今年はリヴァプールで開催Eurovision Song Contestのトリビア
ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(以下、ユーロヴィジョン)は、主に欧州地域の国が出場できる視聴者参加型の音楽コンテスト。各国のパフォーマーが次々登場するライブ中継を観賞する楽しさはもちろんのこと、国際政治関係が色濃く感じられる決勝投票など、最後まで見どころがぎっしり詰まっている。まだ観たことがない人は、今年こそぜひ観賞してみてはいかがだろうか。
準決勝に進んだチームの組み合わせの抽選会が、英北部リヴァプールで行われた
5月9日(火)、11日(木)、13日(土)
ドイツ時間21:00~
M&S Bank Arena Liverpool
https://eurovision.tv
視聴方法: 会場チケットは3月にソールド・アウトになったため、生放送での観覧のみ。ドイツでは、公共放送ARDのDas Ersteで生放送される。ストリーム配信を視聴する場合は、www.eurovision.deもしくはARD Mediathekから。
今年のドイツ代表は、ハンブルク出身のメタルバンドの「Lord of the Lost」。最新アルバム「Blood & Glitter」では、予約開始からわずか6日でドイツのチャートで1位を獲得した実力者だ。
1. ご長寿音楽コンテスト番組としてギネス世界記録に登録
ユーロヴィジョンは、1956年の第1回目を皮切りに、新型コロナウイルスが流行した2020年を除き毎年開催されている。第二次世界大戦後、欧州各地で放送網が整ってきたことを受け、「国境を越えたテレビ放送を通じ、欧州諸国間の協力関係を深める」ことを目的に、欧州放送連合(European Broadcasting Union=EBU)が1950年に誕生。そんなEBUの創成期において、ユーロヴィジョンは国際同時生放送という技術面でのテストという役割も担っていた。初回はオランダ、スイス、ベルギー、ドイツ、フランス、ルクセンブルク、イタリアが参加し、これまでに全52カ国が参加している。
1982年に優勝を飾ったドイツ代表のNicole(右から3人目)。冷戦下にあった東西ドイツ両方の人々の気持ちを歌った「Ein bisschen Frieden」を披露した
2. 歌詞は架空の言語でもOK
パフォーマーの人数や演奏の事前録音など、参加規則は時代に合わせかなり変更されてきたが、歌詞の言語規制もコロコロと変わっている。初期段階では特に制限が設けられていなかったものの、後に2曲中1曲は自国の公用語で歌わなければならなかったり(現在は各国が1曲のみ披露)、公用語のみが許されたりした時期も。現在は公用語に加え、誰も理解できない架空の言語での歌唱も認められている。ちなみに1973年に出場したノルウェー代表のベネディク・シンガーズは、曲中に12もの言語が登場する「It's Just A Game」を歌唱した。
3. ABBAが有名になったきっかけ
当日はユーロヴィジョン不参加国でも放映されるため、毎年約1億6000万人もの視聴者がおり、放映後数カ月は街の至る所で選出曲を耳にすることになる。1974年のスウェーデン代表だったABBAや、2014年のオーストリア代表で、髭を生やしたドラァグクイーンのコンチータ・ヴルストなど、後にスターやゲイのアイコンとなり、世界を席巻したパフォーマーを生んできた。一方で、なぜ選ばれたのかと思わせるような、誰も入り込めない世界観のパフォーマーが出てくることもしばしば。新生スターの輩出と同時に、一発屋も量産しがちだといわれている。
4. 各国代表による投票=国際政治
パフォーマーの決勝進出は視聴者投票、そして優勝者は視聴者と各国を代表する審査員の投票によって決まる。また今年から、指定された不参加国の視聴者もオンライン投票が可能になった。例年目が離せないのは各国代表による投票。純粋に歌やステージのパフォーマンスに対する評価だけでなく、各国同士の政治的な敵対・協力関係が絡んだ投票になるからだ。例えば北欧・バルト3国同士で入れ合ったり、毎年同じ国に投票している国が投票先を変えたりと、今日の政治情勢が垣間見えるのも興味深いだろう。
5. 今年はリヴァプールで開催
優勝国が翌年の主催国になるのが伝統だが、昨年の優勝国はウクライナ。ロシアによる侵攻で、同国での開催が叶わなかった。よって今年は「United By Music」のスローガンのもと、英北部リヴァプールが代わりを務める。英国は25年ぶり9回目の主催国で、最も多く開催地を提供している。