Hanacell

年に一度の魔女祭り
ヴァルプルギスの夜

ドイツはハルツ地方の山中で、1年に1日だけ開かれるという
魔女の宴「ヴァルプルギスの夜(Walpurgisnacht)」。
子供の頃に魔女の本を読んで憧れていた、行ってみたいけれど
詳しい情報がなくて……という人も多いのではないでしょうか。
そんな夢をかなえるべく、ここで魔女祭りの全貌や
ハルツ地方の見どころをたっぷりとご紹介。
テーマパークでは味わえない、めくるめくおとぎの国体験が
あなたを待っています!(取材・文:坪井由美子)

魔女祭りを楽しむための基礎知識

ヴァルプルギスの夜ヴァルプルギスの夜とは

ヴァルプルギスとは春の女神の名に由来。もともとはキリスト教が始まる以前に行われていた春を祝う民間のお祭りでしたが、キリスト教化されるなかで魔女の宴に変化していったといわれています。

ドイツのハルツ山地にあるブロッケン山では、4月30日の夜にほうきに乗った魔女が集まって宴会を開くという言い伝えがあり、ゲーテの戯曲『ファウスト』に書かれたことで一躍有名になりました。

左)ゲーテの戯曲『ファウスト』の中の
ヴァルプルギスの夜の挿絵

ドイツに残る魔女祭り

ハルツ地方の20余りの町では、今もヴァルプルギス祭りを4月30日に開催。中世を再現したマーケットや大道芸、音楽やショー、魔女のパレードなど大人も子供も一緒になって楽しめるお祭りになっています。この日は町じゅう、あっちもこっちも(仮装した)魔女だらけ!夜中になるとかがり火が燃え盛る周りで魔女たちが歌い踊り、クライマックスを迎えます。

魔女のパレード

魔女のひみつ

古くは『奥様は魔女』や『魔女っ娘メグちゃん』、最近では『魔女の宅急便』や『ハリー・ポッター』など映画やアニメで大活躍の魔法使いですが、中世~近世の時代には人に害を及ぼすものとされ、魔女狩り や魔女裁判にかけられた痛ましい歴史があります。当時は妖術使いだけでなく、いわれのない嫌疑をかけられ犠牲になった人もたくさんいました。時代が変わって魔女は人気者となったものの、今も人間界を見るかぎり、悲しいことに偏見やいじめはその対象を変えて残り続けているといえそうです。

魔女のひみつ

ハルツ地方ってどんなところ?

ハルツ地方ハルツ山地は東西にドイツが分断されていた時代には国境地帯であったため、近づくことができない秘境でしたが、統一後に整備が進み、現在はたくさんの旅行者やハイカーがやってくる人気観光地となっています。魔女伝説とともに幽玄な自然や木組みの家並みが残るこの地域には、世界遺産の美しい町が点在。まるで魔法にかけられたような幻想的な風景と素朴で温かい雰囲気に誰もが魅了されることでしょう。

魅惑の魔女祭り体験記
ヴァルプルギスの夜の全貌

ヴァルプルギスの夜っていったいどんなものなんだろう……と長年憧れていたお祭りに、念願かなって初参加。今回拠点にした町は、ブロッケン山行きSL列車の出発地ヴェルニゲローデ。謎に包まれた魔女祭りの全貌をご紹介しましょう!(取材協力:ドイツ観光局)

ヴァルプルギスの夜
ヴァルプルギスの夜のクライマックス。かがり火を囲んで魔女たちが歌って踊る

1ヴェルニゲローデ城の中世市場

お祭り当日の4月30日、ヴェルニゲローデの町は一日中お祭りムードでいっぱい。午前中、まずはミニ観光列車に乗って丘の上のヴェルニゲローデ城へ。ここでは中世を再現したマルクトが開かれていました。屋台やお店の人たちの衣装、商品名にいたるまですべてが中世風で雰囲気たっぷり。手動の回転ブランコや魔女のコンサート、劇など子供が楽しめるアトラクションもたくさん。

