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伝説的マンガから、ほのぼのコミックエッセイまでドイツが出てくる日本のマンガ 13選

ドイツでも大人気の日本のマンガ。実は、日本の名作マンガにはドイツの歴史を題材にしたものや、ドイツを舞台としたものが数多く存在している。本特集では、そんなドイツをより深く知れるほか、身近に感じることができる日本のマンガ作品を一挙ご紹介。「読書の秋」であるこの季節、マンガを通してドイツが舞台のさまざまな世界に浸ってみては?(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

少女マンガの金字塔より美しき憧れのドイツ

硬派のドイツ人が日本でブームに
1.『エロイカより愛を込めて』

青池保子 著 秋田書店
1976〜2012年連載 全39巻
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『エロイカより愛を込めて』

金色巻毛の英国人の貴族、ドリアン・レッド・グローリア伯爵は、美意識もプライドも高い美術品愛好家。しかし実は「エロイカ」の通称をもつ美術品泥棒であった。男色家でもあるエロイカは、ドイツ人の北大西洋条約機構(NATO)軍情報部ボン支部の陸軍少佐、クラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハに夢中になる。少佐は東西両陣営から「鉄のクラウス」と呼ばれているほど規律を重んじ、曲がったことが大嫌い。それゆえエーベルバッハはエロイカのことも毛嫌いしているが、ソ連のスパイと戦うため、互いの目的のために協力し合うようになる。

『エロイカより愛を込めて』

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1976年から始まった本作は39巻まで刊行されているロングセラー。特に第2回目から登場したドイツ人のエーベルバッハ少佐は硬派で大人気に。作品の影響を受けて、少佐と同名の都市「エーベルバッハ」は日本人観光客が急増したほどだ。そのため作者の青池保子氏は、同市から感謝状と小さなブロンズのイノシシを贈られたというエピソードもある。ちなみに少佐の部下は、部下A(アー)、部下B(べー)などドイツ読みのアルファベットで呼ばれており、アルファベットと同数の26人。ドイツ語を使ったクスッと笑える言い回しにも注目してみよう。

歴史の渦に 翻弄 (ほんろう) される青春
2.『オルフェウスの窓』

池田理代子 著
集英社文庫〈コミック版〉
1976~1981年連載 全9巻
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『オルフェウスの窓』

主人公ユリウスは、由緒ある貴族フォン・アーレンスマイヤ家の当主である父親と、その愛人から生まれた女の子。父親と正妻との間に男の子がいなかったため、捨てられた愛人である母親はユリウスを男性として育て、 復讐 (ふくしゅう) のため一家の財産を奪う計画を立てる。やがて正妻が亡くなり、次期当主として迎えられたユリウスは、男子校である聖ゼバスチアン附属音楽学校に入学。この学校には「オルフェウスの窓」と呼ばれる窓があり、この窓の前に立った男性が下の階にいる女性を見ると悲恋になるという言い伝えがあった。ユリウスはイザーク、クラウスと出会い、3人の運命が動き始める。

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第一次世界大戦からロシア革命までの歴史的出来事を交錯させながら、3人の運命を描く壮大なストーリー。物語は4部構成で、舞台はドイツ、オーストリア、ロシアと移り変わるが、1部と4部はドイツのレーゲンスブルクだ。レーゲンスブルクは旧市街などが世界遺産に登録されている美しい街。作品に出てくる音楽学校の建物は、同地のトゥルン・ウント・タクシス城をモデルにしているといわれている。ほかにもケプラー記念堂や、レーゲンスブルク大聖堂、レーゲン川など、作品に出てくるスポットがいっぱい。

ギムナジウムの少年たちを描く
3.『トーマの心臓』

萩尾望都 著 小学館
1974年連載
全1巻(プレミアムエディション版)
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『トーマの心臓』

男子校のギムナジウムの生徒であるユーリ。同じ学校の生徒のトーマが陸橋から転落死したことをきっかけに愛を信じられなくなっていた。ユーリはトーマの遺書を受け取り、自殺だったこと、そして彼がユーリを愛していたことを知り衝撃を受ける。そんななか、学校にトーマとうり二つのエーリクが転校してきた。ユーリは彼にトーマの面影を重ねてしまい苦しむ。ある日、エーリクは母親が死亡したことから帰省し、ユーリがエーリクを実家に迎えに行ったことで2人は親密に。ところが、ユーリの心に深い傷を付けた人物に再び会ってしまう。

