伝統を後世に伝える大切な役割と、人々に日常を忘れさせ、
そのひとときを心から楽しめる娯楽性も兼ね備えた「祭り」。
それぞれの祭りにはその土地特有の慣習や歴史が
反映されていて、子どもたちにとっては、
地域で行われる民俗祭が1年のうちで
最大のイベントだったりもするだろう。
賑やかな音楽、華やかな衣装、
そこでしか食べられない料理……。
民俗祭は非日常へと誘ってくれるだけでなく、
ドイツ各地に伝わる風習に触れる良い機会ともなるはず。
(編集部: 山口 理恵)
魔女の祭り ヴァルプルギスの夜
ヘクセン・ナハト
Walpurgisnacht
ブロッケン山・ハルツ
Brocken, Harz Sachsen-Anhalt
4月30日(水)
キリスト教が広まる以前、季節を2分して考えていたケルト人は、毎年5月1日に春を祝う祭りを行っていたが、その前夜には、魔女たちも夜な夜な集まって祝宴を上げていたという……。不思議な現象が起こると言われるハルツ山脈のブロッケン山は、17世紀中期以降、魔女が集まる場所として知られるようになり、現在も山頂の広場には、毎年この日に魔女や悪魔(に仮装した人)たちが押し寄せる!真夜中の山の中で、一夜限りのミステリアスな祭りを体験してみては?
市長の武勇伝が祭りの由来
マイスタートゥルンク
Meister trunk
ローテンブルク
Rothenburg, Bayern
6月6日(金)~ 9日(月)
宗教戦争の真っただ中、ローテンブルクは新教軍に侵略され、窮地に立たされる。その際、敵の大将ティリーが出した提案が、「大量のワイン(3.25リットル)を一気に飲み干せる者がいれば、すべてを許してやろう」というもの。これを老市長ヌッシュが受けて立ち、見事にワインを飲み干して町を救ったという伝説にちなんだ祭り。パレード(8日)には大勢の観光客が訪れる。ティリー大将とヌッシュ老市長が登場する市議宴会館の仕掛け時計もお見逃しなく。
射撃クラブのパレードが圧巻
ハノーファー射撃祭
Schützenfest
ハノーファー
Hannover, Niedersachsen
7月4日(金)~13日(日)
約600年以上の伝統を持つ世界最大の射撃祭。当地に75ある射撃クラブのメンバーによるパレードは欧州でも最大級で、毎年150万人もの人々がこの祭りを訪れている。移動遊園地やディスコパーティーなども同時開催されるので、厳かな雰囲気の伝統的な祭りを祝うだけでなく、老若男女が楽しめる夏の一大祭りとなっている。名物はLüttje Lageというお酒。アルコール度数7~10%の地元の黒ビールと、32%の蒸留酒コルンを混ぜた伝統的な飲み物だ。
www.schuetzenfest-hannover.net
主役は何と言っても子どもたち
テンツェルフェスト
Tänzelfest
カウフボイレン
Kaufbeuren, Bayern
7月10日(木)~21日(月)
1497年から続く、バイエルン州最古と言われる子ども祭り。毎年1000人以上の子どもたちが参加し、15世紀 の皇帝マクシミリアン1世の来訪を称える。当時の王様や貴族に扮した子どもたちの仮装パレードは壮観だ。子どものための祭典というだけあって、子ども向けプログラムが充実。ソーセージ作りや機織り、パン造りといった様々な職業を体験できる。付き添いの大人にはビールの試飲や、お風呂に浸かりながら1杯、なんていうユニークなプログラムも。
1歩足を踏み入れれば、そこは中世の世界
カルテンブルク騎士祭
Kaltenberger Ritter turnier
カルテンベルク
Kaltenberg, Baden-Württemberg
7月11日(金)~27日(日)
カルテンベルク城で毎年開催される、中世を忠実に再現した祭り。中世風の屋台が80軒以上立ち並び、当時の衣 装を身にまとった人々が手工芸品や食べ物などを提供する姿を見れば、中世にタイムスリップしたような気分になるだろう。会場には中世音楽が鳴り響き、ダンサーや曲芸師、楽器の演奏者らが思い思いのパフォーマンスを披露する。ハイライトは、野外アリーナで開催される、騎士たちの臨場感溢れる決闘シーンや馬上演技。歴史的背景の解説なども行われる。
町を救った子どもの勇気を称える
キンダーツェッヒェ
Kinderzeche
ディンケルスビュール
Dinkelsbühl, Bayern
7月18日(金)~27日(日)
1632年春、三十年戦争でスウェーデン軍に包囲されたディンケルスビュールは降伏を迫られ、敵軍はいよいよ町を焼き払おうとする。そこで少女ローレが仲間を引き連れ、町を焼かないよう懇願すると、心を打たれた敵将は退散し、町は破壊から免れたという逸話が歴史に残る。この祭りは、このときの勇気ある子どもたちを称え、毎年開催されており、期間中、中世の面影を今に残す町の内外では、前述の史実を基にした劇や、ゴシックスタイルの衣装を着た人々のパレードが楽しめる。
町医者の伝説を語り継ぐ
鉄ひげ博士が帰って来る!
