特集


【保存版】ドイツのソーセージ&ハム事典 - ハム

ドイツを味わい尽くそう! ソーセージ&ハム事典

WURST & SCHINKEN保存版

ジャガイモやパン、ビールとともにドイツで愛されている食材、ソーセージとハム。特にソーセージは約1500ものバリエーションがあると言われており、地域に根付いた品種が数多く揃うのも特徴だ。ドイツで暮らしているからこそ知っておきたい・味わいたいソーセージとハムの世界をご堪能あれ。 (Text:編集部) 

ハム Schinken

調理ハム
Kochschinken

調理ハム

ジューシーな味わいでさまざまな料理に合わせやすい一般的なハム。生ハムに比べ、水分を多く含むため購入後は早めに消費するのが良い。野菜やハーブのほのかな風味が感じられるものやハチミツを使用したマイルドな味わいのものなど、バリエーションも多種多様。

生ハム
Rohschinken

生ハム

塩漬けして乾燥させるタイプ(Luftgetrockneter Schinken)と、加工せず燻製するタイプ(Räucherschinken)がある。自然乾燥させたハムは、ゆっくりと時間をかけて乾かすため、気候が温暖な南欧の地域での生産が主流。また、燻製ハムは、より寒く湿った地方での生産が適している。生ハムタイプは、熟成することによってほかのハムにはないアロマが感じられるのが特徴。

ドイツ発のご当地 燻製ハム

  • アンマーレンダー・シンケン Ammerländer Schinken 北部アンマーラント地方のハム。海塩とブラウンシュガーで漬け、こしょう、香辛料などで味付けをする。肉の品質が高いほど、素材本来のうま味が引き出される。
  • ホルシュタイナー・カーテンシンケン Holsteiner Katenschinken 南部シュヴァルツヴァルト地方のハム。にんにく、コリアンダー、こしょう、スパイスなどで味付けをする。同様の手法で作られているベーコン「Schwarzwälder Speck」もある。
  • ヴェストフェーリッシャー・シンケン Westfälischer Schinken 西部ノルトライン=ヴェストファーレン州の伝統的なハム。スパイシーな香りが特徴。ドイツの春の味覚、シュパーゲル(白アスパラガス)とともに食べるのがポピュラー。

牛ハム
Rinderschinken

牛ハム

牛のもも肉やクルミ部分(Nussschinken)を使用し、主に自然乾燥か燻製して作られている。カルパッチョにしても美味しい。南部バイエルン州のバンベルクやフレンキシェ・シュヴァイツなどの地域では、「Zwetschgenbaames」と呼ばれる牛肉のハムが食べられている。

鶏ハム / 七面鳥ハム
Geflügelschinken
(Hähnchen Schinken) /
Putenschinken

鶏ハム / 七面鳥ハム

鶏肉から作られたハムは、さっぱりとした味わいとヘルシーさが特徴。種類には胸肉(Brust)をした使用もの、サラミ、レバーケーゼ、ビアシンケンなどさまざまなタイプがある。トルティーヤサンド、サラダの具材などフレッシュなままいただくのが美味しい。

ラックスハム
Lachsschinken

鶏ハム / 七面鳥ハム

サーモン(Lachs)から作られているわけではなく、豚の背肉や背脂肉が「サーモン」と呼ばれていること、マイルドでほのかな塩気を感じられるなど味わいがサーモンに似ていることからこのように名付けられた。さまざまな種類のパンと相性が良いのでサンドイッチにしたり、パスタやスープの具材としても使える。

その他食肉加工品

ズルツェ / アスピック
Sülze / Aspik

ズルツェ / アスピック

豚肉や牛肉、鶏肉、野菜、卵をゼリーで固めたもの。ハムが中に入っているものは「Schinken Aspik(Sülze)」と呼ばれている。彩り豊かな野菜を入れることで見た目も華やかで涼しげな食卓を演出することができる。

ベーコン
Speck

ベーコン

日本でもよく目にする一般的なベーコン(Frühstücks speck)、豚の背脂を塩漬けまたは燻製したラルド(Lardo)、豚のほほ肉を使用したグアンチャーレ(Guanciale)、生ハムのように食すパンチェッタ(Pancetta)など海外由来の種類が多い。

最終更新 Dienstag, 11 Januar 2022 16:12
 

15分マルクス入門 カール・マルクス生誕200周年

生誕 200周年

読めば未来が見えてくる? 15分で
マルクス入門

2018年5月5日、19世紀を代表する経済学者・哲学者のカール・マルクスの生誕200周年を迎えました。マルクスが『資本論』や『共産党宣言』を書いたことは知っているけど、一体どんな人だったのか?そもそも社会主義と共産主義は何が違うのか? そんな疑問に、神奈川大学教授でマルクス学者の的場昭弘さんにお答えいただきました。マルクスのことを知ると、昨日までの世界が少し違って見えてくるかもしれません。さあ、一緒にはじめましょう!