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ボーイズ・ラブというジャンルがまだメジャーではなかった時代、本作はセクシャリティよりも純愛に焦点を置き、マンガ界に衝撃を与えた。萩尾望都氏はドイツ文学に親しみ、1971年には『11月のギムナジウム』(小学館)という本作の姉妹版の作品を発表。『トーマの心臓』の舞台としては、エーリクの実家がケルンにあり、ユーリらが通うギムナジウムがハイデルベルクとカールスルーエの間にあるという設定。ヘルマン・ヘッセを思わせるような、内面の問題も深く掘り下げて探究している作品だ。

少年・青年マンガで描かれるエネルギーあふれるドイツ

ドイツ各地を旅するサイコ・サスペンス
4.『MONSTER』

浦沢直樹 著 小学館
1994~2001年連載 全18巻
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『MONSTER』

デュッセルドルフのアイスラー記念病院に勤める日本人医師・天馬賢三は、天才外科医として将来を期待されていた。ある晩、東ドイツから亡命してきたリーベルト一家が襲われるという事件が発生し、銃に撃たれた息子ヨハンが運び込まれる。天馬は院長の指示にそむいてヨハンの手術を担当し、その命を救った。しかし、それが全ての始まりだった。ほどなくして病院で不可解な殺人事件が起こり、ヨハンは双子の妹アンナと共に姿を消してしまう。そして9年後、ヨハンと再会した天馬はあらぬ疑いで警察に追われる身となり、またも失踪したヨハンを追って旅に出るのだった。

『MONSTER』

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謎の少年ヨハンをめぐるサイコ・サスペンスである本作の見どころの一つは、デュッセルドルフをはじめ、ドイツのさまざまな都市が登場すること。天馬がドイツ各地、さらには国外へと旅を続けながら、ヨハンの痕跡を見つけたり秘密を知ったり、少しずつ真実に迫っていく。さらに、ヨハンが東ドイツから西ドイツへ来たという設定も、歴史好きにはたまらない。完全なフィクションでありながら、ひょっとしたら過去に東側でこんなことがあったのではないか……と思わせるところが、多くの読者がハマる浦沢作品の魅力だろう。

世界一を目指すジャズプレーヤーの成長物語
5.『BLUE GIANT SUPREME』

石塚真一 著 小学館
2016~2020年連載 全11巻
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『BLUE GIANT SUPREME』

仙台に暮らす宮本大は、バスケ部に所属する高校生。そんな大の夢は、世界一のジャズプレーヤーになること⁉ 中学時代、友だちに連れられて聴きに行ったジャズの生演奏に心打たれ、自分流でテナーサックスを練習しているのだ。それも、たった独りで雨の日も猛暑の日も。ある日、ステージで演奏できることになったが、大音量でめちゃくちゃに吹いたせいで客から怒鳴られてしまう。それでも世界一を目指して、全力で吹き続ける。やがて上京した大は、仲間を得てトリオを組むことに。そして次なるステージ、ドイツへと飛び立つのだった。

『BLUE GIANT SUPREME』

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迫力ある絵でジャズの激しさや自由さを表現した、現在も連載中の人気シリーズ。第2部である『BLUE GIANT SUPREME』は、大がミュンヘン国際空港に降り立つシーンから始まる。初めは英語やドイツ語が日本語訳なしに登場し、外国に来たばかりの新鮮さや、ちょっとドライなドイツ人(?)も描かれる。実在する場所も多く登場し、第2部制作のため作者自身がドイツに視察に来たというのも納得だ。ドイツで新たな仲間たちに出会った大が、日本と違う価値観と触れながらどう成長していくのか、お見逃しなく!

