1973年8月25日ハンブルク生まれ。トルコ系ドイツ人。
映画監督・脚本家・俳優・プロデューサー。
©Domenico Stinellis/AP/Press Association Images
1915年にオスマン帝国で起きた少数民族アルメニア人の追放・虐殺を描いた新作『The Cut』を、先月開催された第71回ヴェネツィア国際映画祭に出品。トルコの極右民族主義団体から脅迫されていることを明かした。
トルコ系移民の2世である。父親は1965年に出稼ぎでハンブルクへ移住し、母親はその3年後に教職を辞めて渡ってきた。家庭ではトルコ語しか話さなかったが、「子どもの将来は教育次第だと固く信じる母親の激励を受けて」ギムナジウムへ進級。クラスのほぼ全員がドイツ人という中、ドイツ文学で優秀な成績を挙げ、放課後にはトルコ人仲間と徒党を組んで毎日殴り合いの喧嘩をしていた。そんなある日、仲間とたむろするアジトに母親が乗り込んできて大叱責。思春期の二重生活からこうして抜け出せたのは、「幸運にもこの母親がいたから」と、今は振り返る。
『The Cut』は当初、アルメニア人虐殺を告発したため、2007年に暗殺されたアルメニア系ジャーナリスト、フラント・ディンクを描きたくて企画したが、出演を引き受ける俳優がいなかったため、虐殺から奇跡的に生き延びた主人公ナザレが、生き別れた双子の娘を探してシリア、レバノン、キューバ、米国へと“オデッセイの苦難の旅”をするストーリーに変更した。メルヘンのような甘さがあるとの批判には、「救いのない苦悩を描くのは自分のスタイルではない」と答える。04年の『Gegen die Wand(愛より強く)』、07年の『Auf der anderen Seite(そして、私たちは愛に帰る)』に続く「愛・死・悪」3部作の最終章として、「悪」をテーマにした。
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