カール・ハインリヒ・マルクス

カール・ハインリヒ・マルクス
Karl Heinrich Marx
1818-1883

プロイセン王国生まれ。大学では哲学に強い影響を受け、卒業後はジャーナリストとして活躍。亡命後はロンドンを拠点とした。長年のプロレタリアートへの取材や調査を活かし、盟友フリードリヒ・エンゲルスとともに『共産党宣言』や『資本論』を書きあげた。

お話を聞いた人

的場 昭弘(まとば あきひろ)教授

1952年宮崎市生まれ。神奈川大学経済学部教授。同大国際センター所長。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。専門は社会思想史、マルクス経済学。近著に『最強の思考法「抽象化する力」の講義』ほか著書多数。

カール・マルクスを知るためのQ&A

「万国の労働者よ、団結せよ!」の言葉で有名なマルクス。理想の社会を掲げ、革命を起こそうとしたプロレタリアート(労働者階級)の英雄……と思いきや、意外と「ダメ人間」な一面もあったようです。

Q1

労働者たちのように、マルクスも貧乏だったのでしょうか?

いいえ、極めて豊かな生活を送っていました。

妻のイェニー・フォン・ヴェストファーレンは貴族出身で、マルクス一家の生活も極めて貴族的です。乗馬や狩猟を楽しむなど、趣味もブルジョワ的でした。たしかに貧しい時期もありましたが、プロレタリアート(労働者階級)からすれば豊かな生活を送っていました。

マルクスは労働者のためにその生涯を捧げた……これは旧ソヴィエト連邦が描いたマルクスの人物像にすぎません。むしろ、ブルジョワジー(資本家階級)だからこそ、プロレタリアートの社会を考察できたと言えます。マルクスはプロレタリアートに愛があって『資本論』を書いたわけではないのです。資本論はやがて自然に崩壊するシステムだということを客観的に考察し、それに代わる新しい社会をつくる制度を導入しよう、というのが彼の主張でした。

Q2

マルクスは浮気をしていたという噂がありますが……。

はい、家政婦を妊娠させてしまったことがあります。

人間的なマルクスの側面が知られるようになったのは、わずか50年ほど前から。家政婦と浮気をして、妊娠させてしまったというのは実話ですが、社会主義国だった旧ソヴィエト連邦や東欧諸国では絶対に言ってはいけない、禁句事項でした。

社会主義国にとって、マルクスは自分たちの国をつくった創始者です。ですから、マルクスは極めて善に満ちた人間でなくてはいけません。社会主義国では子どものうちからマルクスについて学んでいたため、浮気なんてことは徹底的に排除してきたわけです。マルクスを神として位置付けることで、ある意味でソ連の権威を裏付けていたのだと考えられます。立派な本というのは、必ずしも立派な人間が書くわけではありません。むしろこういう「ダメ人間」であるがゆえに、マルクスは人間の良いところを考察できていたのでしょう。

マルクスの思想を知るためのQ&A

ここからが本題です。マルクスはプロレタリアートを取り巻く貧困社会を分析したことで、資本主義社会とは何か、それに続く社会主義や共産主義について独自の理論を展開しました。その中身を少しだけ覗いてみましょう。

Q3

『資本論』には、何が書かれているのですか?

資本主義社会における「階級闘争」の書です。

マルクス主義にはたびたび「階級闘争」という言葉が出てきます。これは、ブルジョワジーとプロレタリアートの間の闘争のこと。『資本論』は、商品化されたプロレタリアートの労働力(労働力商品)が安く買いたたかれ、搾取されていくさまを描いた作品ともいえます。マルクスは「商品」を分析することが、資本主義を理解する上で必要だと考え、冒頭はその解説から始まります。

マルクスは経済学の本や統計書だけでなく、実際に荒廃した社会の現場も見ながら『資本論』を書いています。それは、マルクスが単なる理想家ではなく、革命家であったという点が深く関わっています。ですから、マルクスは革命家として資本主義の根幹をつかみ、未来社会を構想しようとしたのです。

もっと知りたい人におすすめの書籍

超訳 資本論

『資本論』をコンパクトに読む
超訳 資本論
著者:的場昭弘 / 発行元:祥伝社

マルクスの著書で外せないのは、やはり『資本論』。ところが全3巻で、ドイツ語の原書でも1巻800ページあるため、読むのをあきらめてしまう人が多い大作です。でもご安心を。的場教授の著書『超訳資本論』なら、300ページに『資本論』の大事なポイントがまとまっています。これを読めば、本物の『資本論』を読んでみたくなるかもしれません。

Q4

社会主義と共産主義、いまいち違いがわかりません。

まずは語源から考えてみましょう。

そもそも、どちらも輸入された言葉。社会主義= Socialismでsociety(社会)からきています。資本主義で封建制度が崩壊し、自由となった社会というのはいたって不安定です。その混乱した社会をさまざまな形で規制していくのが社会主義です。それに対し、共産主義= Comunismはcomune(共同体)がもとの言葉。ですから、財産を共同化することが共産主義というのが一般的な解釈です。

しかし、マルクスは社会主義は共産主義の最初の段階と考えました。マルクスからすれば、社会主義は資本主義が抜け切れていない状態です。たとえば、社会主義は資本主義のように個人の能力に応じた給与をもらいます。この二つは「平等な社会を目指す」という意味で同じ社会に向かっていますが、旧ソ連邦などの国々はまだ社会主義であって、共産主義に至っていませんでした。

Q5

『共産党宣言』は比較的読みやすいですか?