Doc Eisenbarth is back in town!
フィーヒタッハ
Viechtach, Bayern
7月19日(土)~8月3日(日)
18世紀初頭に実在した伝説の名医ヨハン・アイゼンバルトは、「鉄ひげ博士」としてニーダーザクセン州のハン・ミュンデンという町で活躍し、生涯を閉じた。ヤブ医者だったとも言われるが、その理由は、変わった治療を施したからとか、腕の良さが妬まれて、同業者によってその名が付けられたという説もある。彼の生誕地である当地では、彼の功績を称え、毎年彼の 活躍ぶりをお芝居にした野外劇を開催し、期間中の上演は全8公演。
料金は大人17ユーロ、8~14歳は8ユーロ。
町中が花で満たされる
花の祭典
Blumenkorso Bad Ems
バート・エムス
Bad Ems, Rheinland-Pfalz
8月29日(金)~9月1日(月)
米・パサディナ、フランス・ニースに次ぐ花祭りが、ドイツ有数の温泉地で開催される。地元の伯爵が市場を開いたのが始まりだが、現在は巨大なフラワーマーケットと移動遊園地が立つ一大イベントに発展。花のパレードは31日14:00〜。通りは歩行者天国となり、30台もの華やかな山車が続々とお披露目される。モチーフには『ハリー・ポッター』や『ヘンゼルとグレーテル』を題材にしたユニークなものも。使用される花はダリアだけでも150万本!観覧料は大人8ユーロ。
中世の暮らしを芝居で再現
中世スペクタクルショー
Arnsberg Mitterlalteriches Spectaculum
アルンスベルク
Arnsberg, Nordrhein-Westfalen
9月6日(土)・7日(日)
アルンスベルク城跡で2年ごとに開催されているショー。中世に暮らした人々や兵士たちの日常を、史実に即した芝居仕立てで紹介する。城の廃墟を利用した舞台を騎士たちが馬に乗って走り回り、火の中を駆け抜けるシーンは、まさにスペクタクル。その他、中世音楽を演奏する女性バンドのコンサートが催され、夕方にはファイヤー・ショーが始まるなど、見どころ満載の2日間。会場内には、珍しい手工芸品店が並ぶスタンドや食べ物の屋台も併設されている。
農業大国ならではの祭り
アルムアプトリープ
Almabtrieb
オーバーシュタウフェン
Oberstaufen, Bayern
9月12日(金)・19日(金)
アルプスに放牧した牛と牧人たちの帰還を祝う、アルゴイ地方の収牧祭。この両日、オーバーシュタウフェンでは、約100日間を牛とともに山で過ごした牧人たちがバイエルンの民族衣装を身にまとい、牛たちと山を下りてくる。カウベルや草花で着飾った牛たちが町の中を練り歩く光景を一目見ようと、毎年大勢の観光客も訪れ、無事牛たちを酪農家へ帰した後は、盛大な祭りが始まる。ビールやソーセージ、チーズが振る舞われ、人々はこの行事が幕を下ろすと、夏の終わりを実感する。
個性的なプログラムが盛りだくさん
ハイン城跡祭
Hayner Burgfest
ドライアイヒェンハイン
Dreieichenhain, Hessen
9月12日(金)~14日(日)
フランクフルトの南約20キロの場所に位置するハイン城跡。当地で毎年開催される祭りは今年で75年目を迎え、今回のテーマは「野生の魔力」。敷地内では女性鷹匠によるショーや、観客が歌って踊れるコンサートなど、訪れる者を飽きさせない様々なプログラムが用意されている。会場内には子どもたちが中世の職業を体験できるコーナーも点在。小ぢんまりとしていて、ローカルな中世の雰囲気がたっぷり味わえる。1日券は大人10.50ユーロ(12歳以下は無料)。
北ドイツのオクトーバーフェスト
ブレーメン「自由市場」
Freimarkt Bremen
ブレーメン
Bremen
10月17日(金)~11月2日(日)
北ドイツの「オクトーバーフェスト」とも称される祭りの起源は1035年。当時、地元の同業組合の許可がなくても、誰でも自由に商売ができた「自由市場」が立っていたことに由来する。近年は祭りとしての色合いが濃くなり、中央駅前広場や世界遺産の市庁舎前広場に、移動遊園地や350もの屋台、ビールテントが設置され、400万人以上が訪れる国内屈指の祭りとなった。ローラント像は巨大ハート形レープクーヘンが飾られて愛らしい印象に。名物はスモークうなぎ!