待ちに待ったサマータイムが始まりましたね! 太陽が降り注ぐ大自然の中で過ごす週末を待ち遠しく思っていたのは、きっと私だけではないはず。今回はシュヴァーベン地方のガイドブックで偶然見つけた彫刻「ワインガイスト」(Weingeist)に会える日帰りハイキングコースを紹介したいと思います。
私が一目惚れしたワインガイストの像
スタート地点は、シュテッテン(Stetten)という小さな町で、シュトゥットガルトから東方へ20キロほど離れたところにあります。ワインの産地で有名なワインシュタットの近くにあり、ぶどう畑が辺り一面に広がっていました。まずは、ぶどう畑に沿った傾斜を上り、ワインガイストのブロンズ彫刻像がある展望スポットを目指しました。日本語にすると、「ワインの精霊」でしょうか。中性的な顔立ちをして、ゆったりとワイン畑を見つめるこの姿に、私はとても魅力を感じました。こちらの彫刻は、バーデン=ヴュルテンブルク州を中心に活躍する彫刻家カール・ウルリヒ・ヌス氏によるものです。その先にあるワイブルク(Yburg)という塔の中にも、いくつかの作品が展示されていました。後で知ったのですが、近郊の町には、彼の作品を展示したミュージアムがいくつもあるのだとか。
木漏れ日が気持ちいい森の中
さて、ワイン畑を通り抜け、続いて高い樹木がうっそうと茂る森へ進みます。足元には苔が青々と育ち、小さな生き物が動いているのもよく見えます。踏まないように、注意しながら歩くのは大変でしたが、普段なかなか出会わないトカゲや美しい色の蝶などを見られたことも、とてもうれしい体験でした。ハイキングでは木に掲示されたコース案内板を見て先へ進みますが、ちょっと冒険して別のルートへ行ったところ、予想以上に険しい道になってしまい戻ることに。初心者は初心者らしく、コースに沿って進むことが大切ということも学びました。道ですれ違う人同士があいさつをしたり、この先の様子などを尋ねたりする交流は、とても心地いいものですね。人と会話しながら、アナログな地図を見て進むハイキングは、デジタルデトックスにもつながり、まさに現代人に必要な時間だと思いました。
ガイドブックを並べてみると……
ところで、今回久しぶりにドイツのガイドブックを見ましたが、古い写真と地図があるだけで、あとは小さな文字ばかりというところに、改めて日本のガイドブックとのギャップを感じました。「人気のスポット」や「おすすめの食べ物」といったキラキラした情報が満載の日本のガイドブックとは大違いですね。日本に住んでいたころ、近所のドイツ人の友達に日本の旅行ガイドブックを紹介したことがありますが、あまりの情報の多さと装飾の派手さに感動していたことを思い出しました。
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、糀 を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。