かつては、聖書の次に読まれた書物と 言われていました。

極めて短い本で、ドイツ語の初版で23ページしかありません。共産主義を学ぶなら、まずは『共産党宣言』を読むしかありませんので、かつては聖書に次いで読まれた本と言われました。ですから、マルクスの著書の中でも比較的優しい本で、100を超える言語に翻訳されています。

ちなみに、マルクスの書き残した草稿は、まだ本にまとめられていないほど膨大にあります。マルクス・エンゲルス全集は、私の学生時代にすでに40巻を超えていました。今出ているものをすべて合わせれば、百何十巻にもなり、マルクス学者の私ですら全部を読めていません。

もっと知りたい人におすすめの書籍

共産党宣言

マルクスの入門書
新訳 共産党宣言初版版
ブルクハルト版(1848年)
著者・訳者:的場昭弘 / 発行元:作品社

分かりやすい現代訳と丁寧な解説が付いた「共産党宣言」。若きマルクスがエンゲルスとともにどんな未来を思い描いたのかが分かる、マルクス作品の1冊目におすすめです。2018年8月に新装版を刊行予定。

もっと知りたい人におすすめの映画

『共産党宣言』誕生までの物語
マルクス・エンゲルス
監督・脚本・製作:ラウル・ペック
製作国:フランス、ドイツ、 ベルギー
出演:アウグスト・ディール、シュテファン・コナルスケほか

マルクス・エンゲルス

20代だった若き日のマルクスとエンゲルスが『共産党宣言』を完成させるまでの日々を描いています。不当な労働と搾取がはびこり、貧困にあふれていた1840年代のヨーロッパ。資本家と労働者の対立が激化するなか、マルクスたちは友情をはぐくみ、人々に待望されながら『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆきます。本作ドイツ語版「Der Junge Karl Marx」は、DVD・Blu-rayが発売中です。 www.hark3.com/marx

現代のマルクスを知るためのQ&A

マルクス亡き後も引き継がれていった、マルクスの思想。あらぬ方向に行き、批判の対象にされてきたことも事実ですが、実際のところはどうなのでしょうか?現代におけるマルクスの立場を見直します。

Q6

マルクス主義国家の典型といえば、旧ソヴィエト連邦ですね?

いいえ、ソ連はマルクスの理想とはかけ離れた国家でした。

ソ連や東欧は所有を国有化するということで、所有の社会化を図りました。ソ連の場合は全面的国有化といって、企業も土地も国のものにしてしまいました。旧東ドイツや東欧は土地の国有化まではしていません。

しかし、社会化と国有化は全く別のもの。全面的国有化は共産党の裁を意味します。これは私有と同じで、国家が企業になったと考えると簡単です。なぜ国有化をしたのかというと、ソ連は『資本論』しか読んでいませんでした。マルクスの若い頃の著作を読むと、マルクス主義がソ連のような国をつくるための思想ではなかったことが分かるはずです。

もっと知りたい人におすすめの書籍

経済学・哲学草稿

若き日のマルクスの思想を知る
経済学・哲学草稿
著者:マルクス / 訳:城塚登、田中吉六
発行元:岩波書店

マルクスが初めて資本主義社会を批判的に考察、人間解放の道を明らかにしようとした研究草稿。26~27歳のマルクスが一体何のためにこのような運動をしているのか、節々にはっきりと見ることができます。

Q7

マルクスの予言した「資本主義の終焉」は来るのでしょうか?

もしかしたら、今がその時かもしれません。

マルクスは資本主義システムを徹底的に解析し、そのシステムが永遠には続かない、つまり「資本主義の終焉」を予言しています。これまで、資本主義社会の経済成長というものは無限に続く、と信じられてきました。しかし、1929年には世界恐慌が起こり、2008年にはリーマンショックが起きましたよね。

トマ・ピケティという経済学者が『21世紀の資本』(みすず書房)という本の中で、資本主義経済が最終的に貧富の格差を広げる、と主張しました。独り勝ちした企業以外が崩壊していくのだとすれば、資本主義は我々が選ぶべき制度でないのです。ですから、今のこの状況が最後になるかもしれません。

今私たちにマルクスが必要な理由

今の時代を生きる私たちが、マルクスを読んでどんな意味があるのでしょうか?マルクスを読むことで今の社会を分析することができる、と的場教授は言います。マルクスはどんな未来を私たちに示してくれているのか、引き続きお話を伺いました。

近年、マルクスへの関心が再び高まっています。それはなぜか? 人々の興味は、これから何が経済の安定につながっていくのか、という資本主義経済の不安にあると的場教授は言います。

