1985年3月17日レバノン・ベイルート生まれ。ドイツ・ウルム育ち。
女子プロボクサー。
©Marijan Murat/DPA/Press Association Images
4発の銃弾によって選手生活を断たれてから21カ月。新年早々の1月12日に地元ノイウルムで復帰戦に臨み、WFCチャンピオンのルチア・モレッリ(イタリア)にWIBA(女子国際ボクシング協会)ライト級王座を奪われはしても、「人生にカムバックできたことが何より嬉しい」と涙で挨拶。声援を送ってくれたサポーターたちと喜びを分かち合った。
両親に連れられ1歳で内戦状態のレバノンから難民としてドイツへ移住。9歳でキックボクシング、11歳でアマチュアボクシングを始めるが、学業もおろそかにせず、アビトゥア(大学入学資格)を取得してギムナジウムを卒業。プロとして2009年にWIBA、WIBF(女子国際ボクシング連盟)の二冠王となり、以後も順調に勝ち星を上げていた2011年4月1日に、悲劇は起きた。
イルマ・アドラー(ボスニア・ヘルツェゴビナ)との対戦前の控え室で、継父から右手、両足、右膝に銃弾を浴びせられたのだ。継娘が既婚のギリシャ人を恋人にし、それに反対する自分をマネージャーから降ろしたことへの報復だった。手術からやっと回復した継娘は、裁判で6年の実刑判決を受けた育ての親には一瞥もくれず、メディアに「復帰への望みが消えることはない」と宣言する。
その望みが実現した今も、かたわらには婚約者となったギリシャ人パートナーがいる。事件後に2人でカフェを開き、先頃は自伝も発表した。内戦、移民家族、女性のチャレンジ、名誉、成功、愛、嫉妬、憎しみ、暴力とそろったストーリーなだけに、米国から映画化のオファーもあるとか。
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