ジャパンダイジェスト

野外民族博物館の秋祭り

秋晴れの清々しい青空が広がった10月のある日、キール近郊のモルフゼー(Molfsee)にある野外民俗博物館「Freilichtmuseum」で開催されていた秋祭りに出掛けてきました。

この野外博物館は北ドイツ最大規模のもので、60ヘクタールの敷地に70軒の歴史的家屋が点々と建てられています。昔の雰囲気そのままに家屋の庭で鶏が歩き回っていたり、ロバや馬、羊今年は作曲家フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディの生誕200年に当たります。ベルリンは、ライプツィヒと並んでメンデルスゾーン家にゆかりの深い街。今回は、金融から芸術まで、世界に大きな足跡を残したこのユダヤ系一家を知る格好の場所をご紹介します。ミッテのジャンダルメンマルクト傍のイェーガー通り(Jäger Str.)は、古くからベルリンの銀行街として知らたちがのんびり草を食んでいたり、アスファルトで舗装されていないあぜ道を馬車が走ったりと、そこにはまるで18~19世紀当時の村が蘇ったかのような風景が広がっていました。

昔そのままの風景が広がる野外民俗博物館 昔そのままの風景が広がる野外民俗博物館

大小様々な家屋は、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の各地から集められ、そのまま建て直されたもの。家の中に足を踏み入れると、当時使われていた道具類が置かれていて、昔の北ドイツれていました。2つの国立銀行に挟まれ、ベルリン最大の私営銀行として確固たる地位を築いたのが、1795年創業のメンデルスゾーン銀行です。1815年、著名な哲学者モーゼスの息子にして銀行の創業者であるヨーゼフとアブラハム(フェリックスの父)がこの通りの51番地に越して以来、同地は100年以上にわたってメンデルスゾーン家の生活と活動の拠点になりました。現在、そのの人々の素朴な生活を想像することができました。中でも印象的だったのはベッドです。現在使われているベッドと同じような形をしたものから、押入れのように壁の中に取り付けられているものなどいろいろあったのですが、共通しているのは、どれも小さいということ。身長155cmの私でも背を丸めないと横になれないような、子ども用ベッドほどの大きさしかないのです。当時のドイツ人は、今よりずっと背が低かったのでしょうか?! また、寒空の下で見学していたため、当時の家屋で過ごす冬はさぞかし寒かったことだろうな、と思わず暖房が整った部屋で生活できることのありがたみを感じずにはいられませんでした。

さて、建物を1つひとつじっくり眺めながら歩くだけでも軽く2時間はかかってしまうこの博物館で、10月10 ~ 18日の9日間にわたって開催された秋祭り。各建物の内外あちこちに150もの屋台・露店が出ていて、それらをすべて見て回るとなると、半日は必要でしょう。ありとあらゆる手工芸品や、ここでしか買えないのでは? と思われる珍しい香辛料、手作りの食料品が種類豊富に並べられていて、それらを味見したり、目の前で実際に職人が作品を製作する様子を眺めながら歩くのは、なかなか楽しいものでした。私が訪れた日は天気も良く、家族連れなど多くの来訪者で賑わっていたのですが、今年は期間中に約3万5000人がこの秋祭りを訪れたそうです。

ちなみに、私の夫が購入したのは野生動物のお肉が入っているという「Wildleberwurst」と、なんと350gで13ユーロもする3年物のスイス産チーズ。チーズは高いだけあって、すごくコクのある味わいでしたよ。

www.freilichtmuseum-sh.de

当時の生活が偲ばれる展示物 当時の生活が偲ばれる展示物

ゼルヒャウ・ハンゼン美穂
福岡出身。2005年に渡独。夫と娘との3人家族。キール・フィルハーモニー合唱団所属の音楽好き。最近凝っているのは家庭菜園。
 
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