ヴェルニゲローデ城
中世のマーケット
山上に建つ、美しいヴェルニゲローデ城で開催される中世のマーケット

2市庁舎の魔女セレモニー

お昼過ぎに町に戻ると、マルクト広場はすでに「魔女広場」と化していました。カフェでパフェをつつく熟女魔女グループや、ほうきに乗ったおばあさん、全身真っ赤な悪魔軍団など老若男女が思い思いの魔女コスプレで集う様子はなんとも微笑ましい限り。しばらくすると市庁舎前に市長さんと魔女が集合してセレモニーがスタート。掛け声に合わせて「イーヒッヒー!」と雄たけびをあげる魔女たち。実にゆる~く和気あいあいとした雰囲気です。

マルクト広場は魔女広場
魔女セレモニー
とんがり屋根のヴェルニゲローデ市庁舎に魔女たちが大集合!
みなさんコスプレの完成度がとても高い!

熟女魔女
カフェでリラックスしている熟女魔女さん達

3

この後、魔女一行は町を練り歩きながら次の会場であるニコライ広場へ。ここでもにぎやかな宴が続くそうですが、著者一行はさらに魔女度が高いというシールケのお祭りに参加することにしました。

4蒸気機関車でブロッケン山へ

夕方、世界の鉄道ファンが憧れるというハルツ狭軌鉄道のSLに乗ってブロッケン山麓の町シールケへ。じつはこの列車、先ほど町のお祭りで活躍していた魔女一団が乗り込む特別な「魔女列車」だったらしく、線路沿いに大勢の人たちが集まり手を振って見送ってくれました。ブロッケン現象で有名な霧がかかる森へと入っていく昔ながらの蒸気機関車(しかも乗客は魔女たち)……鉄道ファンでなくとも興奮せずにはいられません!

蒸気機関車でブロッケン山へ
蒸気機関車でブロッケン山へ
ブロッケン山の魔女祭りへ向かう蒸気機関車。鉄道ファン憧れのハルツ狭軌鉄道に乗り込む魔女の一団

5シールケのヴァルプルギスの夜

魔女列車に揺られること約1時間で山間のシールケ駅に到着。雨が強くなるなか、魔女たちのパレードが始まりました。この地に住む人々にとって、ヴァルプルギスの夜は待ちに待った年に一度のお祭り。雨なんて物ともせずに、大人も子供もとっても楽しそうです。お祭りのメイン会場では中世風マルクトが開かれ、コンサートやダンスなど魔女にちなんだプログラムが目白押し。夜になると燃え盛るかがり火を囲んで魔女たちが歌い踊りクライマックスを迎えます。

シールケのヴァルプルギスの夜
シールケのヴァルプルギスの夜
グループごとに趣向をこらした魔女パレードは、素朴でほのぼのとした雰囲気

宴のあとで・・・・・・

今回ハルツの山で体験したヴァルプルギスの夜は、生涯忘れられない思い出となりました。何より心に残ったのは、町と人々の素朴な温かさ。ドイツには「おとぎの国のよう」と称される場所がたくさんありますが、こんなにも幻想的な世界が残っているなんて奇跡のよう。皆さんもぜひ一度、ハルツ地方を訪ねてみてください。

ヴァルプルギスの夜
地元の人たちと一緒になって楽しめる参加型のお祭り

小さなおとぎの国 ハルツ地方を旅しよう!

幽玄な大自然の中にきらりと光る小さな町が点在するハルツ地方。絵本の中から飛び出したようなカラフルな町並み、世界遺産の美しい旧市街、魔女伝説の舞台など、見どころがたっぷり詰まったハルツの町々を訪ねてみませんか。 地図

ヴェルニゲローデ Wernigerode

ヴェルニゲローデ Wernigerode
ハルツ山地にあるヴェルニゲローデ。赤い屋根の木組み家屋が集まる町はまるでおとぎの国!

