Gregor Gysi 1948年1月16日ベルリン生まれ。弁護士。左派党リンケ連邦議会議員団の団長。 写真 ©FRITZ REISS/AP/PA Photos |
氏はシュタージ(旧東ドイツ諜報機関)に反体制分子ローベルト・ハーベマン(化学者)についての情報を意図的に流した── シュタージ文書解読機関のビアトラー長官が行ったこの発言は事実無根であるとして、5月22日に同発言を放送したZDF局を訴えたが、7月2日、ハンブルク地裁から却下されてしまい、大きな打撃を受けている。
曾祖母はロシア人貴族、ナチ時代を匿われて生き伸びた父クラウスは後に東ドイツ文化大臣、英国人である義理の伯母ドリス・レッシングは昨年のノーベル文学賞作家、実妹ガブリエレは女優と、親族にそうそうたる顔が並ぶ。
本人が有名になったのは、壁崩壊を直前にした1989年11月4日。東ドイツを内部から建て直そうとする左派グループ「新フォーラム」のベルリン集会で、自由選挙を要求した時だ。丸眼鏡をかけたユダヤ系の弁護士会会長(当時)は、その雄弁さでたちまちカリスマ的な政治家になった。SED(社会主義統一党)を改名したPDS(民主社会党)の党首に選ばれたのは、その直後。以後は短期の降板を除き、連邦政界に身を置いて いる。
シュタージのIM(非公式協力者)疑惑には何度も悩まされてきたが、否認と訴訟で対抗。1979年に密告されたとする故ハーベマンの次男ですら、「弁護人が依頼人のためにした情報操作をIM行為と言えるだろうか」と弁護する。しかしこれを監視体制における灰色の部分として社会が容認できるかどうか。意見の分かれるところだろう。
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