東ドイツ時代のリアルを追求
6.『東独にいた』

宮下暁 著 講談社
2021年~現在休載中 既刊5巻
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『東独にいた』

ベルリンの壁が崩壊する数年前の東ベルリン。社会主義国で育ったアナベルは、古本屋を営む青年ユキロウ・フジサキに密かに恋心を抱いていた。しかし、彼女にはさらに大きな秘密があった。東ドイツの超人部隊「多目的戦闘群」(MSG)に所属する軍人なのだ。一方、反政府組織「フライハイト」が勢力を増し、各地でデモやテロが多発するなど、民主化運動が過激化していく。そして、日本にバックグラウンドを持つユキロウにも人には明かせない秘密が……。時代や思想によって隔てられた東ドイツの人々を描く本格派歴史劇。

作品をもっと知る

バトルシーンや歴史の転換期の人間模様は本作の見どころだが、作者が追求するリアリティーが作品をさらに魅力的にしている。制作に当たり、実際にベルリンを訪れたり、東ドイツに生きた人々の書物や映画を参考にしたりしたという。盗聴や尋問の描写は、東ドイツ時代を描いた映画「善き人のためのソナタ」のワンシーンを思い出す。そんなリアリティーの延長線上に物語が展開していくからこそ、作品に深みが増すのだろう。現在5巻まで発売しているが、残念ながら休載中。連載再開に期待したい。

巨匠たちが真摯に向き合ったヒトラーの時代のドイツ

3人のアドルフの数奇な運命
7.『アドルフに告ぐ』

手塚治虫 著 講談社
1983~85年連載
全3巻(手塚治虫文庫全集)
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『アドルフに告ぐ』

物語の始まりは1936年、ベルリンオリンピックの取材に来ていた新聞記者の(とうげ) 草平 (そうへい) は、ドイツ留学中の弟を何者かに殺されてしまう。弟の死の真相を追うなかで、峠もまた、ドイツ総統であるアドルフ・ヒトラーの出生にかかわる秘密文書の存在を知り、追われる身となる。一方、神戸に住むドイツ総領事館員の息子アドルフ・カウフマンは、同じく神戸に住むドイツ系ユダヤ人のパン屋の息子アドルフ・カミルと親友として幼少期を過ごした。しかし、ナチス党員の息子として国粋主義者に成長していくアドルフと、ユダヤ人としてナチスの陰謀に巻き込まれていくアドルフの友情は、時代の流れに大きくゆがめられていく。

作品をもっと知る

ユダヤ人などに対する迫害・大量虐殺を行ったヒトラーが、実はユダヤ人の血を引くということを証明する文書が存在したら?という虚構をもとに作り上げられた本作。ヒトラーゆかりの地であるベルリンやニュルンベルク、南ドイツの山荘ベルクホーフや、神戸の風景が描かれるなかで、3人のアドルフをめぐって事実と虚構を織り交ぜたストーリーが展開する。第二次世界大戦勃発前のドイツや日本、神戸での空襲、終戦、そしてイスラエル建国に至る長い闘いから、手塚治虫氏の自らの戦争体験と反戦への強い思いがにじむ。

独裁者の生涯を淡々と描いた
8.『劇画ヒットラー』

水木しげる 著 筑摩書房
1971年連載
全1巻(ちくま文庫版)

『劇画ヒットラー』

ウィーンで画家になるという夢に敗れ、働く気力もなく放浪生活を続けていたはにかみ屋の青年アドルフ・ヒトラー。やがて第一次世界大戦が勃発し、ヒトラーも従軍するが、敗戦を喫した祖国は動乱の時代を迎える。混乱が続くドイツで政治活動を始めたヒトラーは演説の才能を発揮し、やがて多くの支持者を集めるようになる。ドイツの民衆を熱狂させ、世界制覇を目指すヒトラーは、やがてドイツを破滅の戦争へと導いていく。ヒトラーの若き日から最後の日までを、英雄視するのでもなく誇大に風刺するのでもなく、淡々と描いた伝記的マンガ。