ヴァルプルギスの夜の舞台であるブロッケン山を目指すなら、SL列車が発着するこの町を旅の拠点にするのがおすすめ。色鮮やかな木組みの家やとんがり屋根の市庁舎、ヴェルニゲローデ城など、町がまるごとおとぎの世界です。ブロッケン山頂には悪魔の説教壇と魔女の祭壇が残るほか、博物館や宿泊施設もあり。周囲にはハイキングコースが設けられ、この地域独特の植物が生息する豊かな自然を堪能できるとあって人気を集めています。

INFO
ベルリンからマグデブルクまで約1時間40分 → 私鉄HEXに乗り換えヴェルニゲローデまで約1時間。
www.wernigerode-tourismus.com

ゴスラー Goslar

ゴスラー Goslar
ゴスラー Goslar
「ランメルスベルク鉱山、歴史都市ゴスラーとオーバーハルツ水利管理システム」としてユネスコの世界遺産に登録されている

ハルツ山の西の玄関口であるゴスラーは、10世紀から始まった銀鉱採掘で発展した歴史ある町。しっとりとした魅力を醸し出しているグレーの木組み家屋が並ぶ旧市街は、郊外のランメルスベルク鉱山博物館とともに世界遺産に登録されています。ハインリヒ3世が築いた皇帝居城や城塔内にあるツヴィンガー博物館、ハルツの自然や昔の町の様子を展示したゴスラー博物館、近代美術館メンヒェハウス、楽器と人形の博物館など観光スポットも豊富。

INFO
ハノーファーからREで約1時間。ヴェルニゲローデからはREで約40分。
www.goslar.de

クヴェートリンブルク Quedlinburg

クヴェートリンブルク
ユネスコの世界遺産「クヴェートリンブルクの聖堂参事会教会、城と旧市街」、旧市街はみどころいっぱい

ハルツ山のふもとに広がるクヴェートリンブルクは1000年以上の歴史を誇る古都。大戦の被害が少なかった旧市街はカラフルな木組みの家並みが中世そのままの姿を保ち、世界遺産にも登録。「木組みの家博物館」では各時代の家屋の展示を見ることができます。町を見下ろす城山は、ドイツ初代の王ハインリヒ1世の居城が築かれた場所。12世紀に建てられた聖セルヴァティウス教会や、ハルツ山と美しい町が織り成す絶景も見どころです。

INFO
マグデブルクから私鉄HEXで約1時間15分。ヴェルニゲローデからはハルバーシュタット乗り換えで約50分。
www.quedlinburg.de

ターレ Thale

ターレ Thale
赤いリフトで山に登り、魔女たちの宴会場ヘクセンタンツプラッツに到着。
広場の一角には、いくつもの魔女や悪魔の像が

ハルツ地方のなかでもとりわけ大規模な魔女祭りが開かれるのが、ローカル線の終着駅がある小さな町ターレ。リフトで南の山へ上ると、魔女たちが宴会をしたというヘクセンタンツプラッツや野外劇が行われるハルツ山劇場、博物館のヴァルプルギスホールなど魔女ゆかりのスポットが点在。また“ドイツのグランドキャニオン”と呼ばれる西の山は「ロストラッペ(馬の足跡)」伝説の舞台として知られ、岩場に残る馬の蹄の跡を見ることができます。

INFO
クヴェートリンブルクからHEX で約10分。ヴェルニゲローデからはハルバーシュタット乗り換えで約1時間。
www.bodetal.de

ハルツ旅のアドバイス

  • 鉄道やバスなどの交通網は発達しているものの、小さな町への便数は少なく、乗り継ぎに思いのほか時間がかかることも。余裕をもってスケジュールを立てましょう。
  • 宿泊施設は家族経営のペンションや小規模ホテルが主流。とくに魔女祭りの日は満室のことが多いのでできるだけ早めに予約しましょう。
  • ハルツ地方をじっくり観光するなら、博物館やミニトレインなどが無料になる「ハルツカード」が便利。4日間有効のカードならハルツ狭軌鉄道にも乗車可能。www.harzcard.info

ハルツのお土産

この地域ならではのお土産は、なんといっても魔女グッズ。幸運を運んでくるといわれる魔女人形をはじめ、魔女をデザインした雑貨やお祭りに欠かせない魔女印のシュナップス(蒸留酒)など、ハルツ地方のあちこちで様々な魔女グッズが見つかります。また、ヴェルニゲローデでは専門店のバウムクーヘンもお土産に人気。 本店のほか、マルクト広場の市場で入手可能です。
www.harzer-baumkuchen.de

ハルツのお土産

 
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