寒い季節の優しい味方ドイツのハーブティーでほっと一息
ビールやコーヒーのイメージが強いドイツだが、スーパーマーケットやドラッグストアの棚には、さまざまな種類のハーブティーがずらりと並んでいる。またドイツで風邪をひいたときや体調が優れないときに、薬ではなくハーブティーを勧められることが多いなど、ハーブティーは生活に根付いている。本特集では、そんなドイツのハーブティー事情をはじめ、おすすめのティーブランドをご紹介。これからの寒い季節、ハーブティーが優しい味方になってくれるはず!(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)
目次
ドイツでハーブティーが身近な理由とは?ハーブ療法の立役者 ヒルデガルト・フォン・ビンゲン
ドイツでハーブ療法を確立したヒルデガルト・フォン・ビンゲン
ドイツ茶・ハーブティー協会の報告書によると、2021年のドイツ人1人当たりのお茶の消費量(紅茶、緑茶、ハーブティー、フルーツティーなど)は71.5リットル。同年の1人当たりのコーヒー消費量が168リットル、ビール消費量が92.4リットルであることを考えると、それほど多いとはいえない。しかし興味深いことに、ドイツでは紅茶や緑茶(32.2%)よりも、ハーブティーやフルーツティー(67.7%)の方がより好んで飲まれている。さらにドイツで販売されているお茶のうち、15.9%がビオ製品であるという結果も。
これは、ドイツで自然療法がごく身近なものであることにも由来するだろう。古代からハーブは薬用に使われてきたが、ハーブ療法の基礎を確立した人物として、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098‐1179)の功績は大きい。女子修道院長であったヒルデガルトは、神学者としてだけでなく、自然科学者や詩人、音楽家としても活躍した。彼女は修道院の庭で栽培していた薬用ハーブを観察し、中世の博物学をもとに、その効能と治癒力についての研究を行っていた。著作では、100以上の薬用ハーブについて、またそれらをお茶や薬草酒、粉末、軟こうとして使用する方法について記している。
ヒルデガルトが今日でも注目を浴びているのは、病気の症状だけにフォーカスして治療するのではなく、患者の精神状態も含めた総合的な治療方法を提案している点だ。人間生活の苦しみの原因にも関心を寄せ、節度ある生き方に立ち返り、自然と調和した生活を送る。そのための哲学が詰まったヒルデガルトのハーブ療法は、現代を生きる私たちにも大きなヒントを与えてくれるだろう。次ページでは、そんなドイツで身近なハーブの種類と、それらをハーブティーとして生活に役立てる方法をご紹介する。
参考:Deutscher Tee & Krüutertee Verband「Tee Report 2022」「Im Gespräch: Abtei St. Hildegard」、Bingenam Rhein「HILDEGARD VON BINGEN」
ドイツでのお茶選びのヒントに知っておきたいハーブ事典
古くから薬草として用いられてきたハーブは、今も私たちの心身に寄り添ってくれるお守りのような存在。それぞれのハーブにどんな効能が期待できるのかを知れば、さらにハーブティーが身近なものに。ドイツで好まれているハーブを中心に、特徴や効能をご紹介する。
※本記事に記載されている効能は、あくまで期待される効果です。また、妊娠中や授乳中に避けなければならないハーブもあるため、不安のある方は医師や専門家へご相談ください。
参考:日本メディカルハーブ協会ホームページ、tea exclusive、Utopia ほか
ペパーミントPfefferminze
200種類以上あるというミントで、最もよく使われるのがこのペパーミント。消化を助けるハーブティーとして知られ、古代ローマ人やギリシャ人も飲用していた。すっきりとさわやかな味で、料理にもよく用いられる。
ネトル(イラクサ)Brennessel
新陳代謝を促し、利尿作用があるため、ドイツではぼうこう炎になったときに飲むハーブティーとしても知られる。また鉄分が含まれるため、貧血の人や妊娠中の人に良いとされる。葉緑素が多く、抹茶のような風味で和菓子にも合う。
レモングラスZitronengras
アジアの亜熱帯地域を中心に、アーユルヴェーダなどでも古くから薬草として用いられてきた。フレッシュでマイルドなレモンの香りで、ショウガとのコンビネーションは抜群。心を落ち着かせたり、リラックスしたりしたいときにおすすめ。
セージSelbei
セージは「救う、助ける」という意味のラテン語に由来し、古くから薬用ハーブや香草として料理に用いられてきた。セージには抗菌・抗ウイルス作用があるといわれ、セージティーでうがいをすることで、風邪の予防や口内炎の症状を和らげてくれる。
タイムThymian
スパイシーな香りを放つタイムは、地中海料理に欠かせないハーブ。抗菌や去痰作用があるとされ、タイム入りのお茶は呼吸器疾患やせき、しゃがれ声の症状を和らげたいときに飲むと良い。蜂蜜を追加すれば、さらに効能アップ。
ラズベリーリーフHimbeerblätter
優しい香りで気分を落ち着かせてくれるラズベリーリーフは、女性の健康に寄り添ってくれるハーブ。子宮収縮を促すため、妊娠後期からハーブティーを飲むことで陣痛を和らげたり、産後に母乳の出を良くしたりする働きがあるとされる。月経不調にも◎。
オオバコSpitzwegerich
風邪のひき始めに飲むお茶に欠かせないハーブ。呼吸中枢に作用して、呼吸運動を緩和するほか、のどの調子を整えたり、せきを抑えたりする働きがある。ドイツでは、ヘラオオバコという種類がよく見られる。
ルイボスRooibos
南アフリカの国民的ハーブティーであるルイボスは、現地の言葉で「赤い茂み」を意味する。ほんのりキャラメルのような甘い味わいが特徴。ミネラルがたっぷり入っているほか、ノンカフェインのため、妊娠中も安心して飲める。
マテMate
南米の食生活に欠かせないマテ茶は、カフェインが含まれており、朝のコーヒー代わりとしても人気。ミネラルやビタミンを含むほか、抗酸化作用も。ひょうたんのような容器とボンビージャという専用のストローで飲むのが伝統的。
ジャーマン・カモミールKamille
胃の調子を整えたり炎症を抑えたりと、さまざまな治癒効果が期待できる。また鎮静効果により、イライラや不安を和らげたり、質の良い睡眠を促したりする。青リンゴのような香りが特徴で、ミルクティーにして飲むのもおいしい。
エルダーフラワーHolunderblüten
発汗作用のほか、せきや鼻水の鎮静作用があり、風邪のひき始めなどに飲むと良い。欧米では「インフルエンザの特効薬」といわれることも。マスカットのような風味で飲みやすく、シロップとしても親しまれている。
マリーゴールドRingelblumen
肌の炎症を抑える効果があるとして、軟こうなどに含まれていることが多いマリーゴールド(カレンデュラ)。内服にも適しており、口やのどの炎症のほか、胃の不調や生理痛の緩和にも効果がある。ほんのり甘く、シングルティーとしても◎。
ローズヒップHagebutte
バラの果実であり、美容に良いハーブとして知られる。ビタミンや抗酸化成分が含まれ、特にビタミンCが豊富でその含有量はレモンの20~40倍! ほどよい酸味があり、ハイビスカスと一緒にブレンドされていることが多い。
アニスAnis
ドイツでは、クリスマスのクッキーやグリューワインに欠かせない、甘い香りが特徴のハーブ。去痰や抗菌作用があり、古くから薬用として使われてきた。また、母乳分泌を促進させるともいわれる。ちなみに、スターアニスは名前が似ているが別物。
フェンネルFenchel
カレーのようなスパイシーな香りが特徴のフェンネル。トランスアネトールというエッセンシャルオイルが含まれ、去痰作用があり、せきや鼻水など風邪の症状を和らげるのに役立つ。また、消化を助ける働きやむくみを緩和する効果も。
ホップHopfen
ビールの原料であるホップは、心を落ち着かせ、睡眠を促す効果があるといわれている。毎日飲むことで不安やうつが軽減されたという研究結果もある。冬に向けて気持ちがふさがりがちなとき、元気な気持ちにしてくれるハーブ。
ショウガIngwer
東洋医学で使われる代表的な薬用ハーブの一つ。抗炎症作用や腸を活発化させる作用がある。体を温める効果もあり、冬場のドイツのカフェでは、ショウガとペパーミントなどがそのままグラスに入ったフレッシュハーブティーが風物詩になっている。
リコリス(カンゾウ)Süßholzwurzel
サトウキビの50倍もの甘さをもつリコリスは、黒いキャンディーやグミなどでおなじみ。気管支炎やせきのほか、胃炎の症状を和らげる働きがあるとされる。苦手という人も多いが、ブレンドティーなどの甘味付けにぴったり。
老舗からスーパーで買えるお手軽品までドイツのおすすめお茶ブランド8選
王室御用達の老舗をはじめ、スーパーやドラッグストアで安価で購入できるものまで、ドイツにも多種多様なお茶ブランドが存在する。こだわりの自社ブレンドティーや、思わず「ジャケ買い」したくなるようなかわいらしいパッケージのお茶など、自分へのご褒美やプレゼントにもぴったりだ。
Darmayrダルマイヤー
創業年:1700年
創業場所:ミュンヘン
www.dallmayr.com
1700年創業という老舗の高級デリカテッセンで、1900年ごろからコーヒーや紅茶の取り扱いを始めた。バイエルン王室御用達店としてその名をはせ、現在でもミュンヘンをはじめドイツで愛されている。ミュンヘン新市庁舎の裏手にあるダルマイヤー本店は、欧州最大規模のデリカテッセンハウスとして、地元民や観光客を多く集める。お茶部門では120種類以上の高品質な茶葉を販売しており、紅茶や緑茶だけでなく、さまざまなフレーバーティーやハーブティー、フルーツティーなどを取り扱っている。
Moringa Lycheeモリンガ・ライチ
インドを原産とするモリンガ茶のソフトでマイルドな味わいに、ライチやシトラスなどのかんきつ系のさわやかな風味を加えたお茶。ちなみにモリンガは、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などさまざまな栄養素が含まれ、スーパーフードとしても注目されている。
Ronnefeldtロンネフェルト
創業年:1823年
創業場所:フランクフルト
www.ronnefeldt.com
創業者であるヨハン・トビアス・ロンネフェルトは、フランクフルトの商社で修行を積み、オランダ・ロッテルダムの植民地商品店で輸出入業の知識と人脈を築き上げ、1823年に輸入業者として独立。故郷のフランクフルトに拠点を構えた。その後、国内外の高級ホテルやレストランで愛用される高級紅茶ブランドに成長。創業から200年がたつ今でも「世界中の最良の茶園から最高品質の茶葉だけを取り扱う」という原点に忠実であり続け、現在でも主に手作業で茶葉を製造するオーソドックスな製法のみを採用している。
Morgentau朝露
煎茶をベースに、マンゴーやシトラスの風味が加わったフレーバーティー。インドの業者が送ってきた新鮮なマンゴーの入った木箱からヒントを得て、当時のティーテイスターが試作を重ねて完成させた1989年からのロングセラー商品だ。今日でもオリジナルのレシピは秘密とされている。
Messmerメスマー
創業年:1852年
創業場所:バーデン=バーデン(現在の所在地はハンブルク)
www.messmer.de
1852年にエドゥアルド・メスマーがバーデン=バーデンに極上の紅茶を取りそろえた店をオープン。そのクオリティーから店の人気はすぐに広まり、プロイセンの皇帝ヴィルヘルム1世の宮廷御用達となった。彼の息子オットーは、1886年にフランクフルトに紅茶の全国貿易を専門とする支店を設立。1895年には商標登録し、ドイツで最初の紅茶ブランドとなった。1990年には東フリジア紅茶協会の傘下に入り、本拠地をハンブルクに移転。現在もありとあらゆる種類のお茶をお手頃価格で展開している。
Pfefferminzeペパーミント
最高品質のペパーミントを厳選し、爽やかな風味を損なわないようにブレンド。生のペパーミントと同様な風味が楽しめる。ホットでも清涼感があり、朝の目覚めの一杯にも、食後にもぴったり。より甘みのあるお茶が好みの場合は、メスマーの「Fresh Mint」がおすすめ。
Wollenhauptヴォレンハウプト
創業年:1881年
創業場所:ハンブルク
www.wollenhaupt.com
お茶商人として修行を積んだカール・アウグスト・ヴォレンハウプトが弟のヘルマン・ルートヴィヒと共にハンブルクで創業。紅茶とバニラの輸入で成長し、1970年代以降はフレーバーティーや乾燥フルーツ入りのお茶、ハーブティーなどでイニシアティブを取る存在に。代々家族経営を続けており、4代目の現在はディルク・ヴォレンハウプトは紅茶部門を、イェルク・ヴォレンハウプトはバニラ部門を担当。同社ウェブサイトでは、ヴォレンハウプトの茶葉を使用したドリンクやおやつのレシピも幅広く紹介している。
12 Beeren12種のベリー
ヴォレンハウプトの看板ともいえるのが、乾燥フルーツがごろごろ入ったお茶。こちらのお茶にはイチゴをはじめ、ブルーベリーやブラックベリー、エルダーベリーなど、12種類のベリーがたっぷり。ジューシーでふくよかなベリーの味わいで、ベリー好きにはたまらないはず!
Teekanneテーカンネ
創業年:1882年
創業場所:ドレスデン(現在の所在地はデュッセルドルフ)
www.teekanne.de
1882年に創業し、19世紀末からドイツで初めて缶に詰めた茶やブレンド茶を販売。特にブレンド茶の技術は、収穫地や時期が異なっても一定の品質を保てるとして注目された。第一次世界大戦のときには、ティーバッグの基となる茶袋を兵士に配布して喜ばれたが、同時に風味が損なわれる難点にぶつかる。その後試行錯誤を重ねて、1949年に「ダブルチャンバーバッグ」を開発。香りを最大限に広げることに成功し、特許を取得した。近年ではドイツ連邦産業協会らによって授与される、最優秀管理対象企業賞を4年連続で受賞。
Freches Bienchenいたずらなミツバチ
「恋に落ちる魅惑的なお茶」シリーズの一つとして今年から加わった「いたずらなミツバチ」は、ショウガと蜂蜜の甘くスパイシーなフルーツティー。このシリーズはほかにも「甘いキス」や「小生意気な浮気者」など、ドキッとするネーミング&フルーツの香りで人気上昇中。
Bad Heilbrunnerバート・ハイルブルナー
創業年:1968年
創業場所:バート・ハイルブロン
www.bad-heilbrunner.de
バイエルン王室時代からの温泉地バート・ハイルブロンで1968年に設立。当時は、市販薬の一種として自然療法の下剤や痩身用のお茶や薬湯、せき止めドロップなどを扱っていた。この地域で培われた植物の治癒力に関する伝統的な知識、そして薬用植物と現代の植物医学に基づいて、現在は200種類以上の自然療法と健康食品を扱う企業に成長。同社は地域の自然と文化に深く関わり、ベネディクトボイエルン修道院内にハーブ園を造ったり、ハーブのテーマパークKräuter-Erlebnis-Parkの支援をしている。
MATE+Kurkumaマテ+ウコン
ウコンをブレンドしたマテ茶。スモーキーなカフェイン入りのマテ茶と、オレンジの優しい香りが調和し、心地よい甘みがある。シリーズとしてライムの風味を加えたものや、ガラナを組み合わせたものがあるので、ぜひバリエーションを楽しんで。
Lebensbaumレーベンスバウム
創業年:1979年
創業場所:ディープホルツ
www.lebensbaum.com
バイエルン王室時代からの温泉地バート・ハイルブロンで1968年に設立。当時は、市販薬の一種として自然療法の下剤や痩身用のお茶や薬湯、せき止めドロップなどを扱っていた。この地域で培われた植物の治癒力に関する伝統的な知識、そして薬用植物と現代の植物医学に基づいて、現在は200種類以上の自然療法と健康食品を扱う企業に成長。同社は地域の自然と文化に深く関わり、ベネディクトボイエルン修道院内にハーブ園を造ったり、ハーブのテーマパークKräuter-Erlebnis-Parkの支援をしている。
Tiger-Tee小さなとらのお茶
ドイツの国民的絵本作家ヤーノシュのパッケージがキュートなブレンドハーブティーシリーズ。「小さなとらのお茶」は、ルイボス、レモングラス、ペパーミント、リンゴ、オレンジピール入りで、スパイシーでありながら爽やかな気分にしてくれる。
Paper & Teaペーパー&ティー
創業年:2012年
創業場所:ベルリン
www.paperandtea.de
アジア各国からの厳選された茶葉を使用し、さまざまなオリジナルブレンドを販売するPaper & Tea。2012年にはベルリンに同ブランドのコンセプトストアをオープンさせ、現在は国内外に20店舗以上を構えている。創業者のイェンス・デ・グルイターは、叔父がハンブルクのお茶商人であったことから、子どもの頃から家庭でもお茶を飲む文化が根付いていた。ブランド名は、紙もお茶も中国で誕生したことに由来。美しいお茶のパッケージも、お茶の原産国であるアジアの国々にインスパイアされてデザインされたという。
Sweet Lallabyスイート・ララバイ
就寝前のリラックスタイムにおすすめのハーブティーで、リンゴ、蜂蜜、グレープフルーツ、ローズなどのフレーバー。体を温め、睡眠の質を高める効果が期待できるという。お茶の名前の通り、優しい子守唄をイメージさせる洗練されたパッケージは、プレゼントにもぴったり。