「昔はものが売れなくなったら新製品を売れば、経済成長は回復しました。たとえば、車や飛行機など高値で大量に売れるものを新しくつくれば良かったんですね。さらに、10年ほどで商品を使えなくする法が作られました。ところが、現代になってそれが環境破壊につながるという問題が生じたのです。これは、100年以上前には予想できないことでした。

2016年にウォルフガング・シュトレークという社会学者が『資本主義はどう終わるのか』(河出書房新社)という本を出して話題になりました。どうやったら資本主義を終わらせて、新しいオルタナティブの社会を探すのか。そこで、マルクスという存在が必要だと言っているわけです。別に、オルタナティブのすべてがマルクスだと言っているわけではありませんが、少なくとも資本主義の矛盾を明確に説明できているのは、マルクスですよね。そこから次の選択肢として何が出てくるだろう、というのが、まさに今マルクスを見直す理由の一つなのです。

マルクスが私たちに伝えていることは、今の資本主義社会だけが選択肢ではないということです。こんなに貧困で不幸になるよりは、オルタナティブな世界があるということを考えれば、未来が開けるはずです。そのためには、おかしいと思っていることをおかしいと、はっきり声に出すことが大切だと思っています」

さまざまな選択肢を示してくれるマルクス。的場教授は学生たちにもマルクスの生き方を伝えています。「マルクスの格言の中にこんな言葉があります。―自らの道を歩め。他人には好きに語らせよ。―特に日本人は周りに忖度して、自分で声を出さないことも多いですよね。だから、みんなが違うことを言っていても、我が道を進みなさいという意味で、卒業していく学生の寄せ書きに書いたりしています」

さて、マルクスの印象は変わりましたか? 21世紀になった今も、マルクスは理想の社会を思い描くことの大切さを私たちに訴えかけているのかもしれません。

もっと知りたい人におすすめの書籍

最強の思考法

哲学者・マルクスの考え方にならう
最強の思考法 -「抽象化する力」の講義
著者:的場昭弘 / 発行元:日本実業出版社

毎日のニュースと身の回りの出来事は、一見関係性がないように見えても、実は深いところでつながっているかもしれません。そのつながりは、一歩引いて物事を考える、つまり抽象化することではっきり見えてきます。現代に通用する物事や歴史の見方・考え方のヒントが、なんとマルクス哲学の中にあるというから驚きです。弁証法やレトリックをもとに、的場教授が長年のマルクス研究の中で見出した思考法を直伝。生誕200周年を機に刊行された最新刊です。

もっと知りたい人におすすめの書籍

とっさのマルクス

心に染みる格言を厳選
とっさのマルクス - あなたを守る名言集
著著者:的場昭弘 / 発行元:幻冬舎

本当にそれは自分のせいなのだろうか。マルクスの数ある著書の中から、現代人の悩みに答えてくれる格言を的場教授がセレクトして紹介しています。現代にも通じるマルクスの言葉に、明日からまた頑張れるかも。

生誕地トリーアから
ハッピーバースデー、カール・マルクス!

マルクスの生まれ故郷、ラインラント=プファルツ 州トリーア。共産党率いる中国からの聖地巡礼で 中国人観光客が訪れるなど、マルクス・イヤーで 大盛り上がり。その一部をご紹介します。

大人気で売り切れごめん
マルクスの0ユーロ紙幣

あまりにも人気だったため増刷されたマルクス生誕200周年記念の0ユーロ紙幣は、紫色を基調にマルクスの肖像画が描かれています。1枚1枚にシリアルナンバーが刻まれており、サイズは本物の20ユーロ札よりも少し大きめの135mm×74mm。カール・マルクスのファンにはうれしい、ユニークな記念品です。現在、トリーア市のオフィシャルサイトでも販売しており、ここから購入する際には、5枚以上から注文が可能になっています。
https://www.trier-info.de

マルクスの0ユーロ紙幣

カール・マルクス像

中国から贈呈された
カール・マルクス像

生誕200周年を祝うために中国がトリーア市に贈呈した巨大なカール・マルクス像が、誕生日の5月5日に落成されました。しかし、この彫刻を巡ってドイツではさまざまな議論が行われており、中国の政治力を誇示するプロパガンダという批判的な見方が広がっています。「旧ソ連に代わって、中国共産党がマルクス主義の権利を担おうとする動きが強いですが、世界各地で批判の声が上がっています」(的場教授)。

マルクスファンは必見
カール・マルクス展

2018年10月21日まで行われている「カール・マルクス展」は、トリーア市の2つのミュージアムで開催中。「Rheinisches Landesmuseum Trier」では、「生活、仕事、時間」の側面からマルクスのキャリアについて触れ、「City Museum Simeonstift Trier」では、「生涯のステージ」として人生の転換期にまつわる内容が展開されています。彼の人生や作品などを歴史的・文化的に包括した初の試み。 www.karl-marx-ausstellung.de

