ジャパンダイジェスト

ビールが出来るまで(下)

今回はビールの造り方の後編です。前回は、麦芽が糖化して出来た甘い麦汁を煮沸釜でグツグツと煮て、ホップで苦みと香りを付けるところまでご紹介しましたね。

熱々の麦汁は、酵母が繁殖できる24度以下まで一気に冷却(Abkühlung)されます。27 ~ 50度になると雑菌が繁殖しやすくなるため、外気に触れないよう細心の注意が払われます。

発酵タンクに移し、微生物である酵母を入れると発酵(Gärung)が始まります。ビールが出来る仕組みは、「麦芽に含まれるデンプンを酵素が糖に分解し、その糖を酵母が食べるとアルコールと炭酸ガスになる」でしたよね。つまり、酵母が糖をたくさん食べるほど、アルコール度数は高くなるのです。アルコール度数は、酵母を投入する前の糖分の量(初期比重)と、発酵を終了させるときの糖分の量(最終比重)の差から計算することができます。醸造家は比重測定器を覗いたり、比重計を麦汁に浮かべたりして、発酵の進み具合を観察します。残った糖分が多いと重くまったりとした味に、反対に少ないとキレのあるビールになります。

ドイツには、「ビールは醸造所の煙突の影が届く範囲で飲め」という格言があります
ドイツには、「ビールは醸造所の煙突の影が届く範囲で飲め」
という格言があります

発酵は、下面発酵酵母では10度前後で約1週間、上面発酵酵母では15~25度で数日続き、役目を終えた酵母はタンクの底に沈んでいきます。タンクは沈殿した酵母を抜き取りやすいよう、下がすぼまった円錐形となっています。

アルコールが出来たとあれば、早速飲んでみたいところですが、お待ちあれ。この段階では、まだ酵母由来の不快な香気が強く、ガスも荒々しくて美味しくありません。貯蔵タンクに貯蔵(Lagerung)し、熟成させる必要があります。下面発酵ビールの場合、零度前後で数週間~ 3カ月程度貯蔵し熟成させます。この間、わずかに残った酵母が残存するエキス分を食べて緩やかに再発酵が進み、風味が整うと同時に二酸化炭素がビールに溶け込んでいきます。これで、シュワシュワッと喉で弾ける美味しいビールの完成です。

消費者のもとに届くまで美味しさを保つために、さらに殺菌と濾過の工程を経ます。殺菌は牛乳などの製造でも行われる低温殺菌(Pasteurisierung)の方法を用います。この熱処理を行わないビールを、日本では生ビールと呼びます。濾過(Filtrieren)は、残った酵母や混濁物質を珪藻土(けいそうど)濾過やカートリッジフィルター、遠心分離機などで取り除く作業です。近年は濾過技術が発達し、低温殺菌をしなくてもビールが劣化しにくくなりました。

最後に瓶か樽に詰め(Abfüllen)、ラベルを貼り、ケースに入れるなどの工程を経て出荷されます。大きな醸造所では、オートマティックのベルトコンベアーに乗せられて次々と瓶詰めされていきます。瓶と瓶がぶつかり合う、一際騒がしい部署です。こうして、私たちのところにビールが届くのです。

ビールは生きていますから、出来立てが一番。ぜひ本誌を片手にビール醸造所見学に出掛けてみてください。

 
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