を購入することもできる。

「パッケージフリー」のコンセプトは食料品だけではない。仕切りで隔てられた隣のコーナーには、生活用品がずらり。石けんや固形シャンプー、竹を素材に用いた歯ブラシ、そして再生紙で作られたトイレットペーパーもビニール袋に入れずにむき出しの状態で並んでいる。

パッケージフリーショップ rutaNatur
パッケージフリーショップ rutaNatur

環境問題について意識を持つことが第一歩

オーナーのラモーナさんは10代の頃から環境問題や食の 安全などに人一倍関心を持っていた。数年前、旅行代理店に 勤めていたときにキールの「ウンフェアパックト」の存在を知 り、ワークショップに参加。2016年8月に「ルタナトゥア」を オープンさせた。

ルタナトゥアの客層は、「食や環境に対して意識的で、多様な年齢層の人たち」。しかし意識の持ち方はさまざまで、「自分はベジタリアンだけれど、子どもの食事は自由にさせている」と言う30代の母親や、「合成洗剤は使わない。ベーキングパウダーで洗濯する」と言う大学生の女性も。また、「子どものアレルギーをきっかけに、食や環境に気を遣うようになった」と言う50代の男性もいた。

竹を用いた歯ブラシ環境に関して意識が高い人が多く来店する

ルタナトゥアで扱っている食品はすべて品質に配慮したエコ認定されたものなので、通常のスーパーマーケットの商品よりもやや割高だ。たいがいの食品をこの店で調達するという常連の女性に「家計に響きませんか?」と尋ねたところ、「野菜は季節のものを買えばお手頃だし、必要なものは自家製でまかなっているので」との答え。彼女はここで大豆を買って、自宅で自家製豆乳を作っているのだという。また、「自分で食べる野菜は家の庭で育てています」という大学生にも出会った。

ラモーナさんによると、客からの要望も多く、今後力を入れて行きたいと考えている商品は化粧品類。ラモーナさん自身はプラスチックをほとんど使わない生活を実践しているが、「パッケージフリー運動は厳格な思想ではなく、各自が無理のない範囲で生活に取り入れれば良いこと。自分自身が暮らしている環境に対して、より意識的になるのが第一歩」と話してくれた。

竹を用いた歯ブラシ竹を用いた歯ブラシ

最終更新 Freitag, 01 Februar 2019 13:46
 

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