カール・マルクス展

最終更新 Donnerstag, 20 Juni 2019 14:37
 

ドイツのスタートアップ事情

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:編集部、佐藤ゆき

新しいアイデアで世の中を変える!?
ドイツで注目のスタートアップ

土に返るおむつでエコロジカルビジネスを 2015年ベルリン発 DYCLE ダイクル

DYCLEのビジネスモデル

松坂 愛友美さん

100%堆肥化できるおむつを生産→使用済みおむつを回収→おむつから肥料を作る→肥料を利用して果樹などを育てる→果樹を食べて排せつ物になる、という循環型モデル。2019年よりオペレーション開始予定。

創業者プロフィール

松坂愛友美さん
2001年にドイツへ移住。バウハウス大学でコンセプチュアルアートを学び、自然循環をテーマに科学者らと協力しながら作品を発表してきた。
https://dycle.org/de

アートプロジェクトからビジネスへ

赤ちゃんにおむつは不可欠。毎日出るおむつのゴミにうんざりしているお母さんお父さんは少なくないはず。そんな世界共通の悩みともいえる、おむつのゴミ問題に注目したのはベルリン在住の松坂愛友美さん。「もともとはアーティストとして、排せつ物をいかに土に戻すか、というプロジェクトをしていました。その中で子育て中の家族がおむつのごみに罪悪感を感じるということが分かってきたんです。そこで、科学者の方たちと相談しながら、おむつを堆肥化して木を育て、それを循環サイクルにするというビジネスモデルを作っていきました。

2015年に友人を誘って4人のチームでスタート。ちょうどほかのスタートアップで100%堆肥化できるおむつを作っていて、そのおむつの一部を譲り受けることができました。そして、パイロットという形で20組の家族に1週間、そのおむつを使ってもらったんです。それを1年かけて堆肥にして土を作り、植樹をするという一つのサイクルを完成させました。

アートプロジェクトではなく、ビジネスに落とし込むのは初めてのこと。どれくらいの準備期間が必要なのか、投資家を見つけて利益を生むことは可能なのかなど、ビジネスの知識や経験なしに始めることに当初は不安を感じていました。それでも、実際におむつを使ってくれた家族が喜んでくれたり、できあがった土をビオ農家の方に使ってもらったりと、行動に移すことで自信がつきましたね」

Dycle1年かけてひとまわりする「おむつ循環サイクル」

世界中で可能なビジネスに育てたい

2017年におむつを開発し、2018年現在はおむつの製造機を開発中。来年の事業スタートを目指す。「2018年5月にFAMAEという、家庭における地球に優しいアイデアを募るフランスのコンペティションで、グランプリを受賞しました。今までの財源は寄付だけだったのが、受賞したことで投資家からも支援を受けられることになったんです。

もしこのビジネスをほかの地で始める時に、ドイツからおむつを送るのではなくて、その土地の繊維素材を使ったおむつを作ったら良いと思うんですね。ローコスト・ローテクでおむつ製造機の開発が実現すれば、どこでもおむつが生産できます。世界中のコミュニティーで、地域雇用も生めるビジネスになったらうれしいです」

地産地消的なビジネスモデルを世の中に広めたいと語る松坂さん。DYCLEの循環システムがあちこちで回りはじめる日は、そう遠くないかもしれない。

おむつさまざまな自然繊維素材を使った100%堆肥化できるおむつ

DYCLEこれまでにDYCLEに関わった人は延べ100人以上

土ビオ農家さんお墨付きの DYCLEの土

植樹2016年のパイロットの植樹の ようす

ゴミ箱行きの運命の食料を救いたい! 2015年ケルン発 THE GOOD FOOD

THE GOOD FOODのビジネスモデル

ニコール・クラスキーさん

まだ食べられるにも関わらず、廃棄されてしまう野菜・果物や賞味期限の迫った食品などを農場やメーカー先から回収。商品に値段をつけていないため、いくら支払うかは消費者にゆだねられている。2017年より常設店舗を構える。

創業者プロフィール

ニコール・クラスキーさん
ケルンでは法学を専攻、オーストラリアの大学院で人権について学ぶ。その後、ネパールのNGOで働き、ケルンに戻って仲間とともにフードシェアリングを立ち上げた。

THE GOOD FOOD
オープン:火〜土11:00〜19:00
住所:Venloer Str.414, 50825 Köln
www.the-good-food.de

はじまりはフードシェアリング

形がよくない、大きさが不揃い、賞味期限が迫っている……ケルン市内にある「THE GOOD FOOD」の棚には、そんな野菜や果物、食品が並ぶ。廃棄される予定の食料を低価格で分配する「フードシェアリング」に携わった経験をもとにスタートアップした、と話すのは創業者のニコール・クラスキーさんだ。

「THE GOOD FOODは2人で立ち上げたのですが、私たちは一緒にフードシェアリングの活動をしていました。ドイツではまだ食べられるにも関わらず、大量の食料が無駄に捨てられています。それに対して怒りを感じていたし、そこで働くうちに食料廃棄にはさまざまな原因があることが分かったんです。この捨てられる運命にある食べものたちを救うために、自分たちの手で何かを始める必要がありました」  

