Steffen Seibert 1960年6月7日ミュンヘン生まれ。元テレビ・ジャーナリスト。8月11日から政府広報室の室長。 ©Markus Schreiber/AP/Press Association Images |
メルケル首相の要請を受け、21年間勤めた公共放送ZDFをこの6月に辞して、政府広報室の室長に就任。2003年から夜7時のニュース「heute」、07年からは報道番組「heutejournal」のニュースキャスターとして顔を売ってきただけに、広報室長デビューとなった8月16日には記者団が殺到し、首相の隣で冷や汗をかいた。
ZDFに入社したのは1989年。ワシントン特派員を3年勤めた後、まず朝と夜のニュース娯楽番組から司会を始めた。ルポに沈着な観察力を発揮し、9・11米同時多発テロを取材した特別番組では、ドイツのメディア賞であるゴールデン・カメラ賞に輝いている。
しかし今回の就任会見では、かつての同僚を前に「アビトゥアや自動車免許試験が一緒になったように緊張しています」と、端正な童顔を紅潮させてコメント。首相や各大臣のスケジュールについての質問には答えられず、「知っているべきだし、どこかで読んだけれど……忘れました」と笑いを取った。一方メルケル首相からは、「様々な経験を積んできた人物として、新しい興奮をもたらしてくれるでしょう」と褒め言葉をもらっている。
しかし実のところはZDF一筋で来たため、政府を批判する側からPRする側へのソフトランディングを危ぶむ声も聞こえる。原発の稼動期間、長期失業者に現金支給かクーポンかなど、政府が対策を急ぐ問題は目白押しだ。首相を批判せず、記者の批判にまごつかず、余計なことを言わずに情報開示の印象を与えなければならない。試練を迎える。
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