ジャパンダイジェスト

Nr. 37 Tagesmutter(保育ママ)が大活躍

親しくしている大柄なドイツ人ママのザビーネが、ある日突然こう言い出しました。「私、Tagesmutterになったのよ。あなたの子どももいつでも預かるわ」。Tagesmutterは日本語で“保育ママ”とでも言いましょうか。これは保育士や幼稚園教諭のような専門職の資格とは異なるものです。育児の好きな女性が一定の研修を経て、自治体からの認定を受けて自宅で乳幼児を預かる保育事業の1つ。前回触れた待機児童や保育所不足の問題を少しでも改善するために始まったもので、日本でも同じような試みがあります。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

Tagesmutterになるには子どもが大好きであることが第一条件で、出産経験がない人でもなることができます。この職業は保育所不足の解消のみならず、就労人口の拡大という意味でも社会問題の緩和につながっているようです。長く専業主婦をしていたザビーネの「Tagesmutterになった」という言葉には、単に自宅を開放して他人の子どもを預かるというだけでなく、「働き始める」という自己実現の喜びと自信(少し自慢も混じっているような)が感じられました。彼女は幸い、一戸建ての家と大きな庭を持っていましたし。とは言え、Tagesmutterになるために大きな家や庭が必要かと言うと、必ずしもそうではなく、小さな部屋を使用する場合は預かる子どもの数が少数に限られ、逆に大きければ5人くらいの認可が下りるというわけです。保育料は3~8ユーロ/時ほどで、収入やその他様々な条件によって青年局(Jugendamt)から補助金が出る可能性もあります(※お住まいの場所(市)によって条件が異なります)。

さて、ザビーネのところでは1歳未満の乳児でも受け入れることができると誇らしげです。彼女の家の前には早朝6時くらいから(ドイツ人って早起き! と思ったものです)赤ちゃんを預ける親たちの車が連なるようになりました。ザビーネの主な仕事は朝食の準備をすることから始まります。ドイツの保育施設を見て私がいつも感激するのは、朝食の用意をしてくれることでした。出掛けなければならない親にとって、忙しい朝にグズる子どもにごはんを食べさせるのは一苦労。我が子を預けるとき、子どもサイズのテーブルに美味しそうな朝食が並んでいるのを見ると、なぜか安心感が沸き起こりました。焼き立てのパン、スティック野菜、山盛りの果物皿、ハムやヨーグルト、各種ジュース、牛乳など、ドイツ式朝食が温かく子どもを迎え入れてくれるのです。

Tagesmutterのところにあるのは家庭的な雰囲気。少人数の子どもに愛情を持って接してくれ、保育時間もフレキシブルに対応してくれます。Tagesmutterを探すときに最も頼れる情報は口コミかもしれません。ドイツに長く住んでいる間に、私はあまり他人の言葉を鵜呑みにしなくなりましたが、それでもやはり大切な子育て情報は、身近なママ友から得られるものがありました。口コミがなければ、市の青年局に行ってみましょう。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

ところで、3人の幼い子どもの子育てで忙しいはずのザビーネは、一体どのようにしてTagesmutterになる資格を得たのでしょうか。聞いてみると「数日間(全160授業時間)、退屈な講習を受けるのよ」という答え。子育て経験があれば、だいたい知っているような内容や救急法などを学ぶそうです。そして、住居チェックなどを受けて市の認可を待ったそうです。「私、本当に子どもと過ごしている時間が大好きなの。子育てを仕事にできるなんてとっても幸せよ!」と明るい笑顔。子どもの預け場所に困ったら、地域のTagesmutterがおススメです。意外と自宅のすぐそばで活躍しているかもしれません。ちなみに、Tagesvater(保育パパ)もいますよ。

 
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