2015年、スタートアップを支援する「Social Impact」という企業から助成金を受けることに。まずは事業に関心のある地元の農家や食品メーカーとパートナー関係になり、これまでは廃棄していたような食料を回収、それらを取り扱うポップアップストアなどを出店することから始めた、とクラスキーさん。

「ケルン市の環境保護賞(Umweltschutzpreis)を2016年に受賞し、この街は自分たちの活動に味方しているんだということが自信につながりました。そして2017年2月、ついに常設店舗がオープン。今は60人以上のボランティアがお店に立ったり、農場と店を行き来するなどして働いています。ボランティアやお客さんの多さから、市民が食料廃棄問題に高い関心を寄せていることも分かりました。ほかにも、ここに集まった食材を使ってケータリングをしたり、イベントなどで寄付を募っています」

店内の様子THE GOOD FOODの店内の様子

小さな進歩が大きなエネルギーに

「営業時間の拡大や輸送手段の改善などの課題はありますが、最近ではケータリング事業のシェフを雇えるほどの利益が確保できるようになりました。これは私たちにとって大きな進歩です。もちろん挑戦や困難なことがありました。大切なのは、自分がやっていることがマニュアルから外れていないか、理論的なのかどうか、と恐れないこと。身の回りの小さなことから始めたことが私の支えになり、ここまでやってこれたのだと思います」  

少しずつ、でも確実に前進しているTHE GOOD FOOD。焦らずに一つひとつ取り組んできたクラスキーさんの姿もまた、周囲の共感を呼び、これからも市民や街が彼女たちの支えとなるのだろう。

農家と協力

農家と協力事業に興味を持ってくれた農家と協力しながら、野菜や果物を収穫・回収する


経験者に聞く!
ドイツでスタートアップする3つのメリット

ドイツ、主にベルリンでスタートアップすると、どんなメリットがあるのか? DYCLEの松坂さんにその魅力についてお聞きした。

スタートアップのためのコンペが多い

ドイツでは、スタートアップのアイデアを募るコンペティションが多く開かれている。入賞すると、無料で6カ月オフィスが利用できるなどの特典があるという。「実は、スタートアップしている人は月に何本もコンペティションに応募しています。もちろん、私たちも賞を受賞したコンペ以外にも何十本も出して、ファイナルに進めないことがたくさんありました。ただ、以前企画書を読んでくれた審査員がほかのコンペでまた企画書を読んでくれることがあるんです。企画の進捗を知ってもらうことで『インタビューしてみようか』と思ってもらえるなど、色々なご縁につながって楽しいです よ」(松坂さん)

スタートアップのコミュニティーが多彩

スタートアップを支援してくれるインキュベーション(企業支援)プログラムやコワーキングスペースがドイツには多数あることが魅力のひとつだ。「コワーキングスペースの種類が多彩で、自分のビジョンにあったコミュニティーを選ぶことができます。ソーシャルビジネス、IT系、環境系……それぞれのスペースには独特のコミュニティーがあり、そこで同じビジョンを持ったメンバーに出会い、新しい起業チームが発足することも。スペースの創業者がベンチャー起業家や社会起業家である場合もあり、ニーズに合ったネットワークを素早く広げ、コーチングや育成システム、ワークショップでビジネスの基本を素早く学べるのもメリット」(松坂さん)

市民も街も新しい取り組みに寛容

新しいことに興味を持ってくれる市民が周りにいることは、スタートアップをする上でとても心強いことだ。とくにベルリンという土地は特別ではないか、と松坂さんは続ける。「実際にほかの都市と比べたことがあるわけではないのですが、ベルリンは色々な人が集まっている場所なので、この人がダメでも、隣りの人なら大丈夫……ということがたくさんあります。新しいものを受け入れる器の大きさというのが、街自体にもあると感じますね。何か新しいプロダクトやサービスを企画する場合は、ベルリンで試してみるとより可能性が広がるのではないかと思います」(松坂さん)

スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」 ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

最終更新 Freitag, 17 August 2018 14:25
 

スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:佐藤ゆき

ベルリン、スタートアップのハブ的存在 コワーキングスペースからイノベーターのコミュニティーへ つながりからビジネスを生み出す場 「Factory Berlin」

ドイツのみならず、欧州のスタートアップの中心地でもあるベルリンには、関連するイベントや施設が数多く存在している。そんなクリエイティブで新しいビジネスが生まれる街で起業家たちが集まるハブ、Factory Berlin(ファクトリー・ベルリン)の現状を同地でテックライターとして活躍している佐藤ゆき氏がレポート。

Factory Berlin2014年7月のFactory Berlin オープンニングの日。
グーグルのエリック・シュミット会長や当時のベルリン市長が駆け付けた

