Hanacell

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第9回

日独の視点を持って後世をつなげる
カンマネジメント株式会社 代表取締役社長

隅田 貫隅田 貫 氏
Koresawa Masaaki

プロフィール


大学卒業後、三菱東京UFJ銀行(旧東京銀行)に入行。フランクフルト勤務を経て独プライベートバンク、メッツラー・グループで日系機関投資家を対象とした投資顧問業務を担当。20年以上におよぶドイツでの勤務経験を活かし、日独産業協会の特別顧問としても活躍中。2015年には自身が代表を務める「カンマネジメント株式会社」を設立し、日独間の企業の橋渡しや人材育成に尽力。
http://kan-management.com

現在、日本で叫ばれている「働き方改革」や「脱原発」、「エネルギー政策」などは、実はドイツが何年も前から国を挙げて取り組んできたことだ。このように掲げる目標をはじめ、高い技術力を擁し、クオリティを大切にする「職人の国」という共通点を持つ日本とドイツは、さまざまな場面で影響し合いながら成長できる可能性を秘めた国同士。そんな日独の現在と未来を担う人材の育成や事業を行なうのが、カンマネジメント株式会社の代表であり、日独産業協会の特別顧問を務める隅田貫さんだ。長年にわたりドイツで仕事をしてきた豊富な経験と知識、そして何よりも日本とドイツの2カ国を深く知り尽くしているからこその俯瞰した目線で、両国の架け橋を担う。

外の世界に飛び出すチカラ

隅田さんが外の世界に興味を持ったのは、ロマンを感じるようなこんなきっかけだった。「空を眺めた時にふと、肌の色も言葉も考え方も違う人たちと自分は同じ空の下でつながっているんだよなと思ったら、無性にその人たちに会いに行きたくなりました――」。1982年に入行した東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)で、1回目のチャンスが巡ってくる。1985年、フランクフルト支社への赴任が決定し、その後20年以上もの間この国で暮らすことになるのだ。「実は当初の希望は北米地区だったのですが、なかなか叶わず……。そんな中、社内で行なわれた第二外国語のドイツ語試験を受けたことがきっかけで、ドイツに行くことが決まりました」と、隅田さんは話す。

赴任先では日系企業とはいえ、一緒に働く同僚は大多数がドイツ人、社内の共通言語はドイツ語。そんな状況の中、語学習得も仕事もがむしゃらになった。そこには失敗した分、多くの学びや新たな収穫があったという。そんな多忙な日々を過ごす中、2005年に20年近く勤めた会社を退社し、とあるきっかけで新たなステージにチャレンジするための第2 のチャンスを掴むこととなる。

縁を育むチカラ

「2005年、当時の三菱東京UFJ銀行フランクフルト拠点での業務を締めくくり、帰国するばかりとなった中、お声がけいただきメッツラーに入社することになりました。当時、45歳。その時はもう一度一から頑張ってみたい、自分の専門分野を持たなくてはいけないという危機感がありましたので、何事に対しても前傾姿勢でした」。そう語る隅田さんとメッツラー社との出会いは、ある「ご縁」がきっかけだった。「2002年ごろご縁をいただいた某日系企業の方のために、仕事とは関係なく一肌脱いだことがありました。その方のご厚意で将来メッツラー社でボスとなる大切な方をご紹介いただく運びとなりました。とてもありがたいことです」。

このことがきっかけとなり、隅田さんは普段から人と人との出会いを特に大切にしているという。「電話に出られなかった時にはすぐに折り返しをしますし、メールにもすぐに返信をするよう心がけています。どんな出会いや物事にも当たり前なんてことは一つもありません。そう考えるとさまざまなことに対して感謝の気持ちしか残りません」。一つ一つの出会いを丁寧につなぎ、育む。どんな職種に関わらず、誰もが感化される部分があるのではないだろうか。

ドイツから学ぶチカラ

「生産性」はドイツ人に学べ「効率」が上がる、「休日」が増える」

隅田さんの著書「仕事の「生産性」はドイツ人に学べ
「効率」が上がる、「休日」が増える」では、
社会全体の生産性をアップするための、
ドイツ人から学ぶ効率的に仕事をこなすための
さまざまなアイデアが掲載されている

三菱東京UFJ銀行のフランクフルト支店、メッツラー・グループとドイツ社会の中での仕事は、数多くの新たな発見があった。

「まず、ドイツの方々と一緒に働く上で衝撃を受けたのが、彼らのプライベートと仕事のバランス(ワーク・ライフ・バランス)でした。定時に仕事を終えて帰るのは当たり前、1 カ月以上のバカンスを取ることも普通です。自分と家族にとって幸せとは何かを考えるため、ドイツ人の同僚は常に「この仕事は本当に今日中にやるべきことなのか」と、最優先事項を考えながら仕事をしていました」

ご存知の通り、ドイツ経済は力強く成長し続け、国民の生産性も高い。彼らは無駄を省き効率良く仕事をすること、そして仕事に人生を支配されたないため、幸せを見失わないための自分らしい生き方を実践している。

「生産性を向上させることを考える中で、特に学ぶことが 多かったのが、メッツラー社の私のボスが実践していた部下とのコミュニケーションの取り方です。彼は毎朝自分のデスクに座るまでの間、20分かけて社員に「調子はどう?」などと声をかけていました。そうすることで社内の風通しが良くなり、話をしやすい環境になります。つまり、もし何か問題があればその場で解決したり、話し合いが必要な場合は機会を改めて会議の場を設けるなど、無駄な「ホウレンソウ」の時間を省いているのです。彼からは本当に多くのことを学びました」

ドイツの良いところを吸収し、日独の立場からその経験を伝承していくこと、そこには常に人とのコミュニケーションを大切にし、縁をさらに育んでいくからこそ得られるものがたくさんあることを教えてくれる。今後は日本とドイツの将来を担うような人材を育成していく仕事により力を入れていきたいと、隅田さんは語る。

 
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