Josef Ratzinger 1927年4月16日イン川沿いの町マルクトゥル生まれ。 2005年4月19日からローマ法王ベネディクト16世。 |
東ローマ帝国の皇帝マヌエル2世はペルシャ人教師に向かい、宗教と暴力の関係についてこう尋ねた。ムハンマドは何をもたらしたか?剣によって説いた信仰には邪悪と非人間性しか見えない。
今年9月、故郷訪問の講演で使ったこの引用がイスラム教徒の反発を招き、遺憾を表明するはめになった。しかし11月、厳重警戒下で初訪問したトルコでは、ブルーモスクに礼拝してイスラムとの対話を実行し、さらに1054年から断絶していたギリシャ正教会とも和解。外交に疎いと叩かれた2カ月前の状況から一転して、やはり「理性と神の言葉」を説く啓蒙の人だったと再評価を受けている。
イースターの土曜日に生まれ、その日に洗礼を受けたことが人生を決めたと語る。高校生の時、防空隊に徴兵されて戦線へ赴き、米軍の捕虜になった。作家ギュンター・グラス の自伝によると、そのキャンプで後の法王は、捕虜になっていた当時の親衛隊員グラスと出会い、司祭になる夢を語ったという。
戦後、神学と哲学を修め、教理学の教授として教壇に立った後、ミュンヘン教区で枢機卿へと進出。鋭い問答で「パンツァー(装甲の)枢機卿」の異名を取った。法王としては前任者の道を継承しているが、一方で旧友だったバチカン批判の最先鋒キュンク神学者と再会し、最近はエイズに対する人命防護の観点からコンドームを必要悪とする神学的定義を進めているとの報告も。頭脳明晰かつ挑発的な法王であることは間違いない。
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