スタートアップ都市としてここ数年勢いを大きく伸ばしているベルリンでは、スタートアップ関連のスペースも急増中だ。ミッテ地区のベルリンの壁記念館のそばにあるFactory Berlin(以下Factory)もそんなスペースの一つで、2014年の夏にオープンして以来、ベルリン内外のスタートアップや起業家、投資家、大手企業などから注目を集めてきた。

スタートアップ関連のスペースというと、多くの方が「コワーキングスペース」を想像するようだ。実際、Factoryもオープンしてから最初の1~2年は、1階の部分を通常のコワーキングスペースの形態で、1デスクにつき月額300ユーロ程度で貸し出されていた。だが、その後2016年の夏になって、Factory は「ここはコワーキングスペースではありません、ビジネスクラブです」と言い、突如新たなコンセプトを掲げた。以来、彼らは「イノベーターのコミュニティー」を看板に、求心力のあるコミュニティーの形成に努めている。

ワークスペースからコミュニティーへと、コンセプトを転換させたFactoryが現在目指しているのは、単に仕事をする場所ではなく、新しいアイデアを持った者同士が出会える、そしてその出会いを通じて新たなビジネスやプロジェクトが生まれる場所、つまりイノベーションが起こる環境であることだ。イノベーションが起こる環境づくりといっても、無論それは簡単なことではないが、Factoryは質の高いコミュニティーづくりに注力することでそれを実現しようとしている。

Factory Berlinミッテキャンパス。メインはオープンデスクだが、パートナー企業用の個室や
メンバーが活用できる会議室もある

Factory Berlinミッテキャンパス。正面より

たとえば、コミュニティーのメンバーになるためには基本的にFactoryの審査を通らなければならない。筆者自身もここ2年ほどFactoryのメンバーであるが、最初にメンバー申請をした時にはグループ面接を受けた。その際に尋ねられたことで印象に残っているのが「あなたはどのような形でコミュニティーに貢献できますか?」という質問だ。

この質問からも分かるように、Factoryが求めているメンバー像は「自発的にコミュニティーづくりに貢献できる人物」である。私自身は日本のマーケットに興味があるスタートアップをサポートできます、といったようなことを答えた覚えがあるが、とにかくメンバーそれぞれが自分の強みや専門性をいかに持ち寄ってコミュニティー全体に貢献できるかという点が重視されている。そして、Fact or y自身も数名のコミュニティーマネジャーを通じて、オフライン・オンラインでコミュニケーションが活発に行われるように促したり、メンバー同士が知り合える機会が増えるように定期的にイベントを開催するなどして工夫を凝らしている。

こうした面接を通じて入会したFactoryの現在のメンバー数は2000名を超えるともいわれる。メンバーは主に、比較的小規模のスタートアップ、エンジニアやデザイナーなどのフリーランサー、投資家、企業のイノベーションチームなどだ。会費は月額50ユーロで(パートナー企業になる、個室オフィスを借りる場合は別プラン)、最初にオープンしたミッテキャンパスと、昨年末にオープンしたばかりのクロイツベルクキャンパスの両方に平日朝9時から夜9時までアクセスすることができる。

スタートアップを作るためにはアイデアと実行力を持った起業家が必要であるのは言うまでもないが、そこからさらに成長していくためには、投資家やパートナー企業、そしてプロダクトづくりに関わるエンジニアやデザイナーといった人材が必要不可欠だ。Factoryはそうした成長に必要な「出会い」をデザインすることで、ベルリンのスタートアップエコシステムに貢献している。(Text&Photo:佐藤ゆき)

Factory Berlinミッテキャンパス。2階から入り口を見渡したところ。
奥に見える芝生エリアは、ベルリンの壁記念公園

Factory Berlinミッテキャンパス1階。メンバーが投稿する情報メモ。
メンバーが求めているもの、提供できるものなどの情報が貼られている

Factory Berlinクロイツベルクキャンパスのオープンデスクエリア

Factory Berlinクロイツベルクキャンパスの「プレイルーム」。ボールプールや卓球台などが設置されている

ドイツで注目のスタートアップ ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

最終更新 Dienstag, 10 Juli 2018 11:54
 

スタートアップを始めるためのQ&A

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:編集部

ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

スタートアップの聖地ベルリンをはじめとしたドイツで、スタートアップ事業を展開するための魅力やポイントとは?

bistream代表・武田誠さんベルリンを拠点に、新ビジネス領域での日欧間B2B コラボレーションの開拓と、欧州スタートアップ企業を研修先とする人材研修プログラムを展開するbistream の代表。2018年6月よりジェトロが展開するグローバル・アクセラレーション・ハブの事業パートナーとなり、日本のスタートアップのドイツ・欧州進出、ドイツ・欧州スタートアップの日本進出を実現させるための橋渡しとして相談・アクセラレーターや投資家への紹介を行っている。
bistream:www.bistream.de
グローバル・アクセラレーション・ハブ:www.jetro.go.jp/services/jhub.html

ベルリンでスタートアップをする魅力は?

誰にでもチャンスがあり、オープンで、ファウンダーたちが互いに迅速に助け合うカルチャーが魅力ですね。とても国際的な都市ですが、気取ったところがありません。

ベルリンにはどのような人材が集まっていますか?

高度な知識や技術を持った人材、国際色が非常に豊かです。ベルリンそのものの魅力のおかげで才能のある人たちがたくさん集まってくるので、海外からわざわざ優秀な人を雇う必要がなく、ベルリン内で見つかるという話をよく聞きます。

bistreamではドイツ企業とのコラボやインター ン研修をアレンジしていますね?どのような目的を持った方が参加されていますか?

はい、ビジネスマッチングと人材研修を行っています。企業間のコラボレーションでいうと、こちらの提案で日本の大手企業がドイツのデザインカンパニーと契約した例などがあります。人材研修について言えば、個人、特に大学生はスキルアップと経験を求めていることが多く、企業クライアントは社内人材の国際化を目指しています。

グローバル・アクセラレーション・ハブのプログラムを受けるとどのようなことが期待できますか?

ベルリンというエコシステムをまずは知ってみたい、入り込んでみたいと思っている企業には良いと思います。スタートアップの場合は無料で素敵なコワーキングスペースも使えるので、ぜひ使っていただきたいです。入口のサポートに続いて、さらに具体的なビジネスの開拓や、協業の交渉の際に支援が必要であれば有償で提供しています。

日本のスタートアップ事業の状況は?

日本は決して起業が難しい環境ではありません。しかし、よく言われることですが国内市場向けのスタートアップが多いので、グローバルなビジネスモデルを持ち、そのために必要なグローバル人材を揃えていくというのは、初期のスタートアップには難しいかも……。そういう意味ではベルリンに来てみるという選択肢はあると思います。

ドイツでスタートアップ事業を始めたい場合、どのような技術や能力が求められると思いますか?

何も恐れない、恥ずかしがらないという「能力」でしょうか。片言の英語でも、ここぞという時は相手を圧倒して喋り倒すくらいの強さがあると良いですね。

ドイツを目指して起業したいと考えている人たちに向けて、どのようなことを伝えたいですか?

最近、僕の好きなベルリンの起業家の一人が「人は自分が何を知らないかを知らない」と言いました。だからこそスタートアップのファウンダーは、自分が何を知らないのかを教えてくれる他者を必要とすると。ドイツは日本と似ているところもたくさんありますが、違いもたくさんあります。新しい知識や発想、感覚、考え方に対して貪欲であってほしいと思います。

目指せ日本からNRW州へ!
大学発スタートアッププログラムレポート

今年2月、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の州都であるデュッセルドルフで、日本の大学発信のベンチャーやスタートアップ事業のドイツ進出を目指し、それぞれのビジネスモデルを磨くためのプログラムが3日間にわたって行われた。

デュッセルドルフそれぞれの研究テーマについて発表する参加者たち

メディエンハーフェンに位置するデジタルアクセラレーター、デジハブ(digihub)のオフィスが会場となり9つの大学からさまざまなジャンルの研究を行う研究員や教授が参加した。各大学の研究テーマは、IoT分野における監視システムや光触媒を使った革新的なスキンケアアイテム、歯磨きロボットなど多様なジャンルにわたる。

今回のプログラムは、国立研究開発法人科学技術振興機構が行う「社会還元加速プログラム(SCORE)」のイベントで、起業家を支援するプラットフォームである01Boosterが企画・運営。日系のスタートアップ団体の呼び込みにも積極的なNRW州経済局のサポートもあり、実現する運びとなった。以下、今回の参加者のコメントを紹介(所属は取材当時)。

「今回のプラグラムに参加して、大学の研究を社会に向けて世界的に発信することの魅力だけではなく、厳しさも知ることができました」(名古屋大学 青木宏文博士、名古屋大学リサーチ・アドミニストレーター 跡部悠未博士)

「プログラム参加者の方たちはエネルギーに溢れていて、さまざまな発見がありました」(早稲田大学 栄田源さん)

「今回のプログラムを通して、ドイツでは皆が目的意識やビジョンを持っていることを肌で感じました」(筑波大学チーム 髙林真莉さん)

「ドイツも日本もスタートアップ企業を立ち上げるためのメソッドは一緒だと思いました。また、イベントを通して日本へのサポート体制が積極的だということも知ることができました。ここで得たコネクションを今後につなげていきたいです」(東京大学 早水建祥さん)

「ビジネスに特化した人たちとの交流によってアイデアを具現化するこができました。エンドユーザーについて考え知る良いきっかけとなりました」(国立研究開発法人物質・材料研究機構 阿部英樹博士)

今後、ますます日系の企業や団体、研究者たちが海外で活躍できる場が増えることだろう。

デュッセルドルフ研究テーマについてデジハブのスタッフと話し合い内容を精査する

デュッセルドルフ研究テーマについてデジハブのスタッフと話し合い内容を精査する

ドイツで注目のスタートアップ スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」

最終更新 Dienstag, 10 Juli 2018 09:37
 

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