作品をもっと知る

太平洋戦争に従軍した水木しげる氏は、『総員玉砕せよ!』(講談社)などの作品で自らの戦争体験を描いてきた。ヒトラーと同年代を生きた作者は、ヒトラーへの関心が高く、ナチス研究者の後藤修一氏の協力を得て本作の執筆に当たった。巻末には参考文献リストが添えられ、当時の写真をもとにしたコマもあり、史実に即した内容であることが分かる。一方で、ホロコーストについては作品の最初と最後に登場するのみ。それ以外はヒトラー自身に焦点を絞り、彼の生涯を通して、時代背景や当時の民衆心理などが複雑に絡み合う様が見て取れる。

かわいらしさ満点!メルヘンなドイツ

ドイツ文学がつなぐ歳の差の恋
9.『 長閑 (のどか) の庭』

アキヤマ香 著 講談社
2014~2019年連載 全7巻
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長閑の庭

ドイツ文学を専攻する大学院生の元子(23歳)は、地味な外見といつも黒い服を着ていることから「シュヴァルツさん」(ドイツ語で「黒」の意味)と呼ばれている。しかし実はグリム童話や、メルヘンチックなかわいいものが大好き。そんな彼女は、ドイツ文学教授の(さかき) (64歳)から「君の日本語は美しい」と褒められたことをきっかけに彼に恋をする。ある日、話の流れでうっかり榊に告白してしまうが、榊からただの勘違いだと突き放されてしまう。しかし元子のひたむきな思いを受けて、榊は「好意の種類とその分類について」のレポートをドイツ語で提出するよう課題を与える。

作品をもっと知る

自身の外見や内面にコンプレックスを抱える主人公の姿が共感を呼ぶのに加え、文学的な雰囲気やファンタジックな世界観が美しく物語を深める。自分の意見をはっきり言うが、思慮深い言葉を投げかける榊教授は、まるでドイツ文豪のよう。元子がレポート課題について考えるなかでシラーやハイネの名言を参照したり、榊の元妻がピナ・バウシュなどのドイツ舞踊の研究者であったりと、大学のドイツ文学科らしいシーンが垣間見られる。ドイツ語での授業風景や、ドイツ語の単語を使ったネタなど、ドイツ語学習者ならより一層楽しめるポイントも満載。

異国に行けば異国のあやかしがいる!?
10.『あやかしメルヒェン』

白乃雪 著 講談社
2020~2021年連載 全2巻
https://amzn.to/45TdUcR

『あやかしメルヒェン』

日本の 座敷童 (ざしきわらし) である 花緒 (はなお) は、就職浪人中の青年・コテツを見守りながら暮らしている。しかしある日、アクシデントで家を失ってしまったコテツは、絵本作家を目指してドイツにワーキングホリデーへ! コテツを守り抜く決意をしている花緒もまた、コテツと共に黒い森の近くにある古いシェアハウス(WG)で生活することになる。ドイツ人だけでなく世界各地から人が一緒に暮らすシェアハウスには、妖精や吸血鬼など、これまた世界各地のあやかしたちが集まっていて……。ドイツで新生活を始めた純粋なコテツと、あやかしたちのてんやわんやな日常が幕を開ける。

作品をもっと知る

作者の白野雪氏は、ドイツ人男性との結婚をきっかけにドイツに移住。『とつげきドイツぐらし!』(角川文庫)など、自身のドイツ生活を描いたエッセイコミックで人気を博しているが、本作はそんな彼女が描くメルヘンな物語。語学学校に通ったり、シェアハウスで住人とパーティーをしたりして次第にドイツ生活になじんでいくコテツの姿は、ドイツ生活経験者の共感を呼ぶこと間違いなし。また南ドイツ名物の「黒い森のさくらんぼケーキ」を「人間の欲を塗り固めたようなケーキ」と言ってみるなど、南ドイツでの人間たちの生活が、あやかしたちのちょっぴりひねくれた目線で描かれるのも面白い。

生活の中で見えてくる小さな冒険に満ちたドイツ

一人と一匹のごきげんなベルリン生活
11.『ねこと私とドイッチュラント』

ながらりょうこ 著
少年サンデーS増刊/小学館
2018年~現在休載中 既刊6巻
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『ねこと私とドイッチュラント』

