ジャパンダイジェスト

第31回 e-モビリティーの優遇課税

全世界でサステナビリティと環境保護が大きくクローズアップされています。ドイツ連邦政府も交通手段を環境に優しいものに転換していく目標を設定し、すでに電気駆動の乗り物への助成を始めています。直近では今年夏に、e-モビリティー(Elektromobilität)に対する優遇税制を強化する改正法の原案が閣議決定されました。そこで今回は、e-モビリティーに課税上どのような優遇措置が適用されるのか、また今後どのような展開が見込まれるのかをご紹介します。

1)これまでの経緯

連邦政府は2011年に、助成措置を通じてe-モビリティーの利用を促進する目標を掲げました。当時は主に、電気自動車を購入する際の補助金交付と、電気だけで駆動する自動車の自動車税を免除することによって、e-モビリティーへの一般投資を奨励。ただし、今後は別の形で助成が行われる見込みです。

2)電気自動車(EV)

優遇課税を受けるには、まず、どのような乗り物が対象になるかを明確にする必要があります。純粋な電気自動車(EV)、つまり電気モーターだけで駆動する自動車に加え、ハイブリッド車も対象。ただ、ハイブリッド車の場合には、バッテリーを外部の充電ステーションにつないで充電できる「プラグイン・ハイブリッド」(PHEV)であることが条件です。電気モーターを備えていても、充電機能を持たない通常のハイブリッド車は、助成対象になりません。数はまだ少ないですが、水素などほかのエネルギー源を用いる燃料電池車(FCV)は助成対象です。  優遇課税は車の充電から始まります。個人で購入した電気自動車であっても、この人が自分の雇用者の設備を使って電気自動車に充電するのは、原則的に100%非課税です。充電ステーションの設置と電力提供は、雇用者の必要経費として認められ、節税効果があります。被用者にとって充電は、賃金税査定の際に現物給与の対象になりません。  電気駆動の社用車をプライベートで利用する際の課税規定はどうでしょうか。2019年1月に関連法が改正され、2018年12月31日以降に購入した電気自動車については、被用者に対する1%の定額課税において課税標準額(Bemessungsgrundlage)が半分に減額されています。

具体例:

電気自動車のメーカー希望小売価格: 3万4990€
その50%: 1万7495€
課税標準額(切り下げ): 1万7400€
被用者への現物給与価額(1%): 174€

電気自動車をバッテリーなしで購入する、例えばバッテリー部分だけをリースする場合などは、課税標準額の半減は原則的に認められません。バッテリーを含まない電気自動車本体の購入額に、上記の1%ルールが適用されます。上記で説明した課税標準額の半減は、所得税査定の際だけに適用されます。売上税の査定に関しては、これまでと同じように購入額全額が課税標準額となります。

3)電動自転車

電気自動車と並んで、社用の自転車および電動自転車のプライベート利用も、優遇課税の対象になります。ここでもまず、どんな電動自転車がその対象になるかを定義する必要があります。  税制上は、バッテリー容量が最大0.25キロワットの装備であり、ペダルを漕ぐと電動アシストで最高時速25キロまで上がるものが対象です。電動自転車が自動で加速するタイプ、つまりペダル連動の電動アシストがないタイプについては、最高時速6キロを超えないことが条件です。最高時速が25キロを超えるタイプと、ペダル連動のアシストなしで最高時速が6キロ以上に上がるタイプは自動車に分類され、先述の1%ルールの枠内で課税されます。  電動自転車は、給与に追加する形で貸与されるか、給与の一部として貸与されるかによって、賃金税査定の際に扱いが異なります。給与に加えて貸与される場合、2018年12月31日以降に会社が購入した電動自転車は、プライベート利用は完全に非課税です。給与の一部として貸与される場合は、上記で説明した1%ルールの課税標準額の半減が適用されます。課税標準額の基準はメーカー希望小売価格です。

4)今後の見通し

連邦財務省は2019年5月8日に、2019年度の税法改正案を公表しました。環境に優しいモビリティーを促進し、持続的に環境負荷を軽減することが目標です。それによると社用車課税時の電気自動車、ハイブリッド車への優遇措置適用と、社用の電動自転車への助成を2030年まで延長するとしています。  それだけでなく、電気配達車に対する特別償却措置も導入される見込みです。営業税の課税においても関連の変更が予定されており、営業税額の査定時に、電気自動車、ハイブリッド車、電動自転車と自転車については、 課税対象額にリース料の全額でなく減額したものを加算し、最終課税額を査定する案が含まれています。ただ、こうした改正案がそのまま議会を通過するかどうかは分からず、改正事項が連邦政府の目指す環境目標を達成するために十分かどうかも、現時点では不透明です。

5)まとめ

e-モビリティーに対する優遇課税は多層にわたり、それぞれの措置に対する対象期間も限られています。乗り物の種類と購入時点により、課税上の扱いも異なってきます。当社では、貴社個別のケースに沿ったコンサルティングを喜んで提供いたします。

(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)


 
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