Ulla Unseld-Berkéwicz 1948年11月5日ギーセン生まれ。元女優。作家。ズーアカンプ出版経営者。 ©A3399 Arne Dedert/DPA/Press Association Images |
文学と人文科学の分野で世界をリードするズーアカンプ出版。1959年からその最高経営者だった夫ジークフリート・ウンゼルトの亡き後、2003年に同社を引き継ぎ、利潤を求める経営改革を断行。若い作家をデビューさせ、売れ筋の宗教にも幅を広げたことで、古参の著作家らからは「秘教を好む魔女」と批判されてきた。そして今年1月、周囲の反対を押し切って本社をフランクフルトから創設の地ベルリンへと移転。8月28日にはヴァンゼー湖畔で創業60周年のパーティーを開き、世代交代と強い女性経営者の顔をアピールした。
フランクフルト音楽大学で学び、1970年代には舞台女優として活躍。このときから父方のユダヤ系祖母の旧姓、ベルケーヴィツを芸名に使っている。ズーアカンプから『ヨーゼフ、死す』で作家デビューしたのは82年。続けて『ミシェル……』『アダム』『天使は黒と白』と次々に小説を発表し、妖艶な美女作家として知られる存在になっていた。
しかし、ゴシップ欄にまで登場したのは90年。24歳年上のズーアカンプ社主ウンゼルトと再婚し、これを機にウンゼルトとその息子ヨアヒム(1953年~)間の共同経営をめぐる衝突が激化してしまったときだ。結局ヨアヒムは社を去って独立。しかし父子の対立は父の死後まで持ち越され、やっと今年春、ヨアヒムが持ち株を手放すことで決着する。
その間の権力闘争に打ち勝ち、経営を続けてこられたのは、98年の段階で死期を悟った夫と出版関係者らから後継者教育を施されていたから。こうして魔女は作られた。
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