日本から遠く離れた「ドイッチュラント」。主人公で物書きのトーコちゃんは、その首都である緑の多い街ベルリンに移り住んだ。彼女の相棒は、2本足で歩き、おしゃべりもするネコのむぎくん。食いしん坊のむぎくんのために、トーコちゃんはさまざまな工夫を凝らして和食やおやつを作る。ほかにも青空市に出かけてチーズやパン、野菜を買ったり、おにぎりを持って散歩に出かけたりと、派手さはないけれど優しくて温かい日常を二人で楽しく過ごしている。ドイツと日本の違いを楽しみながら、毎日をごきげんに暮らす一人と一匹の物語。

『ねこと私とドイッチュラント』

作品をもっと知る

ベルリン在住の作者の実体験がベースとなっているマンガとあって、ベルリンの街の雰囲気をはじめ、トーコちゃんとむぎくんが暮らすアパートの造り、料理や食品のパッケージなど、細部にわたって温かみのあるタッチで描写されている。ほかにも電車の乗り方や、アパートの暖房設備「ハイツング」のこと、ドイツの郵便事情、くしゃみをした人への「Gesundheit!」という声かけなど、細かい日常生活や文化も題材として取り上げられている。これからドイツで生活してみたいという人や、ドイツ生活初心者にとっても参考になる内容が盛りだくさん。

自分にとって生きやすい街を求めて
12.『ベルリンうわの空』

香山哲 著
イースト・プレス
2018~2021年連載 全3巻
https://amzn.to/3t0UJ2r

『ベルリンうわの空』

ベルリンを初めて訪れたとき、「僕」はこの街に漂う優しさに惹かれるなかで、自分の心にも余裕が生まれていることに気づく。そして自分にとって生きやすい街を求めてベルリンへの移住を決めた。スーパーマーケットで買い物したり、お気に入りのカフェでくつろいだり、子ども新聞を作ったり。ちょっと怪しくて愉快な仲間たちと共に、豊かなカルチャーが混在するベルリンを満喫する。また街中で見かける「つまづき石」のこと、社会に存在する差別にどう向き合っていくかなど、さまざまな視点で社会のあり方を見つめる。

作品をもっと知る

作者は2018年にベルリンへ移住した香山哲氏。この街が自分に合うのか、どんな人々や価値観がこの街に存在するのかと、毎日小さな実験を繰り返していくようなエッセイマンガだ。ベルリンを「憧れの街」として終わらせるのではなく、どこに住んでいても起こりうるような社会問題も描かれる。そんな時にどうやって自分なりに柔軟に対処していこうかと試行錯誤する人々の姿が清々しい。続編では、移住者からより「街の参加者」としてベルリンに関わっていく人々の姿が描かれる。

ネガティブ女子のふらり海外移住
13.『思えば遠くにオブスクラ』

靴下ぬぎ子 著
秋田書店
2019~2021年連載 上下巻
https://amzn.to/3t6BmVu

『思えば遠くにオブスクラ』

フリーカメラマンの 片爪 (かたづめ) 。火事で自宅が全焼して住めなくなり、愛用しているカメラのレンズがドイツ製であったという理由で、大志もなくふらりとベルリンへ移住する。共通の友人の紹介で音響アーティストの石根と同居し始めた片爪は、ベルリンでの暮らしを通して新しい考え方や価値観に触れていく。やがて大学の後輩である王子も加わり、それぞれに生きづらさを抱えていた3人は大切な友人同士となる。人を撮影することが苦手だった片爪は、譲り受けたフィルムカメラで人々を撮影するように。やがて3人は一緒にアムステルダムへと移住するのだった。

『思えば遠くにオブスクラ』

作品をもっと知る

主人公の片爪は、お世辞にも明るい性格ではなく、ネガティブで人見知り。大した目的もなくベルリンに移住した彼女が、見慣れないものを食べてみたり、知らない人から家具を購入して家まで取りに行ったりと、勇気を出して行動することで新しい世界を体験していく。ドイツ語が分からなくて役所や銀行で厳しい対応をされたり、カフェの店員さんが不機嫌だったりと、ドイツ移住経験者なら共感できるポイントも。ネガティブだって目的がなくたって、ベルリン生活は楽しんだもの勝ち!

 
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