ジャパンダイジェスト

輝け、原石たち
日本を飛び出し、ドイツで切磋琢磨する "若き血潮" を紹介します。


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1980年 北海道札幌市生まれ
2002年 早稲田医療専門学校 義肢装具科卒業、義肢装具士の国家資格取得
〜2005年 有限会社 梶屋製作所に勤務
2005年 渡独、Orthopädieschuhtechnicker(整形外科靴職人)になるための職業訓練を始める
~2009年 バイエルン州の整形外科靴工房(2カ所)で研修
2009年~ 職人(ゲゼレ)資格取得後、ベルリンの工房に勤務
整形外科靴とは、変形や両脚の長さの違いなど、足にトラブルを抱え、一般の靴では歩行が困難な人に対して整形外科医が処方するオーダーメイドの靴や装具のこと。

「ドイツでマイスター資格を取って、日本とドイツの2つの国家資格を持つ整形外科靴職人、第1号として日本に戻る」と宣言する中井要介さん。日本の整形外科靴を取り巻く状況を改善すべく、目下ドイツで奮闘中だ。

「自分の店も開くつもりだけど、自分が作れる靴の数なんて一生の内、たかが知れているんです。だから、ドイツで身に付けた知識や技術を職人や整形外科医、理学療法士など、足の健康に関係する人たちにも広めていきたい」。やりたいことが、どんどん湧いてくる。

「靴」の仕事に興味はあったものの、靴職人では食べて行けなさそうと諦めた高校生の頃、テレビで見た義肢装具士の仕事に惹き付けられた。その後、専門学校の授業で「整形外科靴」と出会い、日本では未熟な分野であることを知った中井さんは、「この分野のスペシャリストになろう!」と発起したのだが、その決意はまるで運命に導かれたかのようだった。

「写真に写る3歳の自分は、子ども用にしては、やけにがっしりしたブーツを履いていた。前から見慣れた写真だったけど、ある日『ピン』ときた。そう、整形外科靴を履いていたんです」

「そのお陰で健康な足を持っているんだ」と、自らも幼少の頃にお世話になった整形外科靴に心から感謝する気持ち、そして「日本に整形外科靴の専門家が少ない状況で一番損をしているのは、良い整形外科靴を必要としている患者さんたちだ」という問題意識が、渡独してからの5年間、ぶれない彼の目標を支え、前へ前へと駆り立てている。

忘れられない言葉がある。結婚して2~3年という若い男性患者、先天性の障害から足の裏の感覚がなく、ちょっとのキズが大けがになりえる状態だった。出来上がった整形外科靴に満足した男性は言った。

「これでやっと、嫁さんとディズニーランドに行けます」

足に問題を抱える人の可能性を広げられるような靴を提供していきたい。未来の日本の整形外科靴界のパイオニアは切に願う。

(編集部:高橋 萌)


各患者の足の形に合わせて作られた木型



靴を作るのに必要な様々な道具


出来上がった整形外科靴



木型に合わせて靴の形を作る「つり込み」作業中の中井さん

Fotos: Shinji Minegishi
Information

患者さんの足にぴったりの靴を作るのが「整形外科靴職人」の主な仕事だが、ほかにも中敷(Einlagen)の製作など、様々だ。中井さんが働くOrthopädisches Fachzentrum Berlinも、スポーツ選手の能力を伸ばす為の中敷など多岐にわたって足の健康を守る装具を作る工房。「僕がいる間は、日本語での対応もまかせてください」と頼もしいことを言ってくれた。

Orthopädisches Fachzentrum Berlin
Augsburgerstr.21, 10789 Berlin
www.ofz-berlin.de

 
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