メルヘン街道の起点として知られるカッセルはこの夏、第13回目を迎えた「ドクメンタ」に沸いている。約190組のアーティストが参加する今年のテーマは、「崩壊と再建」。第2次世界大戦で破壊されたカッセルの街並みや虐げられた表現の自由、その復興のために立ち上がった市民のエネルギー。この街を舞台にした一連の歴史的事実にインスピレーションを受けたアーティストの作品から発せられる息遣いを、直に感じに行こう。街全体が展覧会場となったドクメンタは、心を揺さぶる作品との出会いの宝庫だ。(編集部:高橋 萌)
期間 | 100日間 ― 2012年6月9日(土)~9月16日(日) | |
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時間 | 10:00~20:00 | |
料金 | 1日入場券 | 20ユーロ(割引14ユーロ) |
2日入場券 | 35ユーロ(割引25ユーロ) | |
夜間入場券 ※17時以降 | 10ユーロ(割引7ユーロ) | |
全期間入場券 | 100ユーロ (割引70ユーロ) | |
ファミリー用入場券 | 50ユーロ | |
子ども用入場券 | 10歳以下は無料 | |
チケット購入は、会場付近の売り場、またはウェブサイト http://d13.documenta.de/kaufen |
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ウェブサイト | http://d13.documenta.de |
1カッセル中央駅 Kassel Hbf
カッセル中央駅は、「中央駅」にあらず。長距離列車でカッセルに来る場合、玄関口はヴィルヘルムスヘーエ(Wilhelmshöhe)駅になる。そこから構内の目印を追ってSバーンなどに乗り換え、カッセル中央駅を目指そう。駅に到着したら、まずはホームのすぐ側にあるチケット売り場へ。見どころいっぱいの構内で、すべての展示品を観賞しようと思ったら、数時間は駅から一歩も外に出られないことを覚悟しなければならない。
Janet Cardiff &
George Bures Miller
"Alter Bahnhof Video Walk"
iPhone片手に、現実と非現実とが入り混じる不思議な旅へ。iPhoneの貸し出しは中央駅入り口付近の「Offener Kanal」にて。チケットのほか、パスポートなどの身分証明書の提出が求められる。
István Csákány
"Ghost Keeping"
精巧に作られた木製のミシンが並ぶ。この奥に進んでいくと、Haegue Yangのブラインドを使った作品 "Approaching: Choreography Engineered in Never-Past Tense" にたどり着く。Susan Philipszによる音のインスタレーション "Klangtest" は、10:00~19:30の間、30分おきに駅のホームに鳴り響く。
11フリードリヒス広場 Friedrichsplatz
広場を占拠するオキュパイ運動のテント。
階段通りを下りきると、眼前に広がる野外展示。まずは、メイン会場「フリデリチアヌム」の正面に立つ2本の木にご注目あれ。これはヨーゼフ・ボイスが1982年、ドクメンタ7~8の5年間を掛けて進めた"7000 Eichen"という作品の一部。また、格差社会に抗議するオキュパイ運動の参加者がこの広場の一部を占拠しているが、これについて今回キュレーターを務めるキャロライン・クリストフ・バカルギエフは「ボイスの精神が引き継がれている」と歓迎。この広場では、「社会彫刻」というボイスが提唱した概念に想いを馳せてみよう。
Joseph Beuys
"7000 Eichen"
「7000本の樫の木」は、最初の1本が植えられてから今年で30周年。1986年にこの世を去ったヨーゼフ・ボイスに代わって、息子のヴェンツェルが1987年に7000本目を、1本目のすぐ隣に植えた。
17階段通り Treppenstraße
中央駅からフリードリヒス広場に向かう途中で通る「階段通り」は、ドイツ初の歩行者専用道として1950年代に建設されたもの。当時の雰囲気を今に残し、バウハウス建築が立ち並ぶ。戦争により壊滅的な状態となった旧市街を復興することに意義を見出した他都市と違い、新たな都市計画を作成し、歴史的景観と決別する道を選んだカッセル。まさに、「崩壊と再建」を象徴するこの通りを抜けると、ドクメンタのメイン会場にたどり着く。
16カールスアウエ公園 Karlsaue
カールスアウエ公園の広大な敷地内には、50組以上のアーティストの作品が点在する。バロック様式の美しいオランジェリー宮殿から伸びる緑と水の庭園の散歩を楽しみながら、そこかしこに現れる野外展示品を堪能しよう。観るだけでなく、触れたり、聞いたり、体を動かしたり。室内に展示されている作品とは一味違った魅力とダイナミックな存在感を感じさせる作品ばかり。日本人アーティスト、大竹伸朗の作品もこの公園内にある。
Giuseppe Penone
"Ideas of Stone"
第13回ドクメンタの作品の中で一番最初に会場に設置されたのが、ジュゼッペ・ペノーネの木と巨大な石の作品。2010年からずっとこの場所に立っている。
大竹伸朗
「モンシェリー」
アジア風の音楽(ときに日本の歌)が聞こえてきたら、大竹氏の作品はすぐそこ。混沌とした展示品の周囲で不思議な安らぎを感じ、くつろぐ訪問者たち。
12フリデリチアヌム Fridericianum
待望のメイン会場を前に期待が高まるが、ここでまずチケットに記名しているかを確認。まだなら入り口前に待機する係員にペンを借りよう。大きめのカバンを持っている場合は、特設の手荷物一時預かり所(Garderobe、無料)へ。広大な展示会場に足を踏み入れ、最初に出会うライアン・ガンダーの作品は、一見からっぽの空間。さて、どんな作品かというと、これは実際に体感してもらいたい。モランディの絵画など、今回のドクメンタの鍵を握る作品が詰まった展示室ほか、入場制限が掛かけられている部屋もいくつかある。すべてを観て回るには、ここだけでもあっという間に1日が過ぎてしまうほどの規模。
Ryan Gander
"I Need Some Meaning I Can Memorise
(The Invisible Pull) "
右写真)一見、無造作に置かれたドキュメントの山。無料配布されているものもあり、訪問者は気に入ったデザインを見付けてはお